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2022/5/8 19:15

GW前に開通! 新東名「伊勢原大山IC〜新秦野IC」を通り初めした注目のクルマとは?

2022年のゴールデンウィークも終了。クルマで遠方へ出かけた人も多いのでは? 先立つ4月16日には、新東名高速道路 伊勢原大山IC~新秦野IC間が開通しました。

 

当日は開通式も執り行われ、厳重な感染対策の下、400人もの関係者が参列。さらに、高速道路やこの区間に関わる“働くクルマ”約60台が集結する、大規模な祝典となりました。今回は、そんな晴れの日を盛り上げた“ヒーロー”にスポットを当てるほか、同区間に導入された最新技術も紹介していきます。

 

「新東名」と「東名」って何が違う?

その前に、新東名高速道路「伊勢原IC〜秦野IC間」の開通によって何が変わるのか、これから首都圏と中部圏はどのようにつながっていくのかを解説します。

首都圏と中部圏を移動する際、東名か? 新東名か? で悩んだ経験があるのではないでしょうか。まずは、東名と新東名の違いから紹介しましょう。

 

東名高速道路は、東京IC(インターチェンジ)〜小牧ICまでの347キロメートルを結んでいます。1969年に全線が開通し、そこから50年以上も“現役”。最近だと、テレビCMなどで「東名リニューアル工事を実施しています」と耳にすることも多いはず。

 

一方の新東名高速道路は、海老名南JCT(ジャンクション)〜豊田東JCTの約253キロメートルを結んでいます。2012年に御殿場JCT〜浜松いなさJCTまでが開通し、今回新たに 伊勢原IC〜新秦野IC間が開通したことによって、全体の9割となる228キロメートルが走行可能になりました。とはいえ、まだ全線開通していないため、途中の区間を使ったことがあるという人がほとんどでしょう。

 

「東名があるのに、どうして新東名を作ったの?」と思うかもしれませんが、2つの路線があることで、目的地へのよりスムーズな走行が可能になりました。また日本の首都圏をつなぐ主要な物流ルートのため、安全かつスムーズに走行が求められます。実際、新東名が開通以降、渋滞が約7割減少したとのデータも! より安心・安全、快適でスムーズな走行ができるように新東名が作られたんですね。

 

そのため東名と新東名、2つの高速道路の全線開通は、スムーズな物流が可能になるだけでなく、防災や緊急医療、地域経済の活性化まで、様々な業界から多くの期待が寄せられています。今回で全体の9割となる部分が開通したということで、多くのメディアも注目していました。

 

残すは、新秦野IC〜新御殿場JCT

式典の様子はYouTubeでも生中継され、Withコロナ時代を感じさせる、ハイブリッド形式での開通式となりました。

 

黒岩祐治神奈川県知事やNEXCO中日本 代表取締役社長の宮池克人氏などのお歴々が祝辞を述べる一方、来賓の方々から、未開通の新秦野IC〜新御殿場JCTについても言及されることがありました。トンネル工事中、一部に脆弱な地質が見つかったことから、現在工事が難航しているとのこと。無事全線が開通できるよう、工事に従事する作業員の安全、そして地域住民や環境にも配慮しながら進めていただきたいですね。

↑来賓の挨拶が終わると、地元の秦野曽屋高校、伊勢原高校、伊志田高校のブラスバンドの生演奏とともに「鋏入れとくす玉開披」が実施

 

高速道路に関わる働くクルマと、地域と関連の深い“クルマ”が通り初め! 注目は?

ここからは、式典の目玉と言ってもいいでしょう! 通り初めパレードが行われました。橋の上には、地元のファミリーや大きなカメラを持った“ギャラリー”が。全60台もの働くクルマが走行するということで、一般からの注目度も高かったようです。

↑跨道橋もできたて! 地域住民がつめかけ、パレードを見守った

 

まず注目を集めたのは、黄色い車体でおなじみの、高速道路で働くクルマ。といえば、パトロールや路面清掃を行う車両をすぐにイメージできるでしょう。今回は、NEXCO 中日本ハイウェイ・メンテナンス東名が開発した新型路面清掃車が登場。

↑2021年10月から圏央道に試行導入されている「NEXCO 中日本ハイウェイ・メンテナンス東名 新型路面清掃車」。本格稼働が期待される

 

↑前方の吸引装置からゴミを吸い上げ、車両後方のタンクに集積する。高速道路上に散乱する小石やペットボトルなどの回収に活躍

 

これまで高速道路に落下したゴミがあるとその都度、作業員が車両から降りて拾っていたのですが、この新車両では、前方にある強力なバキュームによって回収できるように! 作業の省力化と作業員の安全性の向上が期待されます。働くクルマも進化し続けているんですね。

 

日本の一般道路を初走行!

そしてもうひとつ、注目の“クルマ”が参戦しました。先導車に続き、パレードの先頭を務めたのは、見覚えのある流線形のボディ! GetNavi webでは何度か取材してお馴染みの、東海大学のソーラーカー「東海チャレンジャー号」です。

↑開通区間の近くにキャンパスがある東海大学から、ソーラーカーチームの最新マシンが参戦

 

太陽のエネルギーのみで最高時速90kmで爆走、オーストラリア大陸の約3000kmを縦断する世界最高峰のレース「BRIDGESTONE World Solar Challenge(BWSC)」で総合優勝2回、準優勝2回の好成績を収めてきた名門チーム。

 

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↑ボディの先端に「祝 開通」のステッカーが貼られた特別仕様で参加

 

「今回開通した区間は東海大学の地元。近隣の多くの方々に走行する姿をお見せすることができ、嬉しかったです。パレードでは、一般の車と一緒に走行するため、1か月以上前から現地の下見や車両整備、当日のメンバーの動きなどを念入りにNEXCO中日本様と打ち合わせしてきました。それでも当日は、走り始める瞬間からゴールするまで常に緊張しましたね」

 

とは、今年度から学生代表を任されている東海大学工学研究科 修士1年の宇都一郎さん。実際に走行した感覚は「オーストラリアの広大な大地を走行している感覚に似ていた」とのこと。タイヤが細く、風の影響も大きく受けるソーラーカーでも静かに走行できたのは、新東名ならではかもしれませんね。

 

日本では高速道路を含む一般道路での走行が許可されていないため、貴重なシーンとなりました。

↑東海大学ソーラーカーチームは世界でも一目置かれる存在

 

東海大学ソーラーカーチームは、国内大会のほか、前出のBWSC2023年大会での総合優勝を目指し、日々鍛錬を重ねています。

 

【関連記事】敵は風と気温とカンガルー!? ソーラーカーとソーラーカーレースの驚くべき7つの真実

 

【ギャラリー:通り初めに登場したクルマたち】

 

トンネル内にプロジェクションマッピング!? 走りやすさにこだわった新東名の新技術

さて、我々もパレードを追いかけて通り染めさせてもらいました。するとそこかしこで目にしたのが、走行時の安全性や快適性などを高める、最新技術の数々です。

 

トンネルの中をしばらく走行していると現れたのは、プロジェクションマッピング技術を活用した案内表示。

↑文字は投影しているため、必要に応じて文面の変更が可能だ

 

↑投影するプロジェクションマッピングの機器

 

一見、塗装によるものにも見えるのですが、非常電話脇にある機械から映し出されています。長いトンネル内での漫然運転防止や非常時の設備として活用されるとのこと。

 

他にも、山沿いで霧が発生しやすい区間には、1メートル程度の低い位置に照明が設置。これは視界の確保だけでなく、生息するホタルなど周辺の自然環境にも配慮したもの。ドライバーだけでなく動物や昆虫、植物にもやさしい道路になっているんですね。

↑照明が下部に設置されている

 

↑排水性に長けた最新の舗装を採用

 

実際に走行してみて、新東名の緩やかなカーブや緩やかな勾配を体感することができました。また、普段何気なく走っている道路も、細かい部分に注目してみると、最新技術によって安全が確保されていることがわかります。

 

全線開通に向け工事が進む新東名高速道路。仕事でプライベートで、これから走る機会がある人は、安全運転で快適なドライブを!

 

撮影/湯浅立志 取材・文/つるたちかこ、GetNavi web編集部