ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、ルノーの新型SUVを取り上げる。欧州では珍しいフルハイブリッドカー完成度の高さにオドロキ!?
※こちらは「GetNavi」 2022年8月号に掲載された記事を再編集したものです。
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感し、クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。
【今月のGODカー】ルノー/アルカナ
SPEC【R.S.ライン E-TECH HYBRID】●全長×全幅×全高:4570×1820×1580mm●車両重量:1470kg●パワーユニット:1.6L直列4気筒エンジン+2モーター●エンジン最高出力:94PS(69kW)/5600rpm●エンジン最大トルク:20.9kg-m(148Nm)/3600rpm●WLTCモード燃費:22.8km/L
429万円(税込)
グイグイ力強い走りと低燃費を兼備した“神秘的”な1台
安ド「殿! 今回はルノーの『アルカナ』というクルマです!」
永福「不思議な名前だな」
安ド「ホントに“あるのかな”って感じですね!」
永福「ラテン語で“神秘”という意味だそうだ」
安ド「どうりで神秘的なデザインだと思いました! クーペ風のSUVですが、これってカッコ良いんでしょうか?」
永福「欧州では、このテのデザインがいま人気らしい」
安ド「そうなんですね! しかもアルカナは、ヨーロッパ初のフルハイブリッド『Eテックハイブリッド』を採用しているんですね!」
永福「てっきり日産eパワーのルノー版かと思ったら、ルノーの独自開発と聞いて驚いた」
安ド「そ、そうなんですか!?」
永福「ルノーは日産eパワーの採用も検討してテストしたが、欧州で当たり前の130km/hでの高速巡行時ではパワーも燃費も物足りないということで、あえて独自開発したそうだ」
安ド「そうなんですか! 確かにフルハイブリッドなのに、エンジンでグイグイ走る感じでした!」
永福「エンジン側には4段のギアがあり、アクセルを踏み込むと自動的にシフトダウンするからな。しかしグイグイ走る感じは、そこに加わるモーターのトルクだろう」
安ド「そうなんですか? これはあまり燃費を気にしないセッティングなんでしょうか」
永福「とんでもない。WLTC燃費は日産のキックスeパワーをやや上回っている。実際、テキトーに走って19km/Lくらいはいくぞ」
安ド「日本製ハイブリッドより上なんてビックリですね! トランスミッションが複雑な構造らしいですが、そのおかげですか?」
永福「たぶんそれもあるな。ドッグクラッチを使っているから、滑りロスはゼロ。ドッグクラッチは通常レーシングカーに使うもので、ギアをつなぐ際には『ガツン!』というショックがあるが、回転を自動的に完全に同調させているので、実にスムーズだ」
安ド「これまた神秘的ですね!」
永福「説明を聞かなければ、なにをどうしているかサッパリわからんが、とにかく驚くほど良く走る」
安ド「それにしても、なぜルノーはいまになって、ハイブリッドを作ったんでしょう」
永福「ルノーはディーゼルエンジンの新規開発をやめたので、当面はその代わりだそうだ。たしかにアルカナはディーゼルターボに引けを取らない加速だし、燃費も驚くほど良い」
安ド「でもヨーロッパは、近いうち全部EVになるんですよね?」
永福「その予定だが、バッテリーの供給不足などで、それが予定通りに進まなかった場合の保険の意味合いもあるだろう」
安ド「ますます神秘的ですね!」
永福「EV化は政治的な決定。つまりこのクルマは、宮廷政治の副産物だな」
安ド「良い副産物ですね!」