ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、軽自動車のEV(電気自動車)として華々しいデビューを飾った日産のサクラを取り上げる!
※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。
【今月のGODカー】日産/サクラ
SPEC【G・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm●車両重量:1080kg●パワーユニット:交流同期モーター●最高出力:47kW/2302〜10455rpm●最大トルク:195Nm/0〜2302rpm●一充電走行距離:180km
239万9100円〜294万300円(税込)
局所的にはガソリン車の利便性を超える
安ド「殿! 今回は日産の軽EV、サクラを借りてきました!」
永福「うむ。これまで姉妹車の三菱eK クロス EVには何度か乗ったが、サクラは初めてだ」
安ド「違いはありましたか?」
永福「なにしろ2台は姉妹車。メカはまったく同じだから、走りも同じ。違いは見た目と内装だけだ」
安ド「サクラのほうが一般ウケしそうなデザインですね」
永福「ベースはガソリン車の『デイズ』だが、見た目はしっかり未来っぽく仕上げているな。デイズよりずっと高級なクルマに見える」
安ド「僕が買うならeK クロス EVにしますけど」
永福「それはなぜだ?」
安ド「いやぁ、軽に乗るなら押し出しの強い、個性的な顔が良いなと思って」
永福「そういう考えもあるだろう。美人は3日で飽きると言うし」
安ド「走りはどうでしょう?」
永福「EVらしく、実に高級だ。EVというモノは、概して加速が良く、重心が低くてハンドリングが良く、静かで振動がなく快適なものだが、サクラもまさにその通り。サクラのような軽自動車の場合は特に、EV化によってすべてが圧倒的に高級になったように感じる」
安ド「まぁ確かに、『ああ、EVだな』って感じはしました」
永福「EVが嫌いなのか?」
安ド「嫌いというわけじゃないですが、欲しくないですし、興味がありません!」
永福「私もまだ欲しくはないが、とても興味はある。EVはいつか、ガソリン車を超える魅力を持つ日がやってくる。その日がいつなのか、興味津々だ」
安ド「その日は……まだ来ていませんよね?」
永福「全体としてはまだ来ていないが、このサクラは、たとえばガソリンスタンドが減少している過疎地などでは、ガソリン車の利便性を超えているだろう」
安ド「満充電で150kmくらいは走れそうですし、通勤や買い物用としては良いんじゃないかと思います。ただこれ1台だけというのはツライですし、ウチのように借家住まいだと、自宅で充電できませんから、いちいち外で充電するのが大変です!」
永福「そうだな。これは地方や郊外の、一戸建てに住んでいる人のセカンドカーに向いている。補助金が出るから、値段もガソリンの軽自動車と同じくらいだ」
安ド「現状、それがベストなEVの使い方でしょうか」
永福「日本ではそうだな。日産アリアやトヨタのbz4Xのような、600万円もするEVを買って、ファーストカーとして使うのはハードルが高い。しかし、200万円でご近所用のセカンドカーを買うのは、地方では当たり前のこと。サクラはその需要にハマる」
安ド「日本でもEVが当たり前になって、僕がEVを買う日はいつ来ますか?」
永福「15年後だな」
【GOD PARTS 1】インパネ素材
高級感が高いうえに使い勝手も良い
インパネには一部にファブリック素材が採用されていて、なんだか軽自動車クラスのクルマとは思えない高級感が味わえます。また、助手席前のこの部分は凹んだ形状になっていて、ちょっとした小物を置くことができて便利です。
【GOD PARTS 2】ホイールデザイン
伝統模様を織り交ぜたほかにはない独創性
日本の伝統的モチーフ「水引」を用いたデザインになっています。祝儀袋や贈答品の包み紙などに見られるアレですね。なんだかおめでたい感じで素敵ですが、同様のデザインはドアの内側やバンパー下部にも見られます。
【GOD PARTS 3】ステアリング
スポークが下側になくてスッキリスポーティ!
スポークが左右にしかない独特な形状をしています。エコカーでありながらスポーティな雰囲気が感じられて良いですね。スポークの右サイドには運転支援装備「プロパイロット」の操作ボタンが配置されています。
【GOD PARTS 4】充電ポート
普通用と急速用充電ポートは2つあり!
ボディ右横後方には給油口ならぬ、充電ポートが設置されています。普通充電用と急速充電用の2つがあるため、普通の軽自動車の給油口と比べてデカいです。カバーを開くとライトが点灯するようになっています。
【GOD PARTS 5】e-Pedal
アクセルでブレーキ!? 日産得意のワンペダル
このボタンを押すと、アクセルペダルだけで車速をコントロールできる「ワンペダル運転」ができるようになります。ノートe-POWERと比べると味付けはマイルドで、アクセルを離したときのブレーキの効きは弱めです。
【GOD PARTS 6】バッテリー
大きくて重い物体はフロア下に搭載
自在に高さを変えられるユニバーサルスタック構造を採用したリチウムイオンバッテリーがフロア下、つまり床下に設置されています。これによりほかのトールワゴン軽自動車と同等の室内スペースを確保しました。
【GOD PARTS 7】フロントグリル
未来的でクールな表情を演出!
電気自動車なので空気を取り入れるための穴の開いたグリルは不要ですが、大きめの黒いグリル風パーツを採用して、フロントデザインをクールにまとめています。ヘッドライトは薄型ながら、プロジェクタータイプの3眼式になっています。
【GOD PARTS 8】ルーフサイドステッカー
色鮮やかなラインがボディサイドを彩る
サイドウインドウの上辺に沿って、スタイリングを彩るラインが見えます。これは春夏秋冬をイメージした4色の「シーズンズカラー」にのみ設定される専用ステッカー。オプションで購入することも可能だそうです。
【GOD PARTS 9】シート
見た目も良し! 触っても座っても良し!
少々高級なソファのような質感の高い表皮素材が採用されています。肌触りも良く、前席左右シートが繋がったようなデザインもモダンな雰囲気で、ドライブ中になんだかオシャレな部屋のなかに佇んでいるような感覚が味わえます。
【これぞ感動の細部だ!】花びらモチーフ
車名のイメージが車内を彩る
社内公募でつけられたという車名には、「日本の電気自動車の時代を彩り、代表するクルマになってほしい」という願いが込められていて、当然、日本を象徴する花である桜に由来しています。引き出し式のドリンクホルダーやセンターコンソールの収納などには、さり気なく桜の花びらをモチーフにした刻印があって、乗る人の目を楽しませてくれます。
撮影/我妻慶一
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