ボディバランスが良く、走りはとにかく軽快!
フロントにエンジンを搭載し、リアタイヤで駆動するFR方式を採用することで、ボディバランスが良く、走りはとにかく軽快だ。乗り心地も悪くないし、それどころか慣れてくると快適にさえ感じられる。高速走行中の安定性も高めで、今回は一般道と高速道路のみの試乗となったが、不快感を感じるようなシーンはほぼなかった。同クラスの従来のスポーツカーと比べると、プレミアムな雰囲気さえ感じられるほど完成度の高い足まわりである。
水平対向4気筒の「フラットフォー」エンジンは、先代型の2.0Lから2.4Lへボリュームアップしたことで、全領域でトルクが厚くなった。先代型では若干感じられた出足のパワー不足感が解消されている。ターボではなくなったことで出力のメリハリが減り、そのぶん低回転域から滑らかに吹け上がっていく、エンジンを回した時の気持ちよさをしっかり味わえるようになった。さらに高回転域でも加速の伸びがよく、エンジン回転の上昇に合わせてデジタルサウンドを再生するサウンドジェネレーターによる演出音も聞くことができる。
トランスミッションは6速ATと6速MTがラインナップされている。当代、免許証取得者の70%以上がAT限定で、新車販売の約98%がAT車だと言われているが、スポーツカーにMTがなくてはやはり寂しい。選ぶか選ばないかは別の問題として、やはりMTが希少なこの時代になっても、ラインナップされていることに価値がある。ATの仕上がりも素晴らしく、MTを選ばずとも十分走りは楽しいのだが、同車の操作フィールをさらに深く味わえるのはMTということで間違いない。
インテリアはスポーツカーらしく無骨で愛想のないデザインだが、包まれ感に満ちている。これをよく捉えるか悪く捉えるかはドライバー次第で、純粋に運転を楽しみたいドライバーにとっては最高に違いない。愛想のないシンプル系デザインといえば、エクステリアもそういった方向性なのだが、全体的なフォルムは塊感があって、いかにもよく走りそうな雰囲気が漂っている。
BRZは(GR86も同様に)カスタマイズ性もウリにしている。個性が尊重されるこの時代、買ってプレーンな状態のまま楽しむのもありだが、自分だけのカスタマイズを施して、“オレだけ仕様”にするのもまた楽しい。当然、さまざまなカスタマイズパーツが市販されているし、交換もしやすいよう設計されている。
現在の国産スポーツカーはあまりにも選択肢がすくない。「GT-R」や「スープラ」は乗り出し500万円を超えてしまうし、「フェアレディZ」や「シビックタイプR」に関しては発売後にすぐ売り切れてしまった(2022年10月現在)。300万円前後で新車が買える普通車のスポーツモデルといえば、このBRZとGR86の兄弟モデルとマツダのロードスターくらいだ(あるいは軽のコペンなら200万円前後だが)。300万円と言っても若者が捻出するには大きな金額だが、同クラスとなるポルシェのスポーツクーペ「ケイマン」は乗り出し800万円である。そう思えば、クルマで走ることを趣味とする大人のおもちゃとして最高の一台ではないだろうか。
SPEC【R・6速MT】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310㎜●車両重量:1260㎏●パワーユニット:2387㏄水平対向4気筒エンジン●最高出力:235PS/7000rpm●最大トルク:250Nm/3700rpm●WLTCモード燃費:12.0㎞/L
文/安藤修也 撮影/木村博道
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