乗り物
自転車
2023/1/2 20:00

スポーツタイプの新型e-Bikeが胸熱だった2022年を振り返る

近年、新しいライフスタイルの広がりとともに世界的に人気が高まっているのが、e-Bikeと呼ばれるスポーツタイプの電動アシスト自転車です。ロードバイクやマウンテンバイク(MTB)など、スポーツタイプの車体に電動アシストユニットを搭載しているだけでなく、ママチャリタイプの電動アシスト自転車に比べるときめ細かいアシストが可能なドライブユニット(モーター)を採用しているのが特徴。100kmを超えるアシスト距離を誇るモデルもあり、新たなアウトドアアクティビティとして世界各国で支持を集めています。

 

そんなe-Bikeですが、2021年はコロナ禍によるパーツの供給不足などの影響で、新型モデルの導入が滞り、生産も思うように進まないなど世界的に品薄の状況が続いていました。2022年はそんな状況から脱する光明が見え、国内外のメーカーからニューモデルが登場。意欲的な新型車も導入されたので、そんなモデルとともに1年を振り返ってみましょう。

 

【その1】パナソニックがe-Bikeの専門ブランドを新設

国内の電動アシスト自転車市場でNO.1のシェアを誇るパナソニックですが、2022年は新たなスポーツタイプのe-Bike専門ブランドを設立しました。新しいブランド名は「XEALT(ゼオルト)」。その第一弾モデルとして、2022年2月にMTBタイプの「XEALT M5」が発表されました。

↑新ブランド名をあしらったフレームが印象的な「XEALT M5」。価格は44万2000円(税込)

 

フロントのみにサスペンション機構を持つハードテイルと呼ばれるタイプのe-MTB(電動アシストマウンテンバイク)で、ホイール系は前後とも27.5インチ。オフロード走行はもちろん、舗装路でも安定した走行が可能です。e-Bikeの魅力が最も体感できるのは、山道を登ったり下ったりするMTBタイプですが、入門用としては適したパッケージと装備。日本人の体格や、日本の里山に合わせた設計となっており、これからMTBデビューしたいと考えている人にはピッタリの作りです。

↑またぎやすいようにフレームのトップチューブを下げた設計。バッテリーはフレームに内蔵されます

 

「GXドライブユニット」と呼ばれる国内では初採用となるドライブユニットを搭載しているのも特徴で、このユニットは90Nmという大トルクを発揮し、欧州市場で高い評価を得ています。

↑国内で販売されているe-Bikeとしてはトップクラスの90Nmというトルクを発揮する「GXドライブユニット」

 

実際に乗ってみると、パワフルながらも漕ぎ出しの違和感のないアシストに調律されており、荒れたオフロードでスポーツ走行を楽しむのに適した乗り味。ママチャリタイプの電動アシスト自転車とは一線を画する緻密な制御を感じる乗り心地です。「XEALT」ブランドのアシストはすべてこの方向で調律されるとのことで、今後のモデル展開が楽しみです。

 

【その2】トレック製の軽量なロードバイクタイプも登場

スポーツタイプの自転車の代名詞的な存在がロードバイクですが、実はe-Bikeとの相性には課題がありました。それは、国内の法規ではアシストできるのが24km/hまでに限られること(欧州でも25km/hまで)。それ以上の速度で巡航する場合、ドライブユニットやバッテリーの重さが、軽快な乗り味を損なってしまうことがあるからです。

 

そんな状況で登場したのがトレックの「Domane+(ドマーネ プラス) AL 5」。アルミフレームのe-Bikeでありながら14.06kg(56サイズ)という軽量な仕上がりで、ロードバイクの軽快な走りを味わうことができます。

↑14.06 kgという軽さを実現し、注目を集めるトレックの「Domane+ AL 5」。価格は54万9890円(税込)

 

この軽さに貢献しているのが、後輪のハブ(車軸)と一体となった「HyDriveペダルアシストシステム」と呼ばれるドライブユニット。車体中央部に搭載するタイプと異なり、ロードバイクならではのスマートなシルエットを崩さないのもメリットです。

↑軽さとスマートなシルエットに貢献する後輪のハブと一体化したドライブユニット

 

実際に乗ってみても、ロードバイクらしい伸びやかな加速が味わえるアシスト感。MTBタイプと違って、踏み出した際のトルク感は大きくありませんが、スピードが乗ってきても急にアシストが落ちる感覚はなく、24km/hを超えても軽量な車体のおかげでさらに加速していくことができました。

↑フレームに内蔵されたバッテリーでアシスト走行が可能な距離は約90km。レンジエクステンダーと呼ばれる外付けバッテリーを追加すれば約177kmまで延長できます

 

同ブランドでは、同じドライブユニットを採用した「FX+ 2」というクロスバイクタイプのe-Bikeも展開しており、そちらも17.69kgという軽さを実現。フラットタイプのハンドルが好みなら、こちらを選ぶという手もあります。

↑クロスバイクタイプの「FX+ 2」は32万4500円(税込)

 

【その3】ビアンキがハイエンドなクロスバイクタイプをリリース

イタリアを拠点とする老舗自転車メーカーとして高名なビアンキからも意欲的なe-Bikeが発売されました。「E-OMNIA」と呼ばれるこのモデルは、TタイプとCタイプという2種類のフレームを用意。どちらも、e-Bike用のドライブユニットでは世界一のシェアを誇るBOSCH製のe-MTB向けユニットを搭載し、パワフルなアシストが持ち味です。

↑「E-OMNIA」のTタイプはクロスバイクのようなフレーム形状。価格は93万5000円(税込)

 

↑女性でもまたぎやすい形状のフレームを採用したCタイプの価格は88万円(税込)

 

搭載される「Performance Line CX」というドライブユニットは、BOSCHのラインナップの中でも最高峰に位置するもの。85Nmという高トルクを発揮し、山の中の激坂も登れるスペックを備えています。バッテリーも最も容量の大きな625Whを採用しており、街乗り向けのe-Bikeとしてはなかなかないほどのハイスペック。アシスト可能な走行距離は参考値ですが約170kmとされています。

↑BOSCHの中でも最高峰に位置するハイスペックなドライブユニットを搭載する

 

変速機構は内装式の5速。動力伝達にはチェーンではなくメンテナンスフリーなベルトを採用するなど、コンポーネントも先進的です。バッテリーから給電されるライトをフレーム内に埋め込み、リアキャリアもフレーム一体式とされていて、装備的にも”全部入り”ともいえる充実度。価格も高値ではありますが、それに見合う装備と期待度を持ったモデルです。

↑LEDのライトをフレームに内蔵。車重はTタイプで約32kg、Cタイプで約30kgと重量級です

 

【番外編】通勤・通学向けの買いやすいベネリのe-Bike

ここまで紹介してきたモデルを見て、値段が高いと感じている人も少なくないでしょう。たしかに昨今の円安などの影響で、e-Bikeも値上がりの傾向にあります。そんな中で、買いやすい価格を実現したモデルも発表されました。ただ、スペックなどは発表されているものの、発売は2023年になるので番外編として紹介しておきます。

 

モデル名はベネリの「MANTUS 27 CITY (マンタス 27 シティー)」。またぎやすい形状のフレームを採用した通勤・通学や買い物などに使いやすいモデルです。価格は17万7210円(予価)とリーズナブルなものですが、フレーム内蔵式のバッテリーや後輪のハブと一体化したモーターなど、近年のトレンドをしっかりと抑えています。

↑普段使いしやすい設計ながら、力強く、レスポンスの良いアシストを実現したe-Bike

 

↑ドライブユニットは後輪のハブと一体となったタイプ。変速は外装の7速です

 

駐めやすいセンタースタンドやリアのキャリアを標準装備し、小柄な人でも乗りやすいフレーム設計で、フロントバスケットなども装着可能。フロントにはサスペンション機構も搭載され、段差なども越えやすい設計となっています。

 

スポーツタイプから街乗りにフォーカスしたモデルまで、多様な選択肢が揃ってきた2022年のe-Bike業界。2023年も、さらに面白いモデルが登場することを期待したいところです。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】