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2023/3/1 20:30

「日産氷上試乗会」トレース性に優れたe-4ORCEの走行性能に脱帽!

2023年1月中旬、この時期の恒例行事となった日産の氷上試乗会が開催されました。今回の目玉は、同社の新たな4WDシステム「e-4ORCE」搭載車がこの条件でどう反応するかを体験できることです。本記事ではe-Powerの「エクストレイル」と100%EVの「アリア」による、その走りをレポートします。

↑長野県蓼科にある女神湖で開催された日産自動車の氷上試乗会。日産の電動車をはじめ、「フェアレディZ」や「GT-R」など日産の名車たちが勢揃いした

 

摩擦係数が低い中を多彩な試乗コースでチャレンジ

この試乗会は、湖(長野県・女神湖)の表情に作られたコースを走行して、車両の制御や運転技術を知る場として日産が毎年開催しているものです。雪上でさえ滑りやすいのに、氷上ということで滑りやすさはそれ以上。スタッドレスタイヤを履いているものの、この環境下で日産の最新4WDシステム「e-4ORCE」がどんな制御を見せてくれたのかが氷上試乗のポイントとなります。

 

用意された試乗メニューは基本的にこれまでと同様、直線路や大小のコーナーを組み合わせた往復コースと、定常円と8の字コース、それにスラロームが体験できるようになっていました。一般道とは違い、安全が確保された上で走行できるため、仮にスピンしても、横滑りしても問題は一切なし。この普通では得られない環境下で思いっきり車両の性能を確かめることができるというわけです。

 

結論から言うと、e-4ORCEの高い走行能力には驚きを隠せなかったというのが正直な感想です。それは極端に摩擦係数が低いこの条件下でも、驚くほどの安心感で走ることができたからです。これまでドライ路面やウェット路面での走行性能の高さは体験していましたが、正直ここまでとは思っていませんでした。

 

2tを超えるヘビー級モデルが氷上を意のままに走る「アリア」

まず紹介するのが、2022年6月にデビューしたアリアのe-4ORCEモデルです。このクルマは前後に最大出力218PSものハイパワーなモーターを搭載しつつ、車重は2.2tというヘビー級モデル。従来の感覚なら、この圧倒的なパワーで攻めまくったところで車重による慣性が働いてあっという間にコントロールを失う。そんなイメージが湧いてきます。ところが走り出すとそんな印象は微塵も感じさせなかったのです。

 

発進時こそタイヤはスリップしますが、速度が上がるにつれて車両はすぐに方向をつかんでスムーズに走って行きます。滑りやすい路面ではアクセルを不用意に踏めば、タイヤが空転するばかりで思うように前へ進むことはできません。しかし、アリアは舗装路に比べれば速度の上がり方こそ緩やかですが、トラクションコントロールの制御能力が高く、アクセルを踏む量に応じて速度を上げていくことができたのです。

 

ハンドルを切った時の動きも正確で、不安を感じることはほとんどありませんでした。さすがに速度域を上げ過ぎると横滑りが始まりますが、控えめに走れば思った通りのコースを正確にトレースして見せたのです。ここまで車両の挙動が乱れず、安定した走りが得られるとは思ってもみませんでした。

 

しかも、日産お得意の「e-Pedal」という回生ブレーキを併用すればコーナーに差しかかっても無理なく減速でき、スリップの発生を最小限に抑えることができるのです。滑りやすい路面ではブレーキの踏み方に神経を使うものですが、e-Pedalを使えばそんな不安から解放されるというわけですね。

↑e-4ORCEを4WDシステムに組み込んだバッテリーEVのアリア

 

高い着座位置、フロントヘビーもなんのその、安心して氷上を走行「エクストレイル」

一方のエクストレイルはどうでしょうか。エクストレイルといえば、初代よりアウトドア系4WD車として高い走破性を発揮するクルマとして根強い人気を保ってきたモデルで、新型はその4代目モデルとして2022年7月にデビューしました。特に4代目は全車がe-POWERによるモーター駆動となり、4WDシステムとしてe-4ORCEを採用したのが大きなポイントになります。

 

アリアと比較して大きく違うのは着座位置です。エクストレイルはもともとオフローダーとして誕生しているだけに、その分だけ腰高感は否めません。加えてフロントには発電用のガソリンエンジンを備えたことにより、前後の重量バランスでもアリアよりも不利となるのは明らかです。

 

ただ、そんな心配をよそに、エクストレイルは発進から減速、さらにはコーナリングでもアリアに迫るコントローラブルな動きを発揮してくれました。発進時の安定した加速はアリアにも劣らず確実性があり、しっかりと方向を見据えて進む感じです。コーナリングでのハンドリングも速度さえ注意すれば、リアがしっかりと駆動力を伝えてくれ安心して曲がれます。高い着座位置からは想像もできない安定した走りは、やはりe-4ORCEによる制御がここにあるからこそ。そう実感させられた次第です。

↑受注の約9割がe-4ORCEを選んだというシリーズ型ハイブリッドの新型エクストレイル

 

「e-4ORCE」が発揮する緻密なまでの制御の秘密とは?

では、どうしてe-4ROCEがこのような制御を発揮してくれるのでしょうか。実は同じ電動4WDを採用する「ノート」「セレナ」ではe-4ROCEと呼びません。日産車でも4WD機構にe-4ROCEを搭載するのはアリアとエクストレイルだけなのです。

 

日産はこのe-4ROCEについて、「これまで日産が培ってきた4WD制御技術、シャシー制御技術に、電動化技術で革新した新しい駆動システム」としています。これにより、日常走行からワインディング、滑りやすい路面まで、すべての走行シーンで意のままに走れる能力を発揮することになりました。

 

そのポイントとなるのが「協調制御」です。これまで油圧ブレーキや回生ブレーキのコントロールと、4WDの制御は別々のECUが担ってきました。そのため、それぞれがセンシングして入力された事象に応じて対応することとなり、互いの連携が十分でないまま制御することとなっていたのです。

 

それに対しe-4ROCEでは、シャシー全体の制御を一つの目標に向かってECUが一括して制御することとし、互いの連携もスムーズに行われるように進化。これによって路面の状況に応じた緻密な制御が可能となり、ドライ路面から滑りやすい路面まですべての路面に対して安心して走行できるようになったというわけです。

 

以前、エクストレイルで連続するドライ路面でコーナーを走り切った際、思い通りのコースを正確にトレースしていく様に、まるで自分の運転が上達したようにも感じました。その感覚が氷上でも同じように発揮されたのには本当に驚きです。聞けば4代目エクストレイルの販売比率は9割がこのe-4ORCEとのこと。もし、この走りを体験して選んでいるとしたら、エクストレイルの購入者は見識が相当に高い!  ぜひ、e-4ORCEの素晴らしい走りを堪能していただきたいと思います。

 

他の日産車種も紹介!

↑後輪駆動のフェアレディZ。VDCをOFFで不用意に踏み込むと簡単にスピン!コントロールが一番難しく、楽しくもあったクルマだ

 

↑カーボンセラミックブレーキやカーボン製リアスポイラーなどを装着した、特別仕様車GT-R プレミアムエディション Tスペック

 

↑「オーラNISMO」は2WDのみの設定。2WDであってもボディの軽さも手伝って、切り返しはとてもスムーズ。思ったよりもラクに走行できた

 

↑「オーラ」の4WD車。強烈な回生ブレーキの効きによって氷上でもラクにコントロールできたが、滑り出す感じが結構早い

 

↑バッテリーEVの軽自動車「サクラ」。2WDながら、車重の重さにより高いグリップを発揮していた

 

↑「キックス AUTECH」の4WD。eペダルにより。e-4ORCEほどの連続的な滑らかさはないものの、アクセルに敏感に反応して加減速。安定性は高い

 

 

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