ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回はプジョーのミドルサイズコンパクトカー、308を取り上げる。先代よりシャープになったデザインの評価は?
※こちらは「GetNavi」 2023年3.5月号に掲載された記事を再編集したものです
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。
【今月のGODカー】プジョー/308
SPEC(GT BlueHDi)●全長×全幅×全高:4420×1850×1475mm●車両重量:1420kg●パワーユニット:1498cc直列4気筒ターボディーゼルエンジン●最高出力:130PS(96kW)/3750rpm●最大トルク:30.6kg-m(300Nm)/1750rpm●WLTCモード燃費:21.6km/L
320万6000円〜515万1000円(税込)
走りのバランスが良いもののデザインは刺さらなかった
安ド「殿! 今回はプジョー308のディーゼルモデルを取り上げます!」
永福「そうか」
安ド「殿はプジョー508ディーゼルのオーナーですから、308もお好きなのでは?」
永福「いや、あまり好きではない」
安ド「ええっ! すごく良いクルマじゃないですか。安ド的には、歴代308で一番カッコ良いと思っております!」
永福「歴代308は、どれもあまりカッコ良くない。新型の308もイマイチだ」
安ド「でも新型は、シャープでネコ科の動物っぽい雰囲気が……」
永福「かなり太ったネコだな。同じプジョーでも208や508は非常にカッコ良いので、308にも期待していたのだが」
安ド「インテリアもシンプルでムダがありません。メーターまわりのサイバーな雰囲気に全体がマッチしていて好きです!」
永福「プジョー定番の楕円ステアリングは、クイックに操作できるので私も好きだ」
安ド「乗った感じも、バランスが良いなと思いました。すべてがマッチしていて、先代ゴルフに乗ったときのような感覚がありました」
永福「確かに走りのバランスは良いと思うぞ」
安ド「殿は、先代308のディーゼルモデルを、『最も現実的かつ理想的なディーゼル車だ!』と高く評価されてました。新型のディーゼルエンジンも、先代と同じ1.5Lですよね?」
永福「そう。エンジンも実用的で素晴らしいぞ」
安ド「ディーゼル乗用車は、ガソリンエンジンより早く、近い将来消滅すると言われていますが、いま買っても大丈夫でしょうか?」
永福「だからこそ、いまのうちに買っておくべきだ。ディーゼルの太いトルクと低燃費は、何ものにも代え難い。この快感を知ってしまったら病みつきだ」
安ド「そんなに良いですか。軽油がスタンドから消えたりする心配もないですか?」
永福「トラックはそう簡単にEV化できないから、むしろガソリンより長く買えるんじゃないか」
安ド「なるほど!」
永福「308が良いクルマなのは確かだが、デザインにフランス車らしい小粋さが足りないし、あまりにもボディが大きくなりすぎてしまった。全幅が1850mmもあるのはイカン」
安ド「殿の508のほうが、ずっとデカいじゃないですか!」
永福「508は、ちょいワルオヤジのためのスカしたスポーツセダンだからそれで良い。しかし308は実用ハッチバック。フランスの実用車は、もっと小粋でコンパクトであってほしい。よって個人的には、プジョー208のほうがオススメだ」
安ド「208にはディーゼルの設定がありません!」
永福「このクラスでディーゼルにこだわるなら、VWのゴルフだな」
【GOD PARTS 1】オートマチックセレクター
スタイリッシュで収納スペースも確保
2022年春登場の208に続き、新型308でも、指先で操作できるトグルタイプのオートマチックセレクターが採用されています。見た目のスッキリさはもとより、センターコンソールまわりの収納スペースも確保できます。
【GOD PARTS 2】エンブレム
ブランドの新たなアイデンティティ
従来の“2本足で立っているライオンのアウトラインをかたどった”エンブレムは、この新型308から“顔だけ”に変更されました。60年代にも横顔エンブレム時代はありましたが、こちらは平面的になり、モダンな雰囲気を感じさせます。
【GOD PARTS 3】エンジン
高出力から低燃費まで充実のラインナップ
撮影車のエンジンは最高出力130馬力を発揮するディーゼルターボ。ほかにも1.6L直列4気筒ターボエンジン+モーターのプラグインハイブリッド、1.2L直列3気筒ガソリンターボもラインナップされて、選べるのがうれしいです。
【GOD PARTS 4】マフラー
大胆アピールかと思いきや隠された排気口
リアの下部は黒くて、ボディの厚みを感じさせるデザインになっていますが、左右にシルバーで囲まれた箇所があります。コレ、マフラーかと思いきや完全なるダミーで、実物は底面から1本だけちょこっと出てました。
【GOD PARTS 5】リアシート
先代と比べて足元空間が拡大
先代からホイールベース(前輪と後輪との間の距離)が拡張されたことで、後席の足元のスペースも約30mmほど拡大されました。このクラスのコンパクトカーにとって、意外と使われるリアシートまわりの広さは重要ですからね。
【GOD PARTS 6】ホイール
足元を引き締めるサイバーなイメージ
フロントまわりのシャープな雰囲気に似合うサイバーなデザインです。ブラックとシルバーを組み合わせてスポークが細く見えるように工夫されています。また中央部にはカバーのようなものが付いていて、ナットが直接見えないように工夫されています。
【GOD PARTS 7】ヘッドライト
後方までまっすぐ伸び続けるプレスライン
先代と比べてボディサイズは拡大されましたが、フロントデザインは直線基調でシャープです。特に超薄型マトリクスLEDヘッドライトは特徴的ですが、ライト後端からフロントドアまで伸びたプレスラインは、実は先代から受け継いでいます。
【GOD PARTS 8】リアコンビネーションランプ
ライオンの爪で引っ掻かれた跡
フロントにならってリアライトも薄型です。そして斜めに入ったこのラインはライオンのかぎ爪で引っ掻かれたイメージなんだとか。ライオンのエンブレムをつけたプジョーのライオンへのこだわりが感じられるデザインですね。
【GOD PARTS 9】センターディスプレイ
タッチパネル式で未来感あふれる造形
インパネ中央には大型ディスプレイが鎮座していて、タッチ操作や声で呼びかけて操作できる「iコネクトアドバンスト」を採用。デジタルメーター「iコックピット」とサイバーな雰囲気で統一されています。
【これぞ感動の細部だ!】ステアリング
クイックな操作感が好印象
スポークが左右2か所のみというスポーティなデザインが採用されています。また、上端が平らになっているのも特徴で、ステアリングの上からメーターパネルが見える設計になっています。さらに、スタンダードなステアリングと比べて小径なので、操作感がクイックです。
撮影/我妻慶一