昨今、世界の自動車メーカーから次々とEVが発表されている。そんななか、マツダは同社初の量産型EVとして、2021年1月に「MX-30 EVモデル」の国内販売を開始した。ハイブリッドモデルとなるMX-30が先行して登場しているが、併売する意義や販売的な成功はあるのだろうか。さらに、同クラスのSUVの多くがファミリーカーとして使われているなか、MX-30 EVモデルの使い勝手はどうか。発売から2年半経過した今、考察してみたい。
■今回紹介するクルマ
マツダ MX-30 EVモデル
※試乗グレード:EV・Highest Set
価格:451万~501万6000円(税込)
MX-30のEVモデルは遅れてきた本命
MX-30は現在日本で売れ筋となっているコンパクトサイズのSUVだが、ベースとなっているのは、同社のコンパクトSUV、「CX-30」である。そして、マツダにはさらに小型のエントリーモデル、「CX-3」もラインナップされている。棲み分けが難しいこの小さな領域において、マツダだけで3車種も販売している状態だ。
では、この3台で最も後出しとなるMX-30 EVモデルの存在意義とはなんなのかと言われれば、それはEVとして企画されたモデルであることにほかならない。2020年10月にマイルドハイブリッドモデルが先行して発売されたものの、EVであることを前提に開発された車種だけに、数か月後に発売されたEVモデルが「遅れてきた本命」というわけである。
観音開きのドアはファミリー向けの提案
デザインについても、CX-3やCX-30とは一風違ったテイストで仕上がっている。フロントまわりはEVらしくグリルが小さく、流行りの大型グリルの威圧顔とは違ったすました表情だ。全体的には現代的な曲線基調で、尖った部分はなくスッキリしており、上質さと同時に、親しみやすさを感じるデザインにまとめられている。
デザインではないが、「フリースタイルドア」と呼ばれる観音開き式のドアもこのクルマのポイントとなっている。フロントドアは通常通りの後ろ開きだが、リアのドアが前開き。つまり真横から見たら観音開きである。マツダで観音開きといえば、RX-8を思い出す好事家もいるに違いない。
この観音開き、実は構造的な“珍しさ”のほかにもメリットがある。それは、前席ドアを開けなければ後席ドアが開かないというもので、小さな子どものいる家庭では重宝される機能。ファミリー向けのクルマとして、ミニバン以外の選択肢に新たな提案というわけだ。
インテリアも非常に特徴的なデザインが採用されている。特に印象に残るのは、シフトノブの下部にスペースが設けられていること。これは一部輸入車などでも採用されていた構造で、見た目もスッキリするし、ドライブ中でも欲しいアイテムをすぐ手に取ることができて、足元に落ちる心配も少ない。また、センターコンソールに採用されたコルク素材も、現代的でオシャレである。
さらに、2022年10月の商品改良では、MX-30 EVモデルのバッテリーから電力を供給できるAC電源が追加装備されている。これで、アウトドアなどレジャーに出かけた先でも、電化製品を気軽に使うことができるため、アクティブなライフスタイルをサポートしてくれるに違いない。