角張ったフォルムがもたらしたクラス随一のスペースユーティリティ
一方で、「Honda CONNECT」に対応する9インチのナビはディーラーオプションで20万2400円。試乗車では試せませんでしたが、独自のコネクテッドサービス「Honda Total Care プレミアム」によってエアコンやライトをリモート操作したり、スマホでドアロックを解錠/エンジンを始動させたりといった、さまざまな便利機能が使えるようになるとのこと。ただ、ナビ機能としては起動に少し時間がかかるのが気になりました。
そして、WR-Vで最大の美点となっているのが車内の広さです。これは角張ったフォルムがもたらしているものと思われますが、車内すべてがゆったりとしていて、特に後席に至っては上級グレードのヴェゼルよりも明らかに広いスペースを確保している印象を受けます。しかも、このクラスにしては贅沢な後席専用エアコン吹き出し口まであるのです。Zグレード以上に装備される後席アームレストを組み合わせれば、ちょっとした高級車並みの雰囲気が楽しめそうですね。
荷室容量は458L(5名乗車時/床下収納を除く)と、クラスを上回る収容力を確保しています。特に床面を低く取ってあり、天井までの高さも十分あるため、キャンピングなどで必要となる荷物の積載にも十分応えられるほどです。6:4分割式のリアシートを倒した際はフラットにはなりませんが、むしろ、家族4人が乗車したときの収容力を評価すべき仕様と言えるでしょう。
乗り心地は少し硬めなものの、特に不満はなし
それでは、いよいよ試乗です。試乗したのは上位モデルの専用エクステリアを備えた「Z+」。
今回は都内から郊外へトータル120kmほどを走行してみました。パワートレインは1.5リッター直4 i-VTECガソリンエンジンで、これにCVTを組み合わせたシンプルなものです。最高出力は118PS、最大トルク142N・mと、特に目を引く数値とは言えませんが、スムーズな加速力は日常のドライブであれば十分なパフォーマンスを備えていると言えます。ただ、アイドリングストップ機能はなく、また、高速での加速では少しノイジーに感じるかもしれません。
乗り心地は少し硬めの印象で、低速で走っていると路面からの突き上げはややタイトに感じます。しかし、その分、コーナリングではロールもしっかりと抑えられていて、峠道も安心して走行できました。そういった面を踏まえれば、個人的にはこの硬さは乗り心地も含め、十分に許容範囲に入っていると言っていいでしょう。
120kmほどの距離を走った結果の燃費は、エコランを少し意識した往路では18.2km/Lを記録。復路では普通にアクセルを踏んで走行した結果、15.8km/Lという結果でした。カタログ値では16.4km/L(WLTCモード)となっていましたから、ほぼ想定通りの結果が得られたと判断できます。
全体としてWR-Vは秀でた部分は特に見つからないものの、かといって不満に感じる部分もない。しかし、クラスを超える車内スペースがもたらす、ゆったりとした空間と優れた実用性はこのクラスとしては随一のものです。新車価格が高騰する中で、予算面で軽自動車を考えていながら、そこに踏み切ることに躊躇していた人にとってWR-Vはまさに打って付けの一台。発売1か月で目標の4倍となる1万3000台もの受注を獲得した理由もここにあるのだと思います。
SPEC【Z+】●全長×全幅×全高:4325×1790×1650mm●車両重量:1230kg●総排気量:1496L●パワーユニット:水冷直列4気筒 DOHC16バルブ●最高出力:118PS/6600rpm●最大トルク:14.5kgf-m/4300rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L
撮影/松川 忍
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