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2024/10/9 20:00

「走りと乗り心地」に納得! 発売1か月で3万8000台を受注した新型「フリード」の魅力に迫る

ホンダのコンパクトミニバン、ホンダ「フリード」が今年6月、フルモデルチェンジして三代目となりました。受注状況も絶好調のようで、なんと発売開始後1か月で月間販売計画の約6倍となる3万8000台を記録! その人気の秘密はどこにあるのか、試乗を通してレポートします。

↑三代目「フリード」は標準車の「エアー」(左)と、アウトドア志向に振った「クロスター」(右)の2タイプと明確なキャラクター分けが行われた

 

■今回紹介するクルマ

ホンダ フリード e:HEV(エアー EX[FF]、クロスター[4WD])

250万8000円〜343万7500円(税込)

 

ラインナップは「エアー」と「クロスター」の2タイプ

フリードは初代より手頃なサイズと高い実用性が評価され、ホンダ車の中でも常に上位に入る人気車です。先代はモデル末期になっても月間1万台近くを販売するほどの人気を得ていましたが、これはまさにファミリーカーとして“ちょうどいい”ことが評価されてきたからこそ。そして、様々な面で進化を遂げた三代目は、その良さを継承しながらも新型ならではの改良が加えられて誕生しました。

 

ラインナップは大きく分けて標準車の「エアー」と、アウトドア志向に振った「クロスター」の2タイプとなり、ステップワゴンと同様、明確なキャラクター分けが行われました。パワートレーンは1.5リッター直4ハイブリッド「e:HEV」と、同じ1.5リッターのガソリンエンジン車で、それぞれにFFと4WDを用意。このラインナップは先代と同様ですが、そこに新型ならではの改良が加えられたのです。

↑「フリード e:HEV エアー EX」/3列6人乗りFF

 

↑「フリード e:HEV クロスター」/2列5人乗り4WD

 

フリード初、パワーユニットにe:HEV採用!

その改良のポイント一つ目は、ハイブリッドモデルのパワーユニットを刷新したことです。先代はデュアルクラッチトランスミッション(DCT)を使った「i-DCD」を採用していましたが、三代目はそれを「e:HEV」に変更。これはホンダのコンパクト車としては「フィット」や「ヴェゼル」に続くもので、走行用モーターと発電用モーターの2つのモーターを備えて走行状況によって駆動力を自動的に切り替えるハイブリッドシステムとなります。

↑ハイブリッドシステム「e:HEV」のパワーユニットは、最高出力106PSの1.5リッター直4エンジンに最高出力123PSのモーターを組み合わせた

 

これによって、i-DCDを上回る加速性能を実現することとなり、市街地でのスムーズな加速だけでなく、特に登坂や高速域での加速性能にも余裕を感じ取れるようになりました。今までどちらかといえば得意ではなかった高速での走行でも、一段と力強さを感じるようになったのです。

 

二つ目はプラットフォームの進化です。ベースこそ先代からのキャリーオーバーとはなりますが、ホンダによればフロアやサイドシル、フロアフレームを一新し、開口部やダンパーの取り付け部、リアクォーターピラーも大幅に剛性をアップしたとのこと。その結果、走り出せば先代とは別モノとの印象を受けます。街乗りでのしなやかな走りは上質ささえ感じさせるほどでした。

 

ただ、室内の広さは先代とはほぼ同じです。全長で45mm長くなっていますが、これはその大半を新搭載となったe:HEVを収めるためにフロント部を拡大したため。一方でベースモデルとなるエアーは5ナンバー枠に収めていますが、クロスターは25mm増しの3ナンバー枠となりました。

 

3列シート車にリア専用エアコンを採用

室内に入ると水平基調のダッシュボードが最近のホンダ車らしさを感じさせます。視界も良好で、運転席からは周囲を広々と見渡すことができます。インパネには大容量の収納ボックスや取り出しやすさを追求したトレーを配置。さらに、シートの肩に当たる部分を細身にして後席からの圧迫感を抑えたことで、2列目や3列目のシートからの抜けのいい視界を実現していることも見逃せません。

↑フリード エアーの運転席回り。内装は明るいトーンでまとめられている

 

↑フリード クロスター/2列5人乗りの運転席回り

 

ダッシュボードは基本的に硬質パネルで構成されますが、それでもエアーにはダッシュボードの上部に手触りが心地よいファブリックが施され、それがナチュラルさを演出。また、ホンダのコンパクトミニバンとして初めて、リア用エアコンが3列シートの上級グレードに標準装備されたのは新型の大きなポイントとなるでしょう。

↑3列シート車に標準装備されるリア専用エアコン

 

さて、試乗したのは、2列5人乗りのクロスター(4WD)と、一番の売れ筋となると思われる3列7人乗りのエアーEX(FF)で、いずれもe:HEV仕様です。そして、別の日に2列5人乗りのクロスター(FF)のガソリン車にも試乗しました。

 

2列目がもっとも快適なのは3列6人乗り仕様

まず、e:HEVのクロスターですが、新型フリードで2列5人乗りが選べるのはクロスターのみで、これは先代でいえば「フリード+」から置き換わったもの。また、クロスターとエアーでは2列目がキャプテンシートとなる3列6人乗りも選べ、さらにこのクロスターに限っては、車椅子のまま乗り込める「スロープ」や「助手席リフトアップシート」を備えた福祉車両も用意されました。ただ、エアーにある3列7人乗り仕様はクロスターに用意されていません。

↑フリード e:HEV クロスター/2列5人乗りのスロープ仕様。電動インチで車椅子を引っ張り上げることができる

 

その中で、2列目に座ってもっとも快適だったのは3列6人乗りのキャプテンシートでした。細身ながら身体にフィットする専用シートである上に、左右にアームレストがあることで身体を常に安定させることが可能だったからです。対して、2列5人乗りのシートは2列目がベンチシートとなり、特にe:HEVではフロアが高めとなるために太ももが座面から離れることもあって、乗車中はどうしても不安定になりがち。ミニバンらしい快適さを2列目で感じたいのなら、3列6人乗りのキャプテンシートをおすすめしたいですね。

↑フリード エアーの2列目。3列6人乗り仕様の2列目はキャプテンシートとなる

 

とはいえ、乗り心地だけを捉えれば2列5人乗りでも驚くほど快適でした。先代はともすればハンドリングの良さを重視して、路面からの反応をリアルに伝えてくる印象でしたが、新型はそれとは真逆。三代目フリードは、ミニバンとして熟成の乗り心地に達したといえるかもしれません。

↑今回の試乗では横浜の市街地から首都高速を経由するルートを走行しましたが、路面からの突き上げもしなやかで、シートを介したショックはほとんど伝わってこない

 

その4WDシステムは先代同様の電子制御油圧多板クラッチを備えたプロペラシャフト付「リアルタイムAWD」で、これはSUVのヴェゼルと同じもの。発進時より積極的にリアに駆動配分するため、ステアリングを切ったときなどでも思い通りにトレースできるのがメリットです。実際、後述するエアーのFFと比べると、明らかにどっしりとした安定感があり、決してパワフルな印象こそありませんが、市街地での発進は極めてスムーズにこなしてくれていました。

 

軽快な走りを見せたe:HEVのFF。市街地で十分なガソリン車

次に試乗したのが3列7人乗りのエアー EX(FF)です。4WDに比べて車重が軽くなることもあって、その走りの軽快さではシリーズ中ナンバーワンといえます。アクセルを踏めばリニアに加速し、HVならではの力強さをより感じさせるものとなっていました。フリードには燃費向上が期待できる「ECON」モードが備えられていますが、このモードでも十分な加速を発揮。そして、これをOFFにすればモーターらしさをよりしっかりと感じられる走りとなります。これなら高速道路の流入でも不満は感じないでしょう。

 

さらに3列7人乗りのエアー EX(FF)は、路面からの反応でも一段としなやかさが増していました。多少ロールが大きめではあるものの、足回りのフリクションも徹底して抑えられているようで、その乗り心地はひとクラス上のミニバンと比べても遜色ありません。エンジン音も静かですし、ロードノイズの侵入もかなり少なめとなったこともあり、ミニバンとしての快適性はこのグレードがピカイチであると感じました。

 

最後に2列5人乗りのクロスター(FF)のガソリン車です。モーターを搭載していないだけに絶対的なパワー感はe:HEVに比べると落ちるのは確かです。しかし、それでも市街地での走行に限ればほとんどストレスは感じないレベルにあり、高速道路への進入もECONモードにしなければ十分な加速力が得られます。特に組み合わせたCVTは、あたかも変速があるかのように段をつけた加速フィールが味わえ、アクセルを踏んだときの心地良さを感じさせてくれるものでした。

 

全車速追従のACCやブラインドスポットインフォメーション採用

新型となって様々なドライブアシスト機能も進化しています。特に見逃せないのが、電子制御パーキングブレーキ(EPB)+オートブレーキホールド(ABH)が全グレードに標準装備されたことと、ブラインドスポットインフォメーション(BSI)が一部グレードに搭載されたことです。

↑フリード エアーのシフトレバー回り。パーキングブレーキが電動化されたのに伴い、オートブレーキホールド機能も装備された

 

EPBの採用は渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)の実現をもたらすもので、先行車がいない場合は設定した車速を自動で維持し、先行車がいる場合は自動で加減速して適切な車間距離を保ちます。ただ、センシングが従来のミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせから、単眼カメラのみとなったことで、先行車との距離の検知はやや不安定な印象です。それでも渋滞時もACCが継続できるメリットは大きいといえます。

↑運転支援に使われるセンシングがフロント上部に設置された単眼カメラ(中央)で行われる

 

また、BSIは車線移動する際、ミラーでは見えなくなっている斜め後方の車両検知してくれるというもので、車線移動での安全性を高めるのに有効な装備となっています。ベースグレード以外はすべて装備されているのはうれしいポイントです。

↑ベース車以外のすべてに装備されるブラインドスポットインフォメーション。隣車線の斜め後方にいる車両を検知するとアイコンがオレンジに光る

 

三代目フリードは、3列目シートすべてで快適に座れる長所を引き継ぎつつ、ハイブリッド車はe:HEVに進化し、乗り心地でもひとクラス上の上質さを獲得しました。課題となっていた先進安全装備でもライバルに追いついたことで、コンパクトミニバンとしての魅力度をさらに向上させたのは間違いないでしょう。

 

SPEC【e:HEV エアー EX(FF)】●全長×全幅×全高:4310×1695×1755mm●車両重量:1480kg●パワーユニット:1.5L水冷直列4気筒エンジン+交流同期電動機●エンジン最高出力:78kW/6000〜6400rpm[モーター最高出力:90kW/3500〜8000rpm]●エンジン最大トルク:127Nm/4500〜5500rpm[モーター最大トルク:253kW/0〜3000rpm]●WLTCモード燃費:(6名)25.4km/L・(7名)25.3km/L

SPEC【e:HEV クロスター(4WD)】●全長×全幅×全高:4310×1720×1780mm●車両重量:(5名)1560kg・(6名)1580kg●パワーユニット:1.5L水冷直列4気筒エンジン+交流同期電動機●エンジン最高出力:78kW/6000〜6400rpm[モーター最高出力:90kW/3500〜8000rpm]●エンジン最大トルク:127Nm/4500〜5500rpm[モーター最大トルク:253kW/0〜3000rpm]●WLTCモード燃費:(5名)21.3km/L・(6名)21.1km/L

 

撮影/松川 忍

 

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