乗り物
クルマ
2024/10/25 19:00

ヒョンデの「コナ」に新ラインナップ「N Line」が追加。個性強めだけど実用性は十分だ!

韓国のヒョンデが電気自動車(BEV)のコンパクトSUV「コナ」に、スポーティな装備を加えた新グレード「N Line」をラインナップしました。コナといえば、これまではファミリーカーテイストが強かった印象ですが、この装備によって“走り”を強く意識したデザインへと変貌したのです。

 

■今回紹介するクルマ

KONA N Line

506万円(税込)

 

“N”の系譜を受け継いだ新たなスポーティグレード「N Line」

N Lineと聞いて、ヒョンデ「アイオニック5」の“N”との違いが気になると思います。実はアイオニック5のNは、サーキットなどでの走行も想定したスポーツ系モデルに与えられるグレード。それに対して、 N Lineは、パフォーマンスはベース車と同等ながらNで培った空力改善技術に基づいたデザインなどを加えた、いわばNの系譜を受け継いでその雰囲気を演出したスポーティグレードとなります。

 

この N Lineは韓国でも販売されているそうですが、韓国ではコナにガソリン車もラインナップしていることが関係しているのか、ベース車の方がよく売れているとのこと。対する日本ではスポーティ仕様が好まれやすいとの分析があるそうで、その意味でコナの N Lineは期待を持って日本市場に投入されたということでした。

↑2024年8月23日に日本で発売された「ヒョンデ・コナ N Line」。“N”の系譜を受け継いだスポーティグレードとして追加された

 

N Lineのベース車となったのは、コナのトップグレードとなる「ラウンジ」です。コナはデザインからすると若干大きく見えますが、実寸は全長4385×全幅1825×全高1590mm、ホイールベース2660mmとコンパクトSUVのカテゴリーに入ります。ただ、ベース車のラウンジに N Line専用バンパーを前後に装着したことで、全長は30mm長くなりました。さらに特徴的な専用のウイングタイプリアスポイラーやアルミホイールも装備し、要所をブラックアウトすることで、ラウンジよりスポーティな印象も表現しています。

↑N Line専用デザインとしたフロントバンパーの右端にはN Lineのエンブレムを備える

 

↑ルーフエンドに採用された2分割タイプのN Line専用ウィングタイプリアスポイラー

 

↑N Line専用デザインの19インチアルミホイール。タイヤはクムホ「ECSTA PS71」でサイズは235/45R19 99V

 

インテリアでは N Line専用アルカンターラ+本革コンビシートを採用し、この前席にはラウンジと同じくヒーター&ベンチレーション機能を装備しつつ、Nならではの差し色ともいえる赤のステッチ+ストライプを追加。これはベース車との違いをもっとも感じさせる部分といえます。ほかに専用装備として前席メタルドアスカッフプレートやNロゴ付きステアリングなども加えられ、ラウンジと同様、フルスペックのADAS機能や、12.3インチAR機能付ナビ、BOSEプレミアムサウンドシステムなどを装備しているのもポイント。

↑N Lineのインテリアは専用ブラックを設定。エアコンのルーバーなどに控えめに赤のアクセントがあしらわれている

 

 

使い勝手の良いBEVとして十分なパフォーマンスを発揮

さて、気になる走りですが、コナそのものは「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマとして基本性能に長けているといえます。快適性も十分にあり、その意味でバランスに優れたBEVといえるでしょう。

 

パワートレーン系は前述したようにラウンジとスペックは同じです。定格出力50kWのモーターを使って前輪で駆動し、そこから得られる最高出力は204PS・最大トルク255N/m。決してハイスペックなものではありませんが、電動車として不満のない動力性能は獲得できています。搭載したバッテリーもラウンジと同じ容量である64.8kWhで、フル充電時の航続距離はWLTCモード541kmと十分。とはいえ、実際の走行ではエアコンの利用や道路のアップダウンによる負荷もかかるので、その7割程度の航続距離と思った方がよいかもしれません。

↑ボンネットを開くと「EV」の文字を付したカバーがあるが、この中は27リッターの小物入れとなっている

 

走り出してまず感じるのが、コナ N Lineは必要にして十分なパワーが得られているということです。電動車にありがちな、低速域からズドーン!というトルクの出方ではなく、トルク感を発揮しながらやんわりとスムーズに加速していく感じです。しかもボディはしっかりとした剛性があり、そのために安心感もあります。ガソリン車からの乗換えでも違和感なく乗れるのがBEVであるコナ共通の美点といえるでしょう。

 

フロアは若干高めとなっていますが、ルーフが高いこともあってヘッドクリアランスも十分確保されており、その分だけ視点が高いため前方の見通しは良好です。ステアリングは若干重めに感じますが、切ったときの取り回しは良好で、市街地でも全幅1825mmの幅広ボディによるハンデをほとんど感じさせずに済みました。

 

ドライブモードは「NORMAL」「ECO」「SPORT」「SNOW」から選択可能。 N Lineらしいスポーティな走りを期待するならSPORT一択です。キビキビとしたアクセルワークとなり、それでいて過敏にならないのが助かります。一方、NORMALでも十分なスムーズに走れるので、個人的には日常ではNORMALで十分ではないかと思いました。また、 N Lineにはパドルシフトも装備されており、これを上手く使えば回生を使ったワンペダルドライブも可能となります。これを峠道で使えば楽しさは倍増するでしょう。

↑ステアリングコラムに設置されたシフトレバーは、アイオニック5でも採用された方式。手元で操作できる使いやすさがある

 

フラット感が増して乗り心地が向上。カーナビは未来感満載

コナ N Lineでは乗り心地の良さも向上したようです。シャシーも含め、基本的なスペックはベース車と変更はないとのことでしたが、過去に試乗したラウンジに比べてもフラット感が増している印象なのです。多少、路面のたわみが連続するとサスペンションがバタつく面もありましたが、路面からの突き上げ感もマイルドになっていて快適に乗ることができました。特に高速域では静粛性も高く、振動も少ない印象で、長時間のドライブでも疲れは少ないのではないでしょうか。

 

一方で、走行時には仮想のエンジン音を出すことができる「エレクトリック・アクティブサウンドデザイン(e-ASD)」も装備されていました。エンジンに郷愁を感じる人向けの装備とは思いますが、個人的にはインバータの音を聴きながらBEVならではのフィールを楽しんだ方が良いと思います。まぁ、これも好み次第ですね。

 

ナビゲーションは、スピードメーターからヨコイチに並んだインフォテイメントシステムに含まれています。ポイントはルート案内中に画面上に表示されるAR機能。カメラで撮影した映像に進行方向を流れる矢印によって重ねて表示するものです。かなりギミックな装備となりますが、未来感を感じさせる装備としては楽しいでしょう。

↑コナ・ラウンジに装備されているAR機能付きカーナビ。カメラで撮影した映像に進行方向が重ねて表示されている。(撮影:会田 肇)

 

その中で私が便利さを感じたのは、ルート案内時に一旦停止すると目的地までのルート全体を一時的に表示してくれる機能で、地図上で目的地までの進み具合が確認できます。また、スケールの異なった地図を2画面で同時表示できるのも良いと感じました。さらに、OTAによって地図データは常に最新版へと自動更新してくれるので、スマホのように常に最新の地図データが使えるのもうれしいですね。

 

コナは、そのデザインこそ個性が強めではありますが、クルマとして実用性の高さはクラスの中でも秀でているのは間違いありません。BEVとしての造り込みの巧さに、ヒョンデの実績が十分に発揮されています。BEVというと、どこか特別感をもってラインナップされる印象がありますが、 N Lineも含め、日本でもコナのような自然体のクルマがもっと登場して欲しいところです。

 

SPEC●全長×全幅×全高:4385×1825×1590mm●車両重量:1790kg●パワーユニット:交流同期電動機●最高出力:150kW/5800〜9000rpm●最大トルク:255Nm/0〜5600rpm⚫️一充電走行距離(WLTCモード):541km

 

撮影/茂呂幸正

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】