「インフルエンザかな?」と寒気がしても、10日先まで予約が取れないってどういうこと――?
「体調不良は自力で薬局行って直せ」と言われたらどうしますか? アメリカ生活で一番恐れていたのがこの医療事情。高熱でフラフラしているときに自ら対処法を考え、薬剤師さんと優雅に相談し、陳列棚にずらりと並ぶ同じ効用の薬からとっさに判断し最適な薬を見つける……なんてことはできません。
「医療もビジネス」の自由診療の国、アメリカ。医者単位に患者がつくシステムで、風邪をこじらせても簡単には医療サービスにはたどりつけません。予約は必須ですが、下手すると10日間先まで予約が取れないことも。近所にあるクリニックに飛び込みで診療してもらえるような自由度は極めて低いのです。そのお医者さんが旅行中だったりすれば待たされるのが普通。急患で電話しても「命に別状があれば911で救急車を呼んで。そうでなければ5日先ね」となるのも珍しくありません。
しかし最近、この不便なアメリカの医療サービスを改善するべく、デジタル医療のオンデマンドサービスが登場。「One Medical(ワンメディカル)」といい、医療コンシェルジュサービスとカテゴリされて、全米でトレンドになっています。年間利用料(2018年2月現在、149ドル)を支払うと、One Medicalのクリニックになら、どこでも行けるというものです。
山手線内ほど広いサンフランシスコ市内でもクリニックが30か所ありますが、One Medicalを使うとユーザー目線で空いている時間を選んで、オンデマンド診療が受けられます。訪問予約診療はもちろん、オンラインビデオ診療や、軽度のアレルギー症状対処ならメールでの診療サービスも受けられます。ちなみにシリコンバレー全域(サンノゼやクパチーノなど)にも多数あり、テクノロジー企業の従業員御用達ブランドとして定着しています。
おしゃれで合理的なオンデマンドサービス
One Medicalの最大の特徴は、クリニックがおしゃれなこと。デザイナー家具でモダンに彩られていてホテルのロビーのようです。「医療コンシェルジュ」と謳っているだけあって、アポの時間になると医者がわざわざ出迎えて「今日はどうしましたか?」と握手を求めてくるのです。
合理的な予約システムも人気の理由でしょう。病院検索はスマホのアプリを使って簡単にでき、今いる場所、クリニック単位、医者指定、どこでも誰でもいいから空いているところなど色々選べます。アレルギー関連や皮膚荒れなど、軽度のものであればビデオ診療も便利。訪問診療も30分単位できっちり区切られていて、必ずその時間で終わるのも嬉しい限りです。
また、夜中や休日もアプリのメール機能などを使い24時間対応してくれます。筆者も元日深夜にアレルギー症状をこじらせて、気管支炎になってしまい焦ってしまいました。しかし、このオンデマンド・メールサービスにより最適な薬の処方箋が2時間ほどで手に入り、翌日の夜にはすっかり心身ともに回復した経験があります。日本ではとうの昔から当たり前のことですが、アメリカで「風邪をこじらせても安心」な医療環境ができたというのは非常に画期的なことなのです。