2018年11月、Amazonのジェフ・ベゾスCEOがアメリカのホームレス支援組織に約1億ドルを寄付したことが報道されました。テクノロジーやグローバリゼーションが発展して豊かな暮らしを送る人がいれば、それに取り残されてしまった人たちが大勢いるのも現実。アメリカでは55万人(2017年)のホームレスがいると報告されており、貧困が深刻な問題となっています。世界最大の経済大国はこの問題にどう取り組んでいるのでしょうか?
この記事では、州の人口に対するホームレスの割合が特に高い、ニューヨーク、サンフランシスコ、ホノルルの3つの都市の取り組みを見てみます。また、ホームレス問題の深刻化とともに注目されているのが、テクノロジーを利用したサポート。巨大IT企業の繁栄によって住居費が高騰し、その結果、貧富の差を広げたとも言われるテクノロジーですが、問題解決の役に立つことができるのでしょうか? 私たち日本人にとっても他人事でないこの問題について考えてみましょう。
学生のホームレスを多数抱えるニューヨーク
アメリカの50州のなかで最もホームレス人口が多いのがニューヨーク州。2017年のデータでは、その数は8万9500人と報告されています。その一因が高い住居費。ニューヨークの家賃はマンハッタンで月平均4119ドル、ブルックリンで2801ドル、クイーンズで2342ドルと、アメリカのなかでもトップクラスに高く、そのため家賃を支払えず家を失うというパターンが多いようです。また、ニューヨークは若年層のホームレスが多いことも特徴。学生のおよそ10人に1人がホームレスに陥っています。
ホームレスが入居できるシェルター(保護施設)の建設など、ニューヨーク市でもさまざまな対策が行われています。しかし、1室の購入金額が数十億円もするような超高級ホテルの裏に保護施設が建設されることとなって物議を醸しており、この大都市が抱える闇が浮き彫りになってきています。
ホームレス税で賛否両論! サンフランシスコ
ニューヨークの中心地と同じくらい高騰している住居費が問題化しているのが、カリフォルニア州サンフランシスコ。AmazonやGoogleといった世界を牽引するIT企業が拠点とする都市のため、自然と住民の平均的な収入も高額になる傾向にあります。そして、それとともに住居費用などの生活費も高額化し、平均家賃は月額3579ドルと全米でも2位の高さ。世帯年収が11万7400ドル(約1300万円)でも低収入に分類されるそう。そのため、家を失い路上生活を余儀なくされているホームレスも増えていっているようです。
そんなホームレスへの保護施設や家賃補助などの施策のために、年間5000万ドル以上の収益がある企業については、ホームレス税の支払いを求めるという法案が2018年に可決されています。しかし、この法案が可決される前には、Twitterの経営者などが、課税によって企業がサンフランシスコから去ってしまうという理由で猛反対し、禍根を残しました。
観光客が多いワイキキビーチでも……
日本や世界各地から旅行客が訪れる屈指のリゾート、ハワイでもホームレスは深刻な問題です。ハワイ州全体のホームレスの数は7220人で、人口1万人あたりのホームレスの数は全米でもトップレベルと言われています。ワイキキビーチなど観光客が出歩く場所でもあちこちにホームレスを見かけ、観光業が経済の中心であるハワイでは、これ以上ホームレスが増えてしまうのは、州全体の経済にも悪影響を及ぼしかねません。
アメリカ本土と比べて年収や賃金は低いのに、ホノルルの平均家賃は1843ドルで、生活費も住居費も高いことで知られています。しかも土地が限られているのに、各地で建設が進められている住居は、一般市民には手が出ないような高級住宅ばかり。低所得者向けの住宅が不足していることは、ホームレスだけでなく一般市民にも大きな問題となっています。
この3都市に共通しているのは、どこも住居費や生活費が高額であるということ。そのため、生活が困窮してホームレスになるというケースが増えているのかもしれません。保護施設や家賃援助などの支援策のほか、最低賃金のアップや低所得者向け住居建設などの支援もいま以上に必要となるでしょう。
ホームレス問題解決の一助となるテクノロジー
ホームレス問題解決の一つの可能性として現在期待されているのが、テクノロジーを利用したサポート。イギリスでは路上で野宿している人を見かけたらアプリで通報し、凍死を防ぐという「StreetLink」アプリが開発されています。さらに「WeCount」というアプリは、ホームレスの人々が家で使うものから洋服まで必要なものをアプリを通じて呼びかけて、一般の人々から寄付してもらうという仕組み。このようなテクノロジーを利用したサポートは、いままで距離があったホームレスと一般住民を身近なものに結びつけて、気軽に支援できるシステムになるのかもしれません。
日本でもホームレスの問題が取り上げられていますが、公的機関や各種団体の支援以外にも、著名人や大企業による支援活動やテクノロジーの利用が必要なのかもしません。