チーズやパスタ、ワインなど、世界中で愛されている「メイド・イン・イタリー(Made in Italy)食材」。メディアを含めイタリア全体がこの呼び方にこだわっていますが、その一方で偽イタリア産食品が後を絶ちません。イタリア政府によれば、偽物市場は日本円で約7兆円にも上り、これはオリジナルのメイド・イン・イタリー食材の2倍以上の規模になるということ。世界中で販売されているイタリア国旗の描かれた食材の3分の2は偽物といいます。
この現状に対してイタリア政府や農業組合は黙っているわけではなく、様々な手を打ち始めています。そのひとつがアプリの活用。今回はこのアプリについて、現地からのレポートをお届けします。
発音しやすいイタリア語ゆえの問題!?
まずは偽メイド・イン・イタリー食材の現状についてご紹介しましょう。
日本人にも発音がしやすいイタリア語は、他国においてもそれらしい造語の商品名をつけるのに簡単な言語です。例えば「トマト」を意味する「ポモドーロ」や有名な「モッツァレッラチーズ」が、南米やドイツなどイタリア国外で、似たような音を持つ別の商品名で堂々と販売されているのです。アメリカでは、イタリアワインの代名詞、キャンティ・ワインの偽物も発見されたのだとか。
イタリア語と遜色のない響きの商品名だと、ふつうの人であれば「イタリア製」と思い込んで購入しても不思議ではないのです。
また、メイド・イン・イタリー食材の代表的存在、パルミジャーノ・レジャーノチーズは、イタリア国内でも高価なチーズ。熟成期間によって価格は異なるものの、特に美味とされる24か月熟成のタイプになると1キロ当たり2500円以上になることもざらです(パルミジャーノ・レジャーノチーズと同様、削ってパスタにかけるチーズ代表ともいえるペコリーノチーズは1キロ当たり700円前後)。正規に輸出されれば、イタリア国外ではさらに高価になるのは当然のことですが、このチーズの偽物がアメリカで本物より40パーセントも安価で販売されていると報告されています。
イタリア専業農家連盟(COLDIRETTI)の調査によれば、ロサンゼルスでは本物より80パーセントも安いペコリーノチーズが販売されていたそうですが、これもまた偽物でした。
イタリアの生産者にとっての問題は、高額のメイド・イン・イタリー食材の消費が落ちるということだけではありません。偽物が「本物」と誤解されて、世界中の人々の口に入るということも大きな問題なのです。生産者としては、本物の味が消費者に伝わらないという事実にやきもきしているということです。