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2019/9/10 19:00

シダ植物が発電!? 自撮りもできる「植物性エネルギー」が地球環境を守る

ロンドンの中心部ウェストミンスターにある世界初の科学動物園のロンドン動物園で現在、ある展示が注目を集めています。それは、シダ植物が自分でセルフィーを撮影するというもの。一体どういうことなんでしょうか?

ロンドン動物園内の熱帯雨林コーナーには「ピート」と名付けられたシダ植物がいます。ピートはカメラなどの機器に繋がれていて、ピートから自然発生するエネルギーを蓄積。約2週間の充電が完了すると、ピートに接続されたカメラが自動的にセルフィーを撮影するという仕組みで、ZSL (Zoological Society of London) 保護テクノロジーユニット、オープンプラネット、ケンブリッジ大学およびアリババの主催で行われた「2018年度燃料電池大会」で受賞したオランダのPlant-e社のアイデアをもとにしています。

 

では、一体どのように植物からエネルギーが発生して蓄積されるのでしょうか?

 

まず、植物は太陽光を浴びると、水と空気中の二酸化炭素からブドウ糖やデンプンなどの糖類を生成し、余分な酸素を排出します(いわゆる光合成)。生成された糖類は植物の成長を促す成分を含んでいますが、実はそのほとんどは使用されずに根から土に排出されているんです。

 

この糖類を食べるのが微生物で、糖類を分解する際に微生物は電子を作り出します。この電子を電極で収集して、電力を生み出すというのが今回の基本的なメカニズム。このようにしてピートは自撮りすることができるんですね。

 

農業や日常生活を変える

自然の原理を利用して発電する植物発電には、二酸化炭素の減少以外にも多くの利点があるとPlant-e社などは述べています。

 

土地の活用という面で見ると、植物発電は自然環境にネガティブな影響を与えずに土地を有効活用することが可能。例えば、田んぼのなかに植物発電を採用した場合、稲を育てながら発電をすることができます。

 

石炭や石油から発生するメタンガスを植物発電のエネルギーに置き換えることでメタンガスの削減にも貢献する一方、発展途上国などで電気が十分に届かない地域に住む人々に経済的で環境に優しい電気を提供することも可能になります。

 

さらにセンサーを設置することで遠隔地の土地や田んぼの状況をデジタルデバイスで把握し、発電の調整をすることもできるようになるそう。

 

ZSL の環境テクノロジー専門家のAl Davies氏は「一般で使用されている電池には限界があり、費用が高く、ソーラーパネルは太陽光がなければ使いものにならない」と、現在の電池についての短所を指摘しています。

 

これらを考慮すると、植物は日陰でも生存でき、光を求めて動く習性があるため、将来のエネルギーとしてよりアドバンテージがあると考えることができそうです。

ただし、現在の段階では水が凍ってしまうと、その間はシステムが休止してしまったり、植物の種類によってエネルギーの発生レベルが異なるなどの課題もあります。

 

それでも、環境保護やサスティナビリティの問題が深刻化している現代社会において、植物発電は素晴らしいアイデアではないでしょうか? 発電できることを知るだけでも、私たちの植物に対する見方は変わりますよね。自然の凄さを改めて気が付かせてくれる植物発電の今後の展開に要注目です。

 

執筆者: ラッド順子

 

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