テクノロジーの発達がどんどん進み、AIを導入する企業も増えてきています。では、AIは人間にどんなふうに捉えられているのでしょうか? この問題についてオラクル社とFuture Workplace社は今年の7~8月に共同で調査を実施しました。アメリカ、イギリス、フランス、中国、日本、インドなど世界10か国の従業員やマネージャークラス、人事部長8370人にアンケートを行い、そこから分かった面白い結果をご紹介しましょう。
まず、どれくらいの企業がAIを使っているのでしょうか? 昨年行われた同じ調査では、職場でなんらかの形でAIを使っていると答えた人は32%にとどまりましたが、今年の調査ではおよそ50%まで増加しました。わずか1年の間に、世界のおよそ半数の企業でAIが使われるようになったということは、AIなどのテクノロジーが急速に広まっていることの表れでしょう。
ただし国別に見ると、日本は調査対象の10か国中で最も低い29%。最も割合の多かったインドの78%、中国の77%と大きく差がついた結果となりました。しかしアメリカは53%、イギリスは38%、フランスは32%と先進国では低くなる傾向があります。
AIの導入でどんなことがもたらされるかという質問では、「自由な時間が増える」が46%と最も多く、「新しいスキルを学べる」が36%、「現在の役割をさらに戦略的に拡大できる」28%、「組織的な改革を加速する」25%などの回答が上位にありました。いずれも、AIによって仕事が効率的になったり拡大したりすると好意的に受け止められていることがわかります。
AIの導入は、ビジネスシーンの人間関係にも影響を与えているのかもしれません。「ロボットを上司より信用しますか?」という質問に対して「はい」と答えた人は全体の64%と、「いいえ」の36%を大幅に上回る結果となりました。しかも国別に見てみると、「はい」と答えた人の割合が最も高かったのはインドの90%で、日本では76%、最も低いフランスでも52%と半分以上の人が、人間である上司よりもロボットを信用できると見ているのです。
「人間の上司よりロボットを信用する」という傾向は「上司の代わりにロボットにアドバイスを求めたことはありますか?」という質問の結果にも顕著にあらわれています。この質問に「はい」と答えた人は50%と、上司ではなくロボットのほうに信頼を寄せている姿が見えてきます。
求められるのは人情
しかし「ロボットより上司にできると思うことは?」という質問では、「自分の気持ちを理解してくれる」が45%で最も多く、業務内容や結果だけを見るロボットにはわかりえない部分のサポートを人間には期待していることも見え隠れしています。
その一方で「上司よりロボットの方が良くできると思うことは?」という質問では、36%が「偏見や先入観のない情報提供」と答えているように、人間対人間では人に対する好き嫌いの感情が混在しやすいことを否定的に捉えている人が少なくないこともこの結果から伺えます。
働き方改革が進み、仕事への取り組み方も多様化している現代。そのなかでは、AIとの共存は避けて通れないテーマです。しかし、人間にしかできない仕事や役割をきちんとやることの重要さは変わらないでしょう。いや、もっと大切になるかもしれません。