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2019/10/29 20:25

「子どもたちの笑顔が復興の力になる」――元サッカー日本代表巻誠一郎さんとインドネシア・中部スラウェシ州で復興イベントを開催【JICA通信】

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」。今回はインドネシアの話題をお届けします。

 

「子どもたちの笑顔が大人を笑顔にし、それが復興活動のやる気につながる。だから皆の笑顔にはすごい力がある。笑顔でいて欲しい」——そう子どもたちに呼びかけるのは、元サッカー日本代表の巻誠一郎さん。

 

M7.5の大地震がインドネシア・スラウェシ島を襲ってから1年を迎えるタイミングに合わせ、JICAは、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)、浦和レッドダイヤモンズ、そしてインドネシアで人気の日本人歌手・加藤ひろあきさんたちの協力を得て、被災した子どもたちをサッカーや音楽で元気づけるイベントを開催。熊本県出身で、熊本地震の被災地支援活動の経験もある巻さんも参加しました。

 

大震災発生直後から、JICAはインドネシア政府に緊急援助としてテントや発電機などの物資の供与や、復興基本計画の作成を支援。ハード面から子どもたちの心のケアといったソフト面まで復興への取り組みを続けています。

 

↑今回の復興イベントで、巻さん(中央)たちは避難所や仮設住宅、養護施設などを訪問し、500人以上の被災地の子どもたちにユニフォームを贈りました

 

日本のサポーターからユニフォームをプレゼント

震災から1年が経過した今でも、被災地では避難所や仮設住宅での生活を強いられている子どもたちが大勢います。

 

巻さんたちは10月4日、中部スラウェシ州パル市で液状化被害が大きかったバラロア地区の避難所を訪問。約250人の子どもたちに日本のファン・サポーターから寄付されたユニフォームをプレゼントしました(※)。子どもたちだけでなく、現場に集まった大人たちにも笑顔があふれ、カラフルなユニフォームを着た子どもたちとの写真撮影会が続きました。JICAはこの避難所で、菓子などの製造を通じた生計回復を支援するプログラムを実施し、被災者の生活を支えています。

 

↑日本のファン・サポーターから贈られたユニフォームを着る子どもたち

 

(※)Jリーグが2011年から継続して実施している「サポユニfor Smile」および浦和レッドダイヤモンズから寄付されたユニフォーム

サポユニfor Smile

 

翌5日は中部スラウェシ州シギ県を訪問。3か所の避難所に暮らす約140人の子どもたち一人ひとりがプレゼントされたユニフォームに袖を通しました。うれしくて走り回る子供と一緒にサッカーボールを使った鬼ごっこで思いきり体を動かしました。

 

↑子どもたちと一緒にサッカーボールを追いかける巻さん

 

サッカー交流と合わせて、トークショーにも参加した巻さんは、自身の地元熊本の復興支援活動について話した後、JICAインドネシア事務所の現地職員やプロジェクトスタッフ、同じ被災地で活動するNGOなどとも、その経験を語り合いました。最後に、人気歌手の加藤さんと現地バンドによる音楽ライブも開催され、被災者と支援に関わる人たち誰もが復興に向けた思いを胸に、国や立場を超えた一体感に包まれたイベントとなりました。

 

日本の震災経験を生かし、復興に向けた取り組みを進める

JICAはインドネシア政府からの要請を受け、2019年1月からさまざまな技術協力を通じて、被災地の「より良い復興」の実現を目指して支援に取り組んでいます。今回の震災や災害リスクを踏まえ、地震や津波などに対する災害マップや土地利用計画の策定などを実施。被災地パル市のシンボルだったパル第4橋を無償資金協力で再建することも決定しており、その他のインフラ施設の復興についてもインドネシア政府と現在、協議中です。

 

こうした支援活動には、日本の震災経験や研究者の災害分析に関する知見なども積極的に活用されています。

 

↑日本人専門家たちは津波で被災したパル湾を視察

 

9月26、27日に震災1周年を記念してジャカルタで開催された津波に関する国際シンポジウムでは、東北大学今村史彦教授と中央大学有川太郎教授が、東日本大震災の教訓を踏まえ、適切な避難やそのための事前の教育といった減災対策などの必要性について述べ、世界中の研究者などから高い関心が寄せられました。

 

また、10月7日には被災地パルのタドゥラコ大学で、9日にはジャカルタのインドネシア大学で、液状化由来の地滑りに関するワークショップが開催されました。中央大学石原研而教授、東京電機大学安田進名誉教授、多田直人JICA専門家(インドネシア国家防災庁配属)が計200名を超える学生や研究者、行政関係者に向け、JICAの調査結果から原因究明に関する見解や今後の展望について講演。今回の災害をきっかけに、インドネシアと日本との学術面でのつながりも深まっています。

 

↑ジャカルタ・インドネシア大学で開催された液状化由来の地滑りに関するワークショップに参加したインドネシアと日本の学生や研究者、行政関係者たち

 

震災発生直後より一貫して復興支援を担当するJICAインドネシア事務所の加納大道所員は「自然災害の頻発という同じ課題を共有するパートナーとして、これからも被災地の一日も早い復興を実現し、また一人でも多くの被災者の方々に夢と希望を与えられるよう協力していきます」と語ります。

 

巻さんのメッセージのとおり、子どもたちの笑顔に助けられながら、そして、子どもたちの未来のため、JICAはインドネシアでの復興支援を進めていきます。

 

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