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2019/11/7 19:00

イタリアの外食産業を変える! 「持続可能なファストフード店」がミラノで拡大中

世界がサステナビリティ社会の実現に取り組むなか、食料分野は課題の多い分野の1つ。美食の国イタリアでも、その課題は無視できないものと考えられています。2019年5月に行われた食の見本市「ミラノ・フードシティ」でも、国連が提唱したアジェンダに沿って持続可能な食料分野の発展をどう考えるかというシンポジウムが開催されました。環境に優しい、オーガニック&バイオロジカルな素材を扱う食料品店やレストランも、実際には何年も前から出現しています。とはいえ人の嗜好は簡単には変わらず、そういったものはニッチなジャンルに止まっているのが現実でした。

 

しかし、2年前にミラノでオープンしたある自然派のレストランがそんな状況を変えようとしています。その名も「グリーンステーション」。ヘルシーでカジュアルなファストフードをうたい、連日地元のビジネスマンなどで賑わっています。どのような特徴や魅力があるのか、現地からのレポートです。

↑グリーンステーションの店内の様子

 

グリーンステーションは2年前にオープンして以来、豆や雑穀類を中心としたメニューを提供し、ビジネスパーソンなどから高い支持を得ています。

 

場所はミラノの象徴であるミラノ大聖堂の近く。イタリア銀行を始め、多くの銀行・金融会社の支店が集まるビジネスエリアです。お昼ごろにお店に入ると、フロアの席は全部埋まっていました。カフェテリア方式で、トレーとお皿を手にして配膳をしてもらうという仕組みです。お皿やフォーク、ナイフなどの食器類はすべて、100%土に還る生分解性のもの。水や洗剤の使用を抑えるという意図で導入されているのです。

 

メニューにはサラダが3種、穀類が3〜4種あり、そのなかから食べたいものを選びます。一皿5ユーロ程度で単品を注文することも可能ですが、ランチタイムには最大4品のメニューとデザート、水のセットが14.9ユーロ(約1800円)で提供されています。この界隈には食事処も多いのですが、その価格設定は割と高めで、パスタ一皿に水を付ければ15ユーロはすぐに超えてしまうところも少なくありません。先日、筆者はこのお店で「3品+デザート+水」のセットメニュー(12.9ユーロ)を注文しましたが、デザートまで付いてこの価格に収まるのは貴重です。

 

そのとき筆者は、豆とバスマティ米のカレーピラフにレンズ豆とオレンジのサラダ、そして全粒粉のペンネで作ったインゲンとジャガイモ入りのジェノベーゼをいただきました(下の画像)。肉類の代わりに豆類を使用したり、パスタには全粒粉を用いたりすることは、地球環境の持続性を考慮した「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」の考え方に基づくものだそう。

 

身体と地球にやさしい食生活は味もよし

おいしかったというのが素朴な驚きです。ピラフはしっかり腹持ちし、レンズ豆のサラダはオレンジの風味が効いてとても食べやすい味でした。全粒粉のペンネで作られたジェノベーゼは、伝統的なイタリア料理店で出されても遜色ないぐらいに、しっかり味の効いたパスタ料理として仕上げられています。「自然に優しく健康的という理由で味気ないものを食べさせられる」という感覚がありません。

 

それもそのはず。ファストフードといえども、グリーンステーションの料理は伝統的なイタリア料理や地中海料理の手法に沿って調理されているのです。デザートのタピオカヨーグルトも、伝統的なイタリア料理にはない食材ですが、とてもおいしくいただきました。

 

営業時間は平日午前7:30から午後8時半まで。朝はシリアル入りのクロワッサンと、国際フェアトレード認証が付いた有機栽培のコーヒーを提供し、仕事終わりの夕方以降にはノンアルコールカクテルやクラフトビールでアペリティフと、朝から晩まで自然派の食事を楽しめる場所になっています。ライトグリーンを挿し色に白とベージュでまとめられたナチュラルインテリア、そして気さくなスタッフの対応なども、気軽に立ち寄れるリラックス感を演出。イタリア経済の中心地や流行の発信地として活発な分、気ぜわしいミラノの街の人々受け入れられた理由は、環境に優しくて落ち着ける場所というアピールに成功したからかもしれません。

 

サステイナビリティに伴う「いままでの消費生活を改める」というイメージは、我慢を強いられるようにも思えます。特に外食産業、とりわけ大量消費を煽るファストフードのビジネスにとって、これは真っ向から対立する概念でしょう。しかしサステナビリティ社会の要求に沿っても、「おいしかった」という満足を顧客に与えることは可能であることをグリーンステーションは示しています。

 

そんなグリーンステーションを牽引役に、サステナビリティを意識したユニークなレストランやバーが増殖しているミラノ。持続可能なレストランがファッションではなく、ライフスタイルとして定着するのかどうか注目です。

 

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