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2020/4/2 18:30

曖昧だった「ダンスの著作権」を変えるのにはAIが役に立つ

画像や文章、イラスト、音楽などには著作権があり、著作者から許諾を得ることなく使用することはできません。そんな著作権の対象となるものに今後「踊り」が加わることになるかもしれません。この4月、誰がどんな振り付けを考案したのか登録管理できるシステムが構築され、世界中のダンサーや振付師が参加を表明しているのです。

↑ダンサーも著作権の対象に

 

著作権法で、著作物は「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義されています。画像や文章などの著作権はよく知られていますが、これまであまり論じられてこなかったのが、ダンスの振り付けや踊りの著作権です。過去には、映画「Shall we ダンス?」のダンスシーンで使われた振付について、著作権が生じるかどうかを問う裁判が起こりました。しかし、この裁判では、既存の基本ステップを組み合わせアレンジを加えただけと判断され、著作権については否定されました。

 

それでも、上述の著作物の定義には踊りも当てはまると考えられます。しかも近年は、TikTokやYouTubeなどの動画メディアが広く利用されることを背景に、ダンサーや振付師は独自性の高い踊りを考案することに注力。そこで、これまできちんと定義されていなかった踊りという分野の著作権を明確化していこうという動きが出てきたのです。

 

そんな背景のなかで、4月上旬に日本とアメリカで同時リリースされる予定なのが、ダンスを登録管理できるシステム「GESREC(ジェスレック)」。このシステムでは、誰が、いつ、どんな振り付けを考案したかを登録することができます。現在、ダンスの動画から3Dモーションを推定・抽出してデータ化するAIが開発されており、ダンスの動画をYouTubeにアップロードし、そのURLをこのシステムに登録すると、AIがデータ解析を行って3Dモーションのデータが保管されるという仕組みです。

 

それとは別に、GESRECでは3Dモーションを分類して、登録済みのダンスと合致するものを検知するAIも開発中。これにより、登録した踊りの著作権を守ることができます。

 

ケガや病気、年齢などを理由に、身体が思うように動けなくなって引退に追い込まれるダンサーが多いと言われるこの業界。オリジナルで作られた振り付けに著作権が生まれて、それに正当な権利が与えられたら、ダンサーや振付師を守ることにつながっていくでしょう。このシステムには早くも世界中の有名ダンサーが参加を表明しており、ダンス界の新しいムーブメントになる可能性もあります。