広大な宇宙の星から届く電波を調べることができるのが電波望遠鏡。中国には口径が500メートルになる世界最大の電波望遠鏡がありますが、さらにそれよりも巨大な電波望遠鏡を月のクレーターを利用して作ってしまおうという試みが、現在NASAで進められています。
一般的な家庭にある衛星放送のパラボラアンテナは、衛星から届く電波を集めます。それと同じような仕組みで、天体から届く電波をとらえるのが電波望遠鏡。ただ宇宙に存在する星から届く電波は非常に弱いため、望遠鏡は大きく、高い精度のものが求められます。現在ある世界最大のものが、口径500メートルに及ぶ中国の電波望遠鏡。日本では長野県にある天文台野辺山に、ミリ波と呼ばれる電波を高精度で観測できる直径45メートルの電波望遠鏡があり、これはミリ波望遠鏡として世界最大になります。
しかしNASAは、これらの世界最大クラスの電波望遠鏡よりも、さらに大きな直径1キロメートルもの巨大電波望遠鏡を月に作ってしまおうとしているのです。
クレーターのくぼみを利用
NASAの「月面クレーター電波望遠鏡プロジェクト」によると、電波望遠鏡は月にあるクレーターを利用するというもの。場所は、地球から見て月の裏側にある直径3~5キロメートルのクレーターのくぼみ。その中心部分の直径約1キロメートルに、「DuAxel」と呼ばれるロボットを使って、ワイヤーメッシュを張り電波望遠鏡とします。
これが実現すれば、これまで観測できなかった10~50mの波長をとらえることができるようになるそう。また、天体の電波観測では、観測機器やケーブルなどによって発生するわずかなノイズが電波望遠鏡に大きな影響を与えますが、この電波望遠鏡は月の裏側に設置するため、地球から発せられる様々なノイズの影響を受けにくく、地球を周回するさまざまな衛星の影響も受けずに低周波の信号を受信できるのです。
この月面クレーター電波望遠鏡ができれば、宇宙研究が今後さらに進んでいくと期待できます。ロマンあふれる壮大なプロジェクトの進展が楽しみですね。