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2020/9/29 18:30

魚はどうやってカエルになった? 進化の鍵を握る「歩ける魚」に新事実

カエルやヘビといった両生類と爬虫類は、魚類から進化したものと言われています。では、海を泳ぐ魚たちはどうやって陸上を歩くようになったのでしょうか? その答えの鍵となるかもしれないのが、陸上を歩く能力を持つ魚が11種類いたという新事実です。アメリカのフロリダ自然史博物館が先日発表した「歩ける魚」についてご紹介しましょう。

↑2016年に初めて発表されたケイブ・エンゼルフィッシュの骨盤の形状。今回、新たに10種が「歩ける魚」に加わった(出典: FLORIDA MUSEUM IMAGES BY ZACHARY RANDALL. CT SCAN OF PELVIS BY FLAMMANG ET AL. IN SCIENTIFIC REPORTS)

 

フロリダ自然史博物館は、ニュージャージー工科大学とルイジアナ州立大学、メージョー大学と共同で、タニノボリ科の魚30種類の骨格を分析しました。タニノボリ科はコイ目に属し、日本で生息するものにはホトケドジョウなどがいますが、この調査の結果、分析した30種類のうち10種がサンショウウオのように地を這ったり歩いたりすることを可能にする珍しい骨盤を持つことが判明したのです。

 

歩ける魚の発見はこれが初めてではなく、これまでにも東南アジアに生息するタニノボリ科の「ケイブ・エンゼルフィッシュ(学名 Cryptotora thamicola)」が陸上を歩ける魚として2016年に発表されています。しかし、その10種類の魚も背骨から骨盤のヒレをつなぐ骨の形状に着目すると、どうやら通常の魚にはない屈強な骨盤を持っており、ケイブ・エンゼルフィッシュと同じ特徴を持っていることがわかりました。

 

一般的な魚は背骨と骨盤のヒレがつながっていないため、 ケイブ・エンゼルフィッシュのような骨格は例外だと考えられていました。しかも、東南アジアで発見されたタニノボリ科の魚は100種類以上いますが、これまでの研究で歩行能力があるとわかったのはケイブ・エンゼルフィッシュだけ。この能力は、激しい水の流れのなかで身体を流されないように岩をしっかりつかみ、酸素が多くて生息しやすい場所を求めて移動するために適応していった結果、獲得され、遺伝されてきたと考えられています。

 

そこで研究チームはタニノボリ科の進化の歴史にも着目し、CTスキャンやDNA分析を用いたところ、単一の魚から進化したわけではなく、タニノボリ科全体でこのような骨盤の出現が複数回あったことも発見しました。この結果から、より詳細なタニノボリ科の進化系統樹作成が可能になると言われています。

 

【出典】

Marchese, H. (2020 September 8). Skeletal study suggests at least 11 fish species are capable of walking. Florida Museum. https://www.floridamuseum.ufl.edu/science/study-suggests-11-fish-species-capable-of-walking/