新型コロナウイルスによる影響で、イギリスではこれまで以上にアルコールのオンライン販売が伸びています。さまざまな規制によって以前のようにパブやレストランで飲食を楽しめない日々が続いていますが、その代わりにイギリスでも家飲みが増加。ビールだけでなく、ワインやカクテルといったお洒落なお酒にも人気が集まっているようです。イギリス人はどうやって家飲みを楽しんでいるのでしょうか?
バーチャルパブ
「イギリスといえばパブ」と言われるほど歴史の長いパブは、ビールやウイスキー、ワインを飲みながら交流を楽しむ場として昔から愛されてきました。ところがロックダウン中は閉店が続き、パブが恋しいと嘆くイギリス人が続出。そこで登場したのが「バーチャル・パブ」です。
バーチャル・パブには、大きく分けて2つのタイプがあります。1つは個人が自宅でパブの雰囲気をつくり出し、オンラインを通して友人や家族とお酒を楽しむもの。もう1つはさまざまなイベントをオンラインで開催するパブです。
例えばFuller’s という大手パブチェーンは、毎週水曜日の夜にバーチャル・パブクイズを開始しました。また金曜日の「ハッピーアワー」の時間帯には、オリジナルカクテルに詳しいミクソロジストやビール業界のリーダーなど、お酒の専門家によるワークショップやカクテル作りのレクチャーを配信。音楽に耳を傾けながら静かに飲みたいときには、たっぷりと音楽の世界を満喫できるライブミュージックのイベントも毎週開催しています。
コロナ前では考えられなかった新体験
ビールやウイスキーで有名なイギリスですが、最近はカクテルの人気も高まっており、ロックダウン中には、カクテルの宅配も登場しました。ロンドンをはじめとする大都市のバーやレストランでは、カクテルだけでなくカクテル用グラスや氷、おつまみの注文も受けています。
プロがつくった本格的なカクテルを自宅で味わえるというユニークな体験は、コロナが蔓延する前には考えられないことでした。このようなひとときは、1日の疲れやコロナによるストレスを吹き飛ばしてくれます。
ワインやカクテルといえばグラスで飲むことが多いと思いますが、イギリスでは最近、缶入りのワインやカクテルが店頭やオンラインで販売されるようになりました。特にカクテルは手軽にいろいろな種類を試してみたい好奇心旺盛なイギリス人に好評で、人気が高まっています。
現在トレンディで手軽なカクテル缶といえば、2019年にアメリカから上陸した「ハードセルツァー」でしょう。これは、サトウキビを原料としたいろいろな種類のスピリッツをベースに、果物で風味をつけた低カロリーのヘルシーな発泡酒です。各ブランドによりカロリーやアルコール含入量はさまざまですが、例えば、スミノフのラズベリー・ルバブ風味250ml缶(下の画像)の場合は72カロリー、アルコール率は4.7%に抑えられています。
ハードセルツァーはグルテンフリーや低カロリーなどの要素を取り入れ、健康に配慮していますが、さらにインスタグラム映えするオシャレなデザインでも消費者にアピールしています。このような戦略が功を奏して、健康維持や体重管理のために、ワインやビールの代わりとしてハードセルツアー飲むイギリス人が増えているようです。最近は、ミントや唐辛子を効かせたユニークな風味のハードセルツアーも続々と登場。500円前後で買える250mlのスリムな缶は、自宅のバーベキューパーティーやピクニックでも人気があります。
イギリス人にウケている「カクテル・サブスク」
カクテル人気が高まるイギリスでは、サブスクリプションもよく利用されています。カクテルファンの多くはシェーカーや専用グラスを持っているほど熱心なことから、カクテルのサブスクリプションはコロナが蔓延する前から注目されていました。
一般的なカクテル・サブスクリプションには「自分で好きなカクテルを選んで送付してもらうコース」や「規定のカクテルを送付してもらうコース」などがあり、「ギフトボックスコース」もラインナップされています。カクテルの袋詰めが箱入りでユーザーに送付されるものもあり、自宅にグラスと氷さえあればカクテル用シェーカーがなくても簡単に味わうことできます。
さらに、マティーニといった伝統的なカクテルのほかにも、コーヒー、ココナッツ、パンプキン、パイナップルなどをベースとしたさまざまなカクテルがあり、自宅にいながら世界の味を楽しむことができるのもお酒好きには堪らないでしょう。このような特徴をもつカクテル・サブスクリプションは、斬新的でエキサイティングな商品を好むイギリス人に喜ばれています。
バーチャルパブやカクテル・サブスクは家飲みの新しいスタイルとして定着していくかもしれません。
執筆者/ラッド順子