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2022/1/11 6:00

ビッグデータで検証! 最も健康的な「入眠時刻」は何時?

健康と睡眠は密接に関係しています。一般的に「夜は早めに寝たほうが身体に良い」と言われていますが、この説は必ずしも客観的な方法で検証されたわけではありません。しかし最近、イギリスでは加速度計を利用した、より科学的な睡眠時間に関する調査が行われました。

↑何時に寝るのが一番良い?

 

睡眠に関する研究の中には、心臓発作や心筋梗塞、脳卒中といった心血管疾患のリスクと睡眠の間に関連性があると報告しているものがあります。しかし、このような調査では、対象者の記憶を頼りにして睡眠時間を把握することが多く、このような主観的な方法が問題となっていました。

 

そこで、イギリスのヘルスケアテクノロジー企業・Humaの研究チームは、睡眠と心疾患リスクの関連性について、より客観的に調査するため、加速度計(一定の時間内における速度の変化の割合を測定する器械で、スマートフォンなどのデバイスに応用されている)を利用して睡眠時間を測定する調査を実施することにしました。

 

イギリスには、50万人ほどのイギリス人の遺伝子および健康に関する情報を含めた生物医科学の巨大なデータベース、UKバイオバンクがありますが、Humaの研究チームは「UKバイオバンク」が保持する10万人以上のデータを利用。ここから、質の低いデータやプロフィール情報が不足しているものなどを除外し、合計8万8026人のデータから7日間の入眠時刻と起床時刻を導き出しました。このうちの約3.6%にあたる3172人が心臓発作、脳卒中などの心血管系の疾患を発症したことがあります。

 

また、同研究チームは、喫煙状況、糖尿病、高コレステロールなどの要因についても調査を行い、入眠時刻と心疾患系の病気との関連性について解析しました。

 

これらのデータを解析した結果、入眠時刻が午後10時から11時の間の人は心疾患の発症リスクが最も低いことが判明。午後10時から11時に寝た人と比べると、入眠時刻が午後10時前の人は24%、午前0時以降の人は25%も心疾患の発症リスクが上がっていることが明らかになりました。しかも、この傾向は男性より女性のほうが顕著だったのです。

 

早ければ早いほど良いものでもない?

正確な入眠時刻と起床時刻をもとにした今回の解析で、心臓病関連の病気には、入眠のタイミングが重要になることがわかりました。人間は約25時間の周期で睡眠と起床を繰り返していると言われており、このサイクルは「概日リズム」や「概日時計」と呼ばれています。この概日リズムは、私たちが考えている以上に健康全般に大きな影響を及ぼしている可能性がある模様。この結果を発表した研究者は、「私たちは昼間に生きる動物で、夜には生きられないように進化してきた」と指摘しています。

 

女性のほうが入眠時刻と心疾患の発症リスクに大きな関連性があるのは、更年期のホルモンの影響や、男女間で内分泌系に違いがあることと関係しているそう。

 

規則正しい生活が健康の基本と言われていますが、午後10時から11時の間に眠りにつくことが一番健康的なのかもしれません。

 

【出典】Shahram Nikbakhtian, Angus B Reed, Bernard Dillon Obika, Davide Morelli, Adam C Cunningham, Mert Aral, David Plans, Accelerometer-derived sleep onset timing and cardiovascular disease incidence: a UK Biobank cohort study, European Heart Journal – Digital Health, Volume 2, Issue 4, December 2021, Pages 658–666, https://doi.org/10.1093/ehjdh/ztab088