AIが作る人の顔は、本物と見分けがつかないほど精巧かつリアルになってきています。しかも最近では、AIが作った顔は本物の人の顔より「信頼できる」ことが判明。何だかヤバいことになりつつあります。
画像生成するAIプログラムとして有名なのが、「GAN(敵対的生成ネットワーク、Generative adversarial networks)」と呼ばれる技術。これは「Generator(生成)」と「Discriminator(判定)」の2つからできており、Generatorが画像を生成し、その画像に対してDiscriminatorが本物か偽物か判定するように機械学習させています。この学習を繰り返し行わせることで、GeneratorはDiscriminatorが本物か偽物か判別できないほど巧妙で本物に近い画像を生成できるようになるのです。
GANは発展を続け、実際にAIが作った人の顔は、本物か偽物か人が判別しようとしても難しい結果にまでなっています。カリフォルニア大学バークレー校と英国・ランカスター大学の研究者たちは、315人の被験者に対して400人分の人の顔写真を見せ、本物か偽物か判別できるか実験しました。その結果、本物か偽物か正解した割合は48.2%。答えは本物か偽物のどちらか1/2の確率であるのに、50%を下回る結果となったのです。
本物は信用できない
また、別の実験では、233人の被験者が複数の顔写真について「信頼できる度合」を1~7段階で評価しました。すると、参加者はAIが作った偽物の顔のほうが、実在する本物の人の顔より、平均で8%も「信頼できる」と評価したのです。しかも信頼度が最も低く評価された顔の4人はすべて実在する人の顔で、逆に最も信頼できると評価された顔の3人はすべてAIが合成した顔だったのです。
この実験を行った研究者たちは、8%という結果について「わずかな数値かもしれないが、有意な差だ」と注目。決して見過ごせる数値ではないと考えられるのでしょう。また、人がAIが作った画像の方を「信頼できる」と感じやすい理由については、AIは平均的な顔を作り出すが、私たちには典型的な顔を信頼する傾向があるのかもしれないと述べています。
今回の実験で改めて明らかになったのは、AIが作る人の顔は、実在しない顔なのに「信頼できる」と感じやすいこと。このような偽物の顔は、詐欺サイトやSNSの偽物アカウントなどに悪用されることが考えられます。専門家はこのような画像の利用について、倫理的なガイドラインを作るほか、法的な制度の必要性も指摘していますが、私たち自身もフェイク画像に騙されないように、できるだけ目を養うべきでしょう。