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2022/3/25 6:00

食品ロスが約10万トンも減る! 包装と賞味期限をなくす効果を英国が調査

食べ物の食べ頃を見極めるとき、賞味期限のラベルがあればその日付を参考にするでしょう。しかし、実は果物や野菜は賞味期限以上に長持ちすることが、最近イギリスで行われた調査で明らかになりました。食品ロスを減らすためには、賞味期限ばかりに頼らず、自分の目で判断することが大切なようです。

↑この売り方が食品ロスの削減につながる

 

欧米では、プラスチック削減のため、果物や野菜のプラスチック包装を禁止する国が増えてきています。でも、果物や野菜が包装されずにバラ売りされたときに気になるのが、賞味期限がわからなくなること。これは食品ロスにどのような影響を与えるのでしょうか?

 

そこで、イギリスの環境保護団体「WRAP」が18か月にわたる調査を行い、レポートを発表しました。調査対象は、廃棄されることが多いリンゴ・バナナ・ブロッコリー・キュウリ・ジャガイモ。これらがカットされずに、包装と賞味期限の記載がない状態で販売された場合、家庭でどれくらいの期間保存される可能性があるのか、つまり、廃棄量をどれくらい減らすことができるのかを調べたのです。

 

その結果、この5つの食べ物は、包装と賞味期限の記載がない状態で販売すると、家庭から出る食品廃棄物が年間約10万トンも削減する可能性があることが判明。プラスチックも1万300トン(二酸化炭素に換算すると13万トン)も減らすことができるそうです。

 

さらに本レポートでは、カットされていないリンゴ・ブロッコリー・キュウリを5℃以下の冷蔵庫に入れると、室温で保管するよりはるかに長持ちすることも説明されています。例えば、リンゴは4℃の冷蔵庫に入れておけば、室温で保管していたものより70日以上も持つとのこと。冷蔵庫内の気温は5℃以下に設定すべきだ、とWRAPは主張していますが、ここでのポイントは、きちんと冷蔵庫で保管すれば、これらの野菜や果物はバラ売りされても、包装されたものとほぼ同じくらい持つということ。つまり、包装は必要ないということです。

 

賞味期限にとらわれるな

もし賞味期限が包装に明記されていて、それを過ぎてしまっていたら、見た目には変化がなかったとしても食べ物を廃棄する人がいるでしょう。このレポートは、それをやめようと呼びかけています。

 

確かに食べ物の包装には中身を保護する大切な役割があります。また、賞味期限とは「一定の条件下で保存された食品が、包装された時の品質を保つ期間」(精選版 日本国語大辞典)であり、食べ頃の目安を伝えてくれます。しかしその反面、包装や賞味期限にはデメリットもあるということをWRAPは伝えており、それらがなければ、野菜や果物の状態を消費者自身が自分の目で判断し、その結果、家庭から出る食品ロスやプラスチック、二酸化炭素を大幅に削減できるかもしれないのです。

 

消費者自身が自分の目で判断するためには、当然ながら賞味期限(英語では「Best Before」と言われ、品質に関わる概念)と消費期限(「Use By」。安全性に関わる)を区別することが大切ですが、賞味期限にとらわれることなく、各自が自分の考え方や嗜好に基づいて、安全なうちに食べるタイミングを決めるべきだとWRAPは考えています。

 

カットされていない果物や野菜には包装も賞味期限もいらないというWRAPの意見は、例えば、野菜や果物などを丸ごと買っても、すべて食べきれない高齢者のことを考えると極端かもしれませんが、結局、食品ロスやプラスチックを減らすためには「必要な分だけを買うこと」が最も大事なことなのかしれません。本レポートは、消費者だけでなく卸業者や小売業者にも考える材料を与えています。