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2022/6/8 21:15

お腹が空くと非合理的な行動を取る理由をミミズが教えてくれた!

お腹が空いているとき、人間はイライラして怒りっぽくなったり、軽率に物事を決めたりします。空腹状態は私たちの思考や行動に影響を与えていることは間違いありませんが、そのメカニズムが解明されつつあります。

↑何としてでも食べたい!

 

人が空腹になったとき、その信号がどのように脳に伝わり、私たちの行動を変化させているのか、その詳細はほとんどわかっていません。そこで米国・ソーク研究所のチームは、ミミズを使って空腹が生き物にどのような変化をもたらすのかを研究することにしました。

 

研究チームは、ミミズを空腹状態にして、農薬や虫よけに使われる硫酸銅の壁をエサとミミズの間に設置。ミミズがどんな行動を示すのかを実験しました。また、エサを十分に与えたミミズでも同様の実験を行い、空腹状態のミミズとの行動の違いを観察したのです。

 

その結果、空腹状態になったミミズは、お腹が空いていないミミズに比べて、ミミズにとって危険な硫酸銅の壁を積極的に進んでエサを求めようとする行動が確認できました。

 

この行動の原因を突き止めるために、同研究チームが、脳に信号を送っている可能性のある腸内の分子について調べたところ、転写因子(DNAに結合し、遺伝子の活性を調節するタンパク質)のある動きを発見。通常、転写因子は細胞の細胞質内にあり、活性化したときだけ細胞核に移動します。しかしミミズが空腹になると、「MML-1」と「HLH-30」という2つの転写因子が、細胞質に戻っていることが確認されたのです。MML-1とHLH-30が動かないようにすると、ミミズは硫酸銅の壁を越えようとする行動は見せなくなったそう。

 

ここから、MML-1とHLH-30の2つの転写因子が、毒性のある壁を進もうとするミミズの行動に関わっているものと考えられます。また、この2つの転写因子が移動する際、腸からタンパク質が分泌されていることも判明。つまり、ミミズが空腹状態になると、MML-1とHLH-30の2つの転写因子の移動が引き起こされ、それによってタンパク質の分泌が促進されている可能性があるのです。さらに、そのタンパク質が空腹情報を脳に伝達して、目の前に危険があってもエサを求める行動を促しているものと考えられるのです。

 

生き物は、苦痛な状態を自ら求めることはせず、快適な状態を求めるもの。しかし、食欲という基本的欲求がある場合は、リスクや苦痛よりもお腹を満たすことを優先する仕組みが備わっているようです。今回のミミズの実験結果について、この研究チームはさらなる研究を進めるとしながらも、「同様の仕組みが人間でも起こる可能性がある」と話しています。

 

【出典】Matty MA, Lau HE, Haley JA, Singh A, Chakraborty A, Kono K, et al. (2022) Intestine-to-neuronal signaling alters risk-taking behaviors in food-deprived Caenorhabditis elegans. PLoS Genet 18(5): e1010178. https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1010178

 

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