ただの水道水なのに、まるで清涼飲料水を飲んでいるような感覚を味わえる――。そんな体験ができる水筒「エア・アップ(air up)」が英国の子どもや若い世代の間で大人気です。一体どんな仕組みなのでしょうか?
だまされたと思って…
エア・アップは水に味をつけるわけではありません。その仕組みは脳を騙すこと。香りを嗅ぐことで、あたかも味を感じているかのように脳を錯覚させているのです。香りがするフレーバーポッドを飲み口に取り付けることにより、香りが脳に働きかける効果を利用して味覚を感じさせるのです。
私たちの脳は味覚だけでなく、嗅覚からも食べ物や飲み物の情報を受け取っています。香り付きの気泡が水と一緒に口に入って鼻腔にも伝わることで、香りが「味」として感じられるのです。
理屈は簡単に聞こえますが、実際に製品化した例はあまりないかもしれません。このアイデアを考案したのはドイツの学生2人が始めたスタートアップ企業で、現在エア・アップの人気は英国だけでなく欧州大陸にも拡大。さらに世界的飲料メーカーのペプシコからの資金調達や、ハリウッド俳優で投資家としても知られるアシュトン・カッチャー氏の支援も受けて、米国にも進出しています。
香りは約30種類
従来の清涼飲料水は砂糖やカロリーが気になりますが、エア・アップならば水だけでヘルシーなうえ、さまざまな「味」を楽しみながら水分補給が可能。専用のフレーバーポッドにはパイナップルやチェリーなどのフルーツ系から、アイスコーヒーやアイスティー、コーラまで約30種類の味が揃っています。
友人同士でフレーバーポッドを交換したり、水筒やストラップ、飲み口を好みの色にカスタマイズしオリジナルボトルを作ったりできるのも人気の理由。目隠しをして水の「味」を当てるTikTok投稿も人気。若い世代には清涼飲料水に頼らず楽しく水分補給できる水筒としてエキサイティングに映っているようです。
価格はフレーバーポッド2個付きのチャコールグレーボトルが29.99ポンド(約5500円※)で、他のカラーボトルは各34.99ポンド(約6420円)。別購入するフレーバーポッドの価格は味によって異なり、安くても3個入りで約4.99ポンド(約920円)となります。
※1ポンド=約183.4円で換算(2023年6月28日現在)
欧米では麦茶や緑茶のような冷たい無糖飲料を飲む習慣がほぼなく、清涼飲料水以外では水道水やミネラルウォーターが中心です。ただ、水ばかりでは飽きてしまうと感じる人も多く、エア・アップ人気は今後も広がることが予想されます。
執筆/ネモ・ロバーツ