コロナ禍は遠い記憶になりつつありますが、世界は次のパンデミックに備えています。では、企業はどうやって従業員を守るべきか? 経営の専門家がコロナ禍の英国、米国、インドにおける働く人たちの幸せについて調査し、3つの戦術を引き出しています(※1)。次のパンデミックにも勝てる組織の作り方とは?
1: 信頼の構築
組織のリーダーや管理職は、自分たちが信用に足る人物であることを部下に示すことが大切。常に従業員のことを思い、正直かつ誠実に行動することがリーダーには求められます。言動の一致も大切で、雇用を守ると決心していれば、実行に移すこと。また、状況が難しくなれば、危機感を共有すること。上司を信用する従業員は幸せの度合いが高くなり、危機的な状況でも物事に前向きに取り組むことができるようです。
2: サポート体制の充実と活用
サポート体制は2種類用意しておくべきとのこと。正式なものと私的なものです。前者には従業員援助プログラム(精神的ストレスやアルコール依存症など従業員が抱えている問題を企業が外部機関を使って治療する制度)や柔軟な労働環境、メンタルヘルスアプリがあります。一方、後者はマネージャーに秘密を打ち明けたり、仕事やストレスへの対処法を同僚と話したり、平たく言えば風通しの良い職場を指しています。従業員にとっては家族や友人と相談することも気分を楽にさせる方法です。
3: 生き残るためではなく、成功するために
危機において経営陣は、従業員の適合能力をただ育むだけではなく、従業員がもっと効果的に行動できるようにするために実用的な方法を模索することが必要。これには定期的な話し合いや日/週単位の振り返り作業が含まれます。このような活動を通して、従業員の働きがいを保つことができるそうですが、究極の目的は、従業員が人として成長すると同時に、地に足をつけて、状況に合わせて変化し、身を守ることができるようになること。
専門家は3つ目の戦術を英語で「adapt to thrive」と呼んでいますが、孫子風に解釈してみれば、リーダーは部下に愛情や温情をかけ、危機感を共有しながら、風林火山のように動く組織を目指すとなるでしょうか(※2)。全ての企業に当てはまる方法ではないと専門家は強調していますが、私たち一人ひとりが次のパンデミックに備えておいたほうが良さそうです。
【参考】
※1: Luke Fletcher and Nishat Babu. Three COVID-era lessons to help support employee wellbeing in times of crisis. The Conversation. July 24 2023
※2: 守屋淳(2014)『最高の戦略教科書 孫子』日本経済新聞出版社