近年、お餅で包まれた日本のアイスクリーム「雪見だいふく」にそっくりな「モチグラス」がフランスで流行しています。見た目の可愛らしさもあり、若い世代の間で人気を集めるようになりました。でも、その味や色味などは雪見だいふくとかなり違います。フランスでどのように変化したのでしょうか?
フランスのモチグラスは日本より小さめの一口サイズのものが多く、何種類かが詰め合わせになっているアソートタイプが一般的です。まるで高級チョコレートのように、きれいな箱入りで包装されていたり、マカロンのようなカラフルな彩りでセットされていたりします。コンビニなどにはモチグラス専用の冷凍庫もあり、自分で好きな味を選んで購入することができます。
日本人からすると、モチグラスの味はかなり斬新で、日本発のアイスクリームというより「東南アジアの味覚」に近いと言えます。抹茶味やあずき味などの和テイストだけを打ち出すのではなく、マンゴー、ココナッツ、黒胡麻、ドラゴンフルーツ、タピオカミルクティーなど、アジアンテイストを中心にバラエティ豊かに展開していることもモチグラスの特徴です。
東アジアへの熱視線
このように、モチグラスは変化を遂げながらフランスに定着しつつありますが、これは画期的なことです。
食の多様性と創造性を高く評価しつつも伝統を重んじるフランスでは、トレンドフードといえども定番商品としては受け入れられにくい傾向があります。そのため、海外発祥のモチグラスがブームを超え、定番フードとしてフランスで受け入れられつつあることは、とても珍しいのです。
その背景には、現在フランスに東アジアブームが再来していることが挙げられます。1990年代から続く日本ポップカルチャー人気に続き、近年ではK- popの大流行や台湾グルメブームなど、東アジア熱が再燃しているのです。このような観点から見れば、モチグラスは日本を含む東アジアへの憧れを象徴しているとも言えるでしょう。
モチグラスのブームは一過性にとどまらず、新たなデザートとしてフランス社会に完全に受け入れられる可能性をも秘めています。モチグラスをめぐる今後の動向から目が離せません。
執筆/Mayumi Folio