雑貨・日用品
2019/1/22 19:00

「赤くない消火器」はなぜできた? 創業128年のメーカーが「マットデザイン」で発売したワケ

消火器といえば、赤くて目立ってインテリア空間に馴染みにくいもの……そんな概念を覆す消火器が1月16日に一部店舗で先行販売されました。発売元は、創業から128年にわたり、防災機器の開発・製造を行ってきたモリタ宮田工業。新商品は、同社の新ブランド「+maffs(マフス)」の第1弾商品で、商品名はズバリ「+住宅用消火器」です。希望小売価格は税抜で1万円。

↑消火器らしくなく、インテリアに馴染みやすいデザインが目を引く「+maffs」の「+住宅用消火器」

 

マットな質感、シンプルなデザインがインテリアに調和する

「+住宅用消火器」をひと目見た瞬間、「こんなオシャレな消火器なら、うちにも置きたい!」と口走ってしまいました。消火器とは思えないシンプルでおしゃれなデザイン。カラーは白と黒の2色で、マットな質感がインテリアに調和するやわらかさを演出しています。「うちにも置きたい」と思わせるデザイン、「+maffs」の狙いはまさにそこにあるのだそう。消防車や消火栓、消火器など防災機器を扱うモリタ宮田工業が防災ブランド「+maffs」を立ち上げるに至った経緯について、同社の代表取締役社長、田中幸男氏は次のように話しました。

 

「日本の防災機器の設置基準や品質は、世界的に見てもトップクラスにあり、私たちも長年、高いプロ意識を持って取り組んできました。しかし、ひとたび災害が発生すると、個々が防災法の及ばない場所で、災害に向き合なければいけません。つまり防災とは、いざというとき、自分や大切な人を守る備えをするということ。私たちは、個人が継続的かつ能動的に防災を自分事として捉え、行動するためのお手伝いをする使命があるのではないかと考え、従来の企業向けだけでなく、生活者向けの新ブランドを立ち上げることにしました」

↑「南海トラフ地震の発生が懸念されるなか、防災意識の変化を起こすことが我々消防機器メーカーの使命」と語る田中氏

 

「防災意識の継続性」を重視し、「防災をライフスタイルに。」に行き着いた

新ブランド立ち上げに携わった同社新規事業開発課課長の北里 憲氏は、同社が+maffsを立ち上がるきっかけになったのは、2011年に起きた東日本大震災だった、と振り返ります。

 

「被災地には当社の支店もあり、たくさんの仲間がいましたので、何かできることをしなくては! と焦りに似た思いで支援物資を送りました。そして防災に携わる人間として、そのときの気持ちを忘れてはいけない、と感じていました」

↑新たなブランドの立ち上げに尽力したプロジェクトメンバーの1人である北里氏

 

そこで改めて防災について考えたとき、現状の問題点として「継続性がないことが挙げられる」という北里氏。「震災直後は備えるけれど、いつの間にか忘れてしまう」「メンテナンスをしていないため、いざというとき役に立たない」など、防災を継続的に意識していくのは難しい。そこで防災の目指すところは、「全ての人が防災を継続的に自分事とし、能動的に備えるようになること」にあるとし、「防災をライフスタイルに。」というコンセプトに行き着きました。

 

防災をポジティブな感情に訴えるための提案を行う

そこで今まで同社が伝えてきた防災を一から見直してみたところ、「防災を恐怖や不便など、ネガティブな感情に訴えることが多かった」ことに気づいたそう。しかし「ネガティブな感情は、自分事になりづらく、アクションも生まれない。逆にポジティブな感情に訴えたほうがいいのではないか」と考えました。

↑これまでの防災は、ライフスタイルの中にすでにいっぱいになっている日常の関心事に、むりやり付け加えようとしていたため、すぐに落ちてしまっていた

 

↑+maffsが考える防災は、日常の関心事がより興味深くなる調味料的な存在になることを目指す

 

例えば、インタリアや収納に興味を持っている人には、DIY講座を開きつつ、家族の備蓄はどの程度の量になるか、置き場所の提案をしたり、ローリングストックラックを紹介することで、暮らしの中に自然に防災を取り入れることを提案したりすることができます。

 

これを踏まえて+maffsは今後、ライフスタイルになじむ防災を提案すべく新商品を開発していくとともに、既にライフスタイルに関わるサービスや商品を提供する企業・団体とオープンに連携していく予定。さらに、現在分散している防災コンテンツを集め、オープンなプラットホームを目指していくということです。

 

防災のアイコンとして消火器をブランド第1弾に

↑キッチン空間においても違和感のないデザインが特徴の「+住宅用消火器」(写真机上の右上)

 

そんな+maffsの第1弾として用意されたのが、この「+住宅用消火器」です。ブランド第1号に消火器を選んだ理由について北里氏は、「消火器は同社が100年以上の実績を重ねてきたものであり、火事は自分で備えができる防災であることから、『防災のアイコンになりうる』と考えたからだ」とのこと。

 

「見えるところに置けるデザイン=すぐ使える」ことが重要と考えた

その特徴は3つ。まず住環境との調和を考え、見えるところに置きたくなるデザインにこだわりました。消火器は、発火から2~3分以内の初期消火に効果的ですが、インテリアになじまないデザインだと、見えないところにしまい込んでしまう可能性も。いざというときに見つけることができないようでは意味がない、つまり、見えるところに置けるデザインも、消火器の機能として重要だと考えました。

↑黄色いピンを引き抜き、レバーを握ると、消火剤が噴出します。ホースがあるタイプは、ホースが勝手に動いて火元を狙いにくくなる場合があるため、本製品ではあえてホースを使用していないとのこと

 

2つ目は、消火剤にお酢の力を活用している点。食品添加物しか入っていないため、万一キッチンで噴霧しても後片付けがしやすく、衛生面も安心です。3つ目は、購入日や使用期限を手書きできるメモリータグ。購入時に、手書きしたという体験が1つの記憶として残り、暮らしと防災をつないでくれるほか、5年後の使用期限に取り替えることを思い出す効果がある、と考えたということです。

↑メモリータグに書くという行為も、防災を意識させ、5年後の使用期限を思い出させてくれます

 

「+住宅用消火器」は、2月14日まで東京・二子玉川の蔦屋家電と、大阪・梅田の蔦屋書店で先行販売されるほか、+maffsのウェブサイトでも販売されます。防災とは、大切な家族を守ること。そういえば、ウチには消火器がなかった! というご家庭はぜひ、自分と大切な家族のために、オシャレ消火器を取り入れてみてはいかがでしょうか。