立体構造にすることで、ノーズワイヤーが不要に
ーーマスクそのもののディテールはどうですか? 東京シャツのシャツ生地マスクは立体的ですね。
川上 よくある蛇腹構造の平面タイプで、シャツ地のマスクを作ることももちろんできたのですが、それよりも立体的な構造にしたのも少しだけこだわった点ですね。というのも、平面タイプのマスクだと、ノーズワイヤーが必要になるんです。どうしても鼻のあたりがフィットしなくなりますので。ただ、このように立体的な構造にすることで、補材を使わずに着け心地の良いマスクを実現しました。
ーー耳にかけるゴムも独特ですが、これもシャツで使われているものですか?
川上 いえ、これは医療用マスクに使われているポリウレタン素材のいわゆるモビロンバンドと言われているものです。伸縮性、耐久性などに優れているものです。
弊社は日清紡グループの一つでもあるのですが、同じグループの中にポリウレタンの素材を作る部隊があります。そこがこのモビロンバンドを開発し、医療マスク用に卸していたのですが、このグループ力を発揮して、弊社のシャツ地マスクにも転用したものです。
シャツの柄と合わせてセットアップマスク構想も
ーーシャツ地のマスクの柄は、現状では選べたり、オーダーできるものではないのですか?
川上 現状では、オーダーを受け付けていません。ですが、例えばオーダーシャツを作っていただいた際に、オプションでその余り生地を使用してマスクにする、そしてシャツと一緒にお届けする……といった構想は今考え始めています。弊社のシャツは、3000柄以上のバリエーションがあります。要はフォーマルな場面であっても映えるような柄を、オーダーのプロが選定して製品化しているんですね。そこは自信を持っていますので、これらの柄の中からマスクにしてもおかしくないです。
ーーつまり、シャツと同素材のセットアップマスクですね。
川上 そうですね。オーダーシャツって、作られた経験のある方ならご存知だと思うのですが、生地まるまる全部をシャツに転じられるわけではなく、どうしても余りが出てしまうんです。これまで、こういった余り生地はお仕立ての際、箱に入れて合わせてお渡ししていたのですが、今後はその生地を使ってマスクもお仕立てさせていただけると面白いかなと考えています。
気になる夏場、「シャツ生地マスク」の向き・不向きは……
ーーマスクが感染予防に役立つ反面、夏場は熱中症にもなりやすいといった声も出ています。この点について、シャツ地の利点があればお聞かせください。
川上 市場で販売されているマスクは素材がポリプロピレンであったり、
この点においても、「シャツ地マスク」は、天然繊維で吸湿性も良く、もちろん肌にもなじみやすい素材です。真夏なので、付けてみて「全く暑苦しくない」ということはないはずですけど、あらゆるマスクの中では蒸れが軽減され、快適に過ごしていただけるのではないかと思っています。
ーー今後、新型コロナウイルスの第2波、第3波もあるかもしれませんが、供給面で考えていることはありますか?
川上 はい。もちろん、弊社では万が一に備えて、すでにマスクの生産体制を整えています。もし、そういった際に、再びマスク不足などが叫ばれれば、率先して手を挙げ、お客さまに提供していきたいと思っています。
不織布の使い捨てマスクももちろん良いですが、さらに見た目で上をいき、飛沫防止の面でも十分なマスクを求める方には、もってこいの「シャツ生地マスク」。是非一度チェックしてみてください。
撮影/我妻慶一
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