「週刊GetNavi」Vol.54-3
シャープとソニーは、日本国内向けのUltra HD Blu-ray(UHD BD)製品について、今年からビジネスを本格化する。この原稿を執筆している4月末の段階では、ソニーの製品はまだ発表されていない(※)。しかし、1月のCESの段階で方針は明かされており、出ることは間違いない。
(※)編集部注:2017年5月8日10時にソニーよりUHD BDプレーヤー「UBP-X800」の発売が発表されました。
彼らが二の足を踏んでいたのは、UHD BDプレイヤーの開発に使うLSIなどの準備の問題があるからだ。4Kになるということは当然、それだけパワーのあるLSIが必要になる、ということでもある。高価なLSIを使えばすぐにでも作れるが、そうなるとコストが上がる。たくさんの製品で使えるLSIを準備し、一気に多数のラインナップに使うとコストが下がるので望ましいが、それには「売れる」という確信か、開発期間が必要になる。時間をかけるほど使える技術が成熟するので、コスト的には有利になる。早期の製品が高価であるのはそうした事情も関係している。
シャープは今春発表の製品より、UHD BD対応のレコーダーでは、UIの「4K化」を行った。UHD BD対応製品を買うのは4Kテレビを買った人なので、UIも高精細で美しいものにしないと満足しないだろう……という分析からだ。すなわち、同社はレコーダー製品の「次世代化」を待って、UHD BD製品を投入したのである。ソニーはそこまで「次世代化」を意識していたわけではないようだが、コストや開発期間の関係から、「マス向けの製品はこの時期まで待った方がいい」との判断になったようである。
UHD BDの普及には、UHD BDのタイトルが増えて「見たい」と思う人が増えることが必要である。従来、メーカーの側はまずハードウエアを出すことで需要を喚起し、ソフトが揃うのを待つのが定石といえた。だが、ソニーやシャープはUHD BDの市場をそこまで大きいものと評価しておらず、「市場のニーズが大きくなるまで待つのがベスト」と判断していた……ということでもある。逆にいえば、先行者利益を大きいものとは判断しなかったのである。実際、DVDやBDの時代と違い、UHD BDの市場はスロースタートで、彼らの判断は間違いではなかった……とも言える。
特に日本において大きいのは、レコーダー市場だ。UHD BDには記録ディスクの規格がない。4K録画の行方すら、まだはっきりしていない。そうなると、「SD画質録画=DVD」「ハイビジョン録画=BD」といったわかりやすさはない。テレビ売り場で「4Kテレビとセットでうまく売っていく」形を作らないと、UHD BDは普及しにくい。
とはいえ、筆者はそこまで悲観していない。確かにUHD BDは急速に普及する、とは思わないのだが、セルディスクをじわじわ置き換える形で、こだわりのあるAVファンには「あたりまえ」のものになっていくのでは……と予想している。
その根拠はなにか? その辺は次回のVol.54-4で解説したい。
●Vol.54-4は5月15日(月)配信予定です。
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