この数年は、かき氷人気がかなり白熱しており、人気のかき氷店は数時間の行列も当たり前。そんなかき氷人気を受けてか、最近は家庭用のかき氷器の発売も目立ちます。しかし、こうした家庭用かき氷器では、専門店レベルの味を再現するのはなかなか難しいようです。そんななか、貝印から「プロ仕様」を謳った「Kai House 本格かき氷器 DL7521」(実売価格1万6200円 ※以下、本格かき氷器)が発売されました。
氷受け板に氷を乗せてハンドルを回すだけ
本機は、業務用ハイエンド機を目指したプロ仕様の製品ですが、使い方はいたって簡単です。付属する専用の製氷器で氷を作り、その氷を「氷受け板」に乗せて大ハンドルを回すだけ。ハンドルと連動して氷が回転することで、氷受け板の刃が氷を薄く削るという、単純な構造です。
2重カップで透明な氷を作ったら20時間かかった
とはいえ、本格かき氷器にはおいしい氷を削るための、さまざまな工夫とこだわりがあります。その一つが「氷」です。かき氷専門店の多くは、透明で硬い「純氷」を使用しています。これは、-10℃以上の低すぎない温度で、ゆっくりと水を凍らせることで作られる氷です。しかし、一般的な家庭の冷凍庫の温度は-18℃~-25℃と非常に低温。このため、水が一気に凍り、気泡を含んだ柔らかく不透明な氷になってしまいます。
そこで、本格かき氷器では、熱が伝わりにくい2重カップの製氷器を採用。ゆっくりと水を凍らせることで、透明で硬さのある氷が作れるようにしました。また、より透明な氷を作るには、ミネラルウォーターを5分ほど沸騰させ、常温に戻した水を使うと良いそうです。
今回のレビューでは、「内カップだけで水道水を氷にしたもの」、「2重カップで水道水を氷にしたもの」、「2重カップで、沸騰させたミネラルウォーターを氷にしたもの」の3種類の氷を作りましたが、たしかに「2重カップで沸騰させたミネラルウォーターを氷にしたもの」は透明な部分がかなり多いことがわかります。
ちなみに、説明書には、透明な氷ができるまでの時間は「約8~12時間」とありましたが、我が家では20時間近くかかりました。かき氷パーティーなど、大量に氷を使う場合は、数日前から氷を作り置きしておく必要がありそうです。
ギア内蔵でどんなに力を入れても均一に削れる
もちろん、本格かき氷器は美しい氷が作れるだけではありません。本体には「ウォームギア」を内蔵。想定以上の力でハンドルを回すと、このギアが余分な力を本体側面の小ハンドルに逃がします。このため、強い力でハンドルを回しても「一部の氷が分厚く削れる」といった失敗がなく、すべての氷を薄く均一に削れるのです。
口に含むとスーッと溶けるお店の味が再現できた
このため、本製品で削った氷は、専門店で提供されるかき氷のように、細かな繊維が連なった薄い板状。スプーンですくうとふわふわとした感触であるほか、口に含むと舌の上でムラなくスーッと消える、これぞ「お店の味」です。ちなみに、不透明な氷も削ってみたところ、なんとこちらは「粉状」に削れてしまいました。しかも、粉状の氷は氷同士がくっついて、一部溶けにくい部分が口に残る残念な食感。透明な氷は見た目だけでなく、食感も格段に良いので、手間と時間がかかっても透明な氷にこだわることをオススメします。
甘いスイーツからサラダまで様々なレシピが楽しめる
家庭でかき氷が作れる魅力のひとつは、なんといっても自分好みのバリエーションが楽しめるところでしょう。本格かき氷器には専用のレシピブックも付属しており、なんとシロップの作り方まで載っています。そのほか、今人気の「台湾風マンゴーかき氷」のような、味付き氷を削って作るかき氷のレシピも掲載。
味が薄まらないめんつゆ氷を試してみて
貝印が推奨するレシピではないものの、レシピに掲載されていないかき氷が作れるのも、自宅用かき氷器だからこその楽しみです。我が家では、「めんつゆ」を凍らせて、夏の暑い日はそうめんにかけて食べていました。これなら、つゆが薄まる心配もなく、そうめんを冷たいまま食べることができます。また、残った「めんつゆ氷」は、ビニール袋に入れて冷凍庫に保存することができるため、好きな量だけ使えるのが便利です。
凍ったイチゴもスパっと切れる!
また、筆者がこの夏個人的にハマっているのが、牛乳で薄めたコンデンスミルクに、イチゴをゴロゴロと入れて凍らせたものを、かき氷器で削る「そのままイチゴミルク」。ふつうの家庭用かき氷器だと、イチゴ部分がボロボロとフレーク状に削れるのですが、なんと本製品ではイチゴの断面が輪切りになるように美しく削れます。貝印はさまざまなキッチンウェアを発売していますが、もともとは刃物メーカー。このイチゴの断面をみると、「さすがは刃物メーカー」と納得できる切れ味のよさです。
唯一、メンテナンスしづらいのが惜しい
本機で唯一、気になるのは本体が分解できないこと。味付きの氷を削ると、氷が触れる部分がベタベタになるのですが、本体が分解できないので、水でジャバジャバと洗うことができません。そのうえ、本体内が濡れるとサビなどの危険があるため、本体は流水でのお手入れが不可。このため、お手入れ方法は、洗剤を含ませた布で汚れを拭き、さらに乾いた布で水分を拭くしかないのです。これだと氷を固定するスパイクや、刃を固定するビス回りなど、凹凸が多い部分は汚れが残りそうに感じました。
手間はかかるが「プロ仕様」を謳うだけの実力だった
メンテ性が惜しいところではありますが、1万6200円という価格は、性能を考えれば手ごろといえるでしょう。電動式ではなくシンプルな構造のため、壊れにくそうなのも魅力的。コンセントも不要なので、場所を問わず使用できるのもうれしいです。
また、筆者はいままでさまざまな家庭用かき氷器を使ってきましたが、ここまで「専門店の味」に近いものは初めて。水を沸かして氷を作り、さらにシロップも自家製となると、手間と時間はそれなりにかかりますが、それに見合ったクオリティのかき氷が食べられました。ご家庭だけではなく、小規模カフェなどの業務用でも活躍しそうですね。個人的には、「プロ仕様」の「本格かき氷器」の名に違わぬ実力だと感じました!