JRをはじめ鉄道各社の多くが例年、春にダイヤ改正を行う。今年は、そのダイヤ改正に合わせて複数の鉄道会社で新型車両がデビューした。特に首都圏の私鉄各社では、その動きが著しい。多くの新車両が走り始め、路線模様も華やかになっている。なぜこの春、新型車両が多く登場しているのだろうか?
まずは耐用年数の問題。鉄道車両の耐用年数は在来線車両の場合、30年前後といわれている。各社とも景気が良かったバブル期に多くの車両を造っては投入させたが、これらの車両が生まれてちょうど30年ぐらいと、交換時期にさしかかっていることが大きい。
さらに2020年には東京オリンピックが予定されている。海外から訪れる人が年々増えていくなかで、旧型と入れ替え、表示など国際化に対応した新型車両を投入しようとする動きも強い。そこで本校では、今春に登場した首都圏の新型車両の“魅力”と“違い”を追ってみた。
関東鉄道キハ5010形/2月25日デビュー
関東鉄道常総線に2月25日に登場したのがキハ5010形。これまでの関東鉄道のディーゼルカーのイメージを一新させ、明るく華やかな塗装が目立つ。関東鉄道としては4年ぶりの新車で、1世代前のキハ5000形に比べてエンジンの排気量を1300CCから1100CCに抑制。エンジン性能はほぼそのままに、軽量化と燃費向上が図られている。また、室内灯はLED照明に。台車の変更により乗り心地の向上、さらに耐雪ブレーキ装置なども新たに装備された。
常総線は、通勤・通学客が多い取手駅〜水海道駅間と、それより以北の水海道駅〜下館駅間では路線の趣が大きく異なる。水海道駅までは2両編成で、水海道駅以北は1両での運行が多い。単行また増結して走ることが容易なキハ5100形導入後の3月4日からは、取手駅〜下館駅間の直通運転列車も増便された。
小田急電鉄30000形EXEα/3月1日デビュー
ロマンスカーといえば小田急電鉄の観光向け特急の代名詞。なかでも、1996年に登場した30000形は“EXE(エクセ)”の名で親しまれてきた。連結・切り離しがしやすい構造で、ビジネス特急としても活用されている。そして、このEXEにプラスアルファの要素を加え登場したのが「30000形EXEα」だ。
外観は上部がムーンライトシルバー、下部がディープグレイメタリックで、より華やかなカラーとなった。座席もブルーとベージュの2色シートに変更。壁や床、天井部に落ち着いた茶系の内装を施した。そのほかにも、大きなスーツケースを置くことができるラゲージスペースや、多目的トイレ、温水機能付き便座などを備えるなど、より快適な造りとなっている。EXEは今後、徐々に新型のEXEαへとリニューアルされていく予定だ。
千葉ニュータウン鉄道9800形/3月21日デビュー
千葉ニュータウン鉄道を知っている人はかなりの“鉄道通”といって良いだろう。北総鉄道(成田スカイアクセス線)と呼ばれる路線のうち、小室駅〜印旛日本医大駅の区間を千葉ニュータウン鉄道が所有している。表面にはあまりその名前が出ることのない鉄道会社だが、独自の車両を保有して走らせてもいる。
この千葉ニュータウン鉄道の新車が9800形だ。新車といっても“わけあり”。9800形は元京成電鉄3700形3738編成で、千葉ニュータウン鉄道へ移ったのち、水色と黄色の帯色に変更され“新車”として3月21日から走り始めた。ようするに、帯の色が変わっただけ。北総鉄道では同形式の電車(7300形)が走るため、同路線では見慣れた車両といって良いだろう。
ちなみに、9800形が運転開始された前日の3月20日には、1984年の路線開設時から走る9000形が引退している。その置き換え用として登場したのが“新車”の9800形だった。
東京メトロ日比谷線13000系/3月25日デビュー
銀座、秋葉原、六本木など東京の繁華街を走る東京メトロ日比谷線には、車両はシルバー1色の03系が走る。同線には東武鉄道の20000系、20050系、2070系も乗り入れているが、この日比谷線には東京メトロ、東武鉄道の車両とも前後両端の2両が5扉車という車両が混じって走っている。乗り降り時間を短縮するため、こうした5扉車が登場したが、全車両でなく一部の車両のみということもあり、使い勝手の悪さからも評判は芳しくない。ドアの位置が均一でないために、ホームドアの設置もできずにいた。
そうした問題点を解決しようと登場したのが日比谷線13000系である。4扉7両編成で統一、ロングシートながら1人あたりの座席幅が03系の430mmから460mmに変更された。また、ドアの上部には17インチワイド液晶を3画面配置。いろいろな情報を提供できるように工夫されている。2020年度まで全44編成(計308両)がすべて13000系に置き換えられる予定だ。なお、日比谷線に乗り入れる東武鉄道の新型70000系も4扉7両編成で、近々デビューする見通し。
西武鉄道40000系 S-Train/3月25日デビュー
西武鉄道の新型通勤電車として9年ぶりに登場した40000系。新機能を備えた車両として登場前から、かなり話題となった電車でもある。座席の位置がロングシートとしても、クロスシートとしても使える「ロング・クロス座席転換」システムを採用。ごく普通の通勤電車として走り、また有料座席指定列車としての利用も可能とした。
さらに他社路線に乗り入れ、平日は東京メトロ有楽町線の豊洲駅〜所沢駅間で、また土休日には、横浜高速みなとみらい線の元町・中華街駅〜西武秩父駅(一部は所沢駅・飯能駅まで)間の有料座席指定列車「S-Train」として走る。
車椅子やベビーカーでの乗車に配慮したパーソナルゾーンを設け、また各車両に空気清浄機を付けるなど、より快適な車内環境作りを目指すなど、各所に新しい時代の電車らしいアイデアが盛り込まれている。
横浜市交通局ブルーライン3000V形/4月9日デビュー
横浜市交通局が運営する市営地下鉄の路線のうち、湘南台駅〜あざみ野駅間を走るブルーライン。この路線を走る電車は、すべて「3000」という数字が付く。なかでも、4月5日に走り始めたのが3000V形車両だ。3000形の5次車にあたる車両で、ブルーラインとしては約10年ぶりの新車となる。
これまでの車両に比べて、ヘッドライトがつり目形のより精かんな面構え、高効率モーターを採用、照明のLED化など、省エネ性能を向上させた。車椅子、ベビーカーエリアも充実。出入口には17インチワイド液晶を装備、送風機の増設で、室内温度をより均整にできるように配慮された。また、各車両間にある透明の仕切り窓には横浜の観光地、みなとみらいや赤レンガ、山下公園などが描かれている。
東武鉄道500系リバティ/4月21日デビュー
この春に登場した新車の中で、最も注目を集めているのが東武鉄道の500系Revaty(リバティ)だろう。東武鉄道としては、1990年から走る100系SPACIA(スペーシア)以来の本格的な特急形電車の登場となった。
最大のポイントは前面の中央に付く貫通扉で、内部には貫通ホロが備えられる。3両編成同士を連結、6両で浅草駅〜下今市駅間を走り、下今市駅から先の東武日光駅や新藤原駅へは切り離して3両編成で走ることができる。これにより、より効率的な運転が可能となり、一部の列車は野岩鉄道や会津鉄道まで乗り入れる。
4月21日のダイヤ改正時から営業開始。朝夕はビジネス特急として、東武アーバンパークライン(野田線)なども走る予定だ。さらに、8月からは下今市駅〜鬼怒川温泉駅間でSL運転も行う見通し。特急リバティの運転で、東武沿線はさらに注目度が高まりそうだ。
こうした新車両の登場が続く首都圏だが、来年にかけても、新車両が続々と登場する。最後に主な会社と新車両の予定を上げておこう。
【今後デビュー予定の新型車両一覧】
●東武鉄道70000系 2017年4月に公開予定(東京メトロ日比谷線乗り入れ用)
●西武鉄道 2018年度、新型特急電車が登場予定(ニューレッドアロー号の次代車両)
●小田急電鉄 2018年度 新ロマンスカーが登場予定
●東急電鉄2020系 2018年春に登場予定
●京王電鉄5000系 2018年春に登場予定(有料の座席指定列車となる)
●東京都交通局 都営地下鉄浅草線5500形 2018年春に登場予定