米離れが進んでいると言われて久しいですが、一方でごはんのおいしさにこだわる人は増加中です。2006年に三菱電機が10万円を超える炊飯器「本炭釜」を発売して以来、高級炊飯器が各メーカーから続々登場。好調な売り上げを見せています。
人気5機種で炊いたごはんの食感・味の傾向をチェック
そんなハイエンド炊飯器にあって、根強い人気を誇る大手メーカーの5機種を集めてテストし、実際のところをレポートしようというのが本企画。各モデルで炊いたごはんの味の傾向や、少量炊飯でのおいしさ、保温性能、操作性、お手入れのしやすさ、設置性などを比較検証していきます。
第1回となる今回は、炊飯器の最重要ポイントであるごはんの食感・味の傾向をチェック。炊きたてを試しただけでなく、おにぎりやお弁当で気になる冷やごはんや、保存に便利な冷凍→再加熱したごはんも試食し、その傾向を探りました。
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【検証する機種はコチラ】
エントリーその1
発熱性・蓄熱性に優れた南部鉄器の羽釜を採用し大火力で炊き上げる
象印
圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』
“南部鉄器 極め羽釜” NW-AT10
実売価格12万9600円
発熱性・蓄熱性に優れた南部鉄器の羽釜を内釜に使用した炊飯器。大きく伸びた羽根で側面ヒーターの熱を釜内に伝え、最大1450Wの大火力と1.5気圧の圧力炊飯でごはんをふっくらモチモチに炊き上げる。また、前回炊いたごはんの感想を入力することで、121通りのなかから好みの食感に近づける機能「わが家炊き」の炊き分け範囲を拡大。従来機種より固めに、よりモチモチに炊けるなど、幅広い食感に炊き分けられる。
SPEC●炊飯容量:0.5~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:151wh●保温1時間あたりの消費電力量:17.1Wh●加熱方式:プレミアム対流●内釜:南部鉄器 極め羽釜●サイズ/質量:約W305×H245×D400mm/約11.5kg
エントリーその2
「Wおどり炊き」に「加圧追い炊き」を加え、甘みとモチモチ感がアップ
パナソニック
スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器
Wおどり炊き SR-SPX107
実売価格9万7980円
IHの通電切り替えで激しい熱対流を生み出す「大火力おどり炊き」と、釜内を加圧状態から一気に減圧し激しい対流を生み出す「可変圧力おどり炊き」を組み合わせた「Wおどり炊き」を搭載。熱と水分を米に均一に行き渡らせ、ふっくらモチモチの銀シャリに炊き上げる。炊飯工程の終盤にさらに加圧して釜内を高温にする「加圧追い炊き」機能を新たに採用し、ごはんの甘みとモチモチ感がさらにアップした。50銘柄の銘柄炊き分け機能を搭載するほか、釜内を高温洗浄できる「お手入れ機能」も新採用。
SPEC●炊飯容量:0.5〜5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:160wh●保温1時間あたりの消費電力量:14.4Wh●加熱方式:6段全面IH●内釜:ダイヤモンド竃(かまど)釜●サイズ/質量:W266×H233×D338mm/7.0kg
エントリーその3
発熱効率が高い「本炭釜」と連続沸騰技術でかまど炊きの味を再現
三菱電機
IHジャー炊飯器
本炭釜 KAMADO NJ-AW108
実売価格12万6310円
IHの発熱効率が高い純度99.9%の炭素材を使った「本炭釜」採用モデル。内釜全体の発熱と噴きこぼれのない連続沸騰技術により、粒感のいいふっくらとしたかまど炊きの味を再現する。沸騰力の向上と高断熱構造の強化で火力をさらにアップ。蒸気口に新搭載した密封弁が蒸らし時の蒸気の流出を抑え、潤いたっぷりのごはんに仕上げる。15通りの食感炊き分け機能「炊分け名人」に加え、35銘柄に対応する「銘柄芳潤炊き」機能も持つ。
SPEC●炊飯容量:0.5~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:162wh●保温1時間あたりの消費電力量:17.2Wh●加熱方式:7重全面加熱+連続沸騰●内釜:本炭釜●サイズ/質量:W285×H249×D320mm/約5.7kg
エントリーその4
高温で炊き上げて高温で蒸らし、甘みと弾力の強いごはんに仕上げる
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
THE炊きたて JPX-102X
実売価格7万740円
内釜に遠赤効果の高い釉薬を塗った土鍋を採用し、さらに本物の土のかまど「遠赤大土かまど」を本体内に装備。土鍋と土かまどの二重発熱構造と可変圧力によって高温で炊き上げ、200℃以上の「高温蒸らし」で、甘みと弾力の強いご飯に仕上げる。しゃっきりからモチモチまで、好みの粘り加減に調整できるほか、土鍋のおこげが味わえる3段階の火加減調節も可能。「押麦メニュー」と「もち麦メニュー」の2種類の麦めしメニューも搭載する。
SPEC●炊飯容量:1.0~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:148wh●保温1時間あたりの消費電力量:18.3Wh●加熱方式:土鍋圧力IH + 可変W圧力IH●内釜:プレミアム本土鍋(四日市萬古焼)●サイズ/質量:約W265×H233×D309mm/約7.4kg
エントリーその5
内釜の底に鉄の粒子を打ち込み効率的な発熱と高い伝熱性を両立
日立
圧力スチーム炊き ふっくら御膳
RZ-AW3000M
実売価格10万7780円
水温を60℃以下で米にしっかり吸水させる「高温浸し」と独自の圧力スチーム技術を搭載。ふっくら艶やかで甘み豊かなごはんに炊き上げる。アルミ合金の内釜の底に発熱性の高い鉄の粒子を打ち込むことで効率的な発熱と高い伝熱性を両立し、内釜全体に素早く熱を伝えることで炊きムラを抑える。0.5合でもおいしく炊き上げる「少量炊き」機能も特徴。「蒸気カット」機能付きで、キッチン棚の中で使っても棚の天面が濡れず、設置場所の自由度が高い。
SPEC●炊飯容量:0.5~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:145wh●保温1時間あたりの消費電力量:13.7Wh●加熱方式:圧力スチーム炊き●内釜:高伝熱 打込鉄・釜●サイズ/質量:約W268×H237×D352mm/約6.6kg
【検証内容はコチラ】
その機種で最も上質な炊飯ができるコースで炊き上げ、その香りや味、食感を比較しました。お米は岩手県産ひとめぼれ(無洗米)を使用。コシヒカリの強い味わいと、ササニシキのさっぱりした味の中間にあたる、バランスの取れた味のお米です。米は全機種3合で炊飯。各モデルは炊飯時に食感の選択ができますが、今回は機種の味の傾向を知るために、中庸(ふつう)の食感設定を選択しました。
また、食感と食味は炊きたてに加え、冷やごはんと冷凍・再加熱したものについてもチェックしています。冷やごはんは、炊きたてをラップに包んでおにぎりにし、室温で5時間ほど冷ましたものを試食。冷凍ごはんは、炊きたてをラップに包んで冷凍庫で冷凍し、1日経ったものを電子レンジで温めました。
【検証結果はコチラ】
エントリーその1
象印
圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』
“南部鉄器 極め羽釜” NW-AT10
<炊き上がり>
香りが濃厚なうえ、甘みたっぷりでモチモチの食感
今回は通常の約1.5倍の時間をかけて炊飯する「熟成炊き」メニューで炊飯。マニュアルによると「じっくりと時間をかけて米の旨みを引き出す」炊き方だそうです。
約1時間30分後に炊きあがったごはんは、炊きたての香りが濃厚。ごはんの固さはやや柔らかめの仕上がりで、コシヒカリと比べると粘りが少ないお米を使っているにもかかわらず、モチモチした弾力が生まれています。お米の一粒一粒がうまみのもとである「おねば」をたっぷりまとっていますが、ベタつき感はなし。味は甘みたっぷりで、米本来のみずみずしさもほのかに感じられます。
<冷やごはん(おにぎり)>
甘みが強く、モチモチ食感をしっかりキープ
冷やごはんの甘みは5機種の中で一番強く、モチモチした食感が冷めてもしっかり保たれていました。食べ盛りのお子さんがいる家庭などでは、お弁当にすると食べ応えがありそう。ただし、ごはんが固くなることはありませんでしたが、ややベタつきが出ていました。
<冷凍・再加熱>
炊きたてに近い食感が蘇るも、わずかにベタつきが
冷凍ごはんは、食感が固くなったり柔らかすぎたりすることもなく、炊きたてに近いモチモチ感が蘇りました。ただし、冷やごはん同様、わずかにベタつきは感じられます。
エントリーその2
パナソニック
スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器
Wおどり炊き SR-SPX107
<炊き上がり>
みずみずしさがあり、食感・味ともにバランスが良好
銘柄炊き分けで「ひとめぼれ」の無洗米を選び、「銀シャリ」コースで銘柄米ごとの「おすすめ」コースを選んで炊飯。おすすめコースでなく「かため」「やわらかめ」を選ぶこともできます。約50分で炊き上がったごはんは、炊きたての濃厚な香りのなかにみずみずしさも感じられ、食欲をそそります。
ひと口食べてみると、柔らかすぎず固すぎず、しっかりとした弾力とほどよい粘り気があります。象印同様に甘みが強く、さらに米本来のみずみずしいうまみも感じられ、味のバランスも良好だと感じました。
<冷やごはん(おにぎり)>
しっとり感が加わり、米粒それぞれが水分の層をまとったイメージに
本機はWおどり炊きの技術に加え、追い炊き時に「220℃IHスチーム」を投入。これが米の表面に浮き出たうまみをコーティングするのだとか。この“うまみの膜”により、冷めても水分が逃げず、おいしさがキープできるのだそうです。
実際に食べてみると、冷やごはんもモチモチした食感で、さらにしっとりした食感が加わりました。とはいってもごはんがべタついたり、柔らかくなったりすることはなく、弾力のある米粒それぞれが水分の層をまとっているイメージです。近年の「Wおどり炊き」は冷やごはんもおいしいと評判ですが、最新機種でもそのおいしさはしっかり継承されています。
<冷凍・再加熱>
見ためは「惜しい」が、食感と味は炊きたての状態に極めて近い
さらに、冷凍ごはんをレンジ加熱すると、ベタつきがほとんどありません。5機種の中でも食感と味が炊きたての状態にかなり近いと感じました。
エントリーその3
三菱電機
IHジャー炊飯器
本炭釜 KAMADO NJ-AW108
<炊き上がり>
自然な風味があり、口のなかで米粒がほどける絶妙な食感
本機は、今回テストした炊飯器のなかでは唯一圧力炊飯を行わないモデル。お米に負担をかけない1.0気圧で炊くことで、お米の一粒一粒が甘み・弾力・ツヤ・香りといったおいしさの成分を含む「保水膜」に包まれ、ふっくらと炊き上がるのだそうです。
今回は、「銘柄芳潤炊き」メニューで「ひとめぼれ」を選び、食感選択で「かたさ:ふつう」「粘り:ふつう」を選んで炊飯。ふたを開けてまず驚いたのは香りのみずみずしさ。他機種とは一線を画す爽やかさです。味わいもその香りと同様、自然なお米の風味が感じられ、甘さも上品。口のなかで米粒がほどけるしゃっきりめの食感ですが、ただ固いのでなく、噛めば十分な弾力も感じられるという絶妙な食感です。
<冷やごはん(おにぎり)>
雑身が少なく、しゃっきりした粒感にモチモチ感が加わった
冷やごはんは、しゃっきりした粒感を残しつつも、モチモチ感が出てきたのが印象的。味は炊き立て同様、やや控えめですが雑味がなく、食べ飽きないおいしさです。ベタつきは少し出てきましたが、それがほどよい粘りになった印象。口の中でほぐれる感じが冷やごはんでもまだ残っているのがうれしいです。
<冷凍・再加熱>
柔らかさが出たが、みずみずしさが残り炊きたての味に近い
冷凍ごはんでは、しゃっきり感はかなり少なくなり、柔らかくもなりましたが、それでも5機種の中では最もほぐれる食感だと感じました。甘さはやはり控えめで、みずみずしさが蘇っています。パナソニック同様、炊きたての味わいにかなり近づいていると感じました。
エントリーその4
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
THE炊きたて JPX-102X
<炊き上がり>
おこげの香ばしさ、強い弾力と粘りがあって食べ応え満点
蓄熱性の高い土鍋とかまどを本体内に搭載した本機は、その蓄熱性を活かして香ばしい風味のごはんが炊けるのが特徴。おこげが手軽に楽しめるのも魅力です。今回は、「極うま白米」の仕上がり(食感)標準を選択。さらに、火加減は3段階のうちの「中」を選びました。
炊き上がってふたを開けると、ほのかなおこげの香りとともに、炊き立てごはんの香りが立ち込めます。やや柔らかめの炊き上がりながらごはんにハリがあり、強い弾力と粘りのある、食べ応え満点の食感。噛むほどに甘みが口のなかに広がります。実は別日に火加減「弱」でも炊いたのですが、これだとおこげがほとんどつきませんでした。なお、火加減「弱」より火加減「中」で炊いたほうが、ごはんのモチモチ感が増した印象です。
<冷やごはん(おにぎり)>
食べ応えは健在で、水分が飛び引き締まった食感に
冷やごはんもモチモチ感がしっかり感じられ、甘みも強くて食べ応えがありました。ごはんの水分が適度に飛んで、炊きたてよりごはんが引き締まった感もあり、これはまたこれでおいしいです。
<冷凍・再加熱>
わずかにベタつくが、独特の粘りとおこげの風味が復活
冷凍ごはんは、再加熱することで独特の粘りとおこげの風味が蘇りました。炊きたてに比べ、さすがにベタつき感が増えましたが、味は十分おいしく、炊きたての新鮮な香りも復活します。
エントリーその5
日立
圧力スチーム炊き ふっくら御膳
RZ-AW3000M
<炊き上がり>
バランスのいい味と食感で噛むほどに甘みが増してくる
極上炊き分けの「ふつう」で炊飯。他機種と比べるとやや控えめながら、昔ながらの「炊き立て」のいい香りがしっかり広がります。ごはんのハリ、つやもまずまず。食感は柔らかくなりすぎず、ほどよい弾力と粘りがあります。口のなかで米がほどける食感もあり、バランスのいい炊き上がりだと感じました。味は最初甘さやや控えめに感じましたが、噛むほどにどんどん甘みが増します。
<冷やごはん(おにぎり)>
ややベタつくが、ほどける食感と雑味のない味が堪能できる
冷やごはんは、ベタつきがやや感じられますが、口の中でほどける食感は健在。モチモチした食感がやや出てきたように感じました。雑味のない甘みも堪能できます。
<冷凍・再加熱>
粘りが強く出てきたが、甘みが増してくる特徴は変わらず
一方、冷凍ごはんを温めると粘りがかなり強くなり、少し団子感が出てきました。表面の水分が飛んだせいか、やや固めに感じる部分もあります。最初はさっぱりでどんどん甘さを増すおいしさは、冷凍でもしっかり味わえます。
【今回の検証のまとめ】
象印は甘く柔らかでモチモチ、タイガーは香ばしさも魅力
今回の5機種に関して、基本の食感と味の傾向をまとめると、モチモチ傾向が強く、ごはんを甘めに炊き上げるのは、象印とパナソニック、タイガー。逆にさっぱりとした食感と甘さに仕上げるのが三菱電機で、日立がこれらの中間、ということになります。
モチモチ系のなかでごはんの固さや弾力、粘りのバランスが最も良いと感じたのがパナソニック。象印は浸し時間の長い「熟成炊き」メニューで炊いたせいか、やや柔らかめの炊き上がりでした。タイガーは他機種と比べて、香ばしい風味の炊き上がりになるのが魅力です。
三菱は他機種と一線を画す方向性で、日立はバランスが極めて優秀
一方、米のみずみずしさを引き出すのに最も秀でていたのが三菱電機。ひと口食べただけで、目指す味の方向性が他機種と一線を画していると感じました。ガツンとした甘みやモチモチ感が好きな人より、あっさりめの味わいを好む人に向いている機種といえるでしょう。また日立は、モチモチ系としゃっきり系の中間に位置し、並べると個性が見えにくいですが、炊き上がり自体のバランスは極めて優秀です。
冷やごはん、冷凍ごはんではパナソニックが好印象
冷やごはんの味はどれもハイレベルでしたが、そのなかでも特に秀逸だと感じたのはパナソニックで、しっとりした食感は炊きたてとはまた違うおいしさでした。三菱電機もしゃっきり食感にしっとり感が加わり、パナソニックとは異なるベクトルの食味を実現していると思います。
冷凍ごはんの再加熱でも、パナソニックが最も炊き立ての味を再現できていると感じました。他の機種はややベタつきが出てくるものが多かったですが、それでもごはんの味は、どの機種も炊き立てのおしいさがかなり復元できていました。ごはんは数日分をまとめて炊いて、レンジでチンして少しずつ食べるという人も、十分満足できるクオリティです。
次回は、各モデルの少量炊飯での味と、保温性能を検証したいと思います。
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