本・書籍
2017/12/20 11:00

若い女性が倒れています!--その笑撃の理由とは?

アメリカの三大ネットワーク(NBC、ABC、CBS)では、ウィークデイの深夜帯に必ずトーク番組の放送枠が設けられている。筆者が一番好きだったのは、NBCで1992年から2014年まで放送されていた『ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノ』という番組だ。

 

この番組に、不定期で放送される“ヘッドラインズ”というコーナーがあった。全米各地の地方紙から、司会者のレノが自ら選んだ面白い記事を紹介していく。

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実話ならではの面白さ

このコーナーの笑いどころは、凝りに凝った見出しの文章が記事の内容とかけ離れてしまうことだったり、おバカな事件そのものだったり、あるいはありえない写真が使われた広告だったりと、いろいろだった。新聞なので当たり前だが、どれもリアルな出来事だ。だから面白さが際立つ。

 

21世紀ベストセレクション』(大分合同新聞社・著/大分合同新聞社・刊)は、この“ヘッドラインズ”で感じたのとまったく同じ面白さが詰まった一冊だ。まず、企画の背景に触れておこう。

 

インターネットが広がり、固定電話からポケベル、スマホへと通信の主役が移り変わった21世紀。技術は発展したけれど、人間はそう簡単に進化できません。慌てた、うっかり、勘違い…。「みんなの小ネタ」と集めたものが、大分合同新聞の「ミニ事件簿」です。

21世紀ベストセレクション』より引用

 

2001年から2016年に「ミニ事件簿」のコーナーで紹介されたエピソードは5000本を超えるという。本書では、その中から厳選された50本が収録されている。

 

いくつか紹介していこう。

 

 

まずは鉄板なやつ

先日の昼、大分市内の交番に若い男性が「かつらを拾いました」と女性用の部分かつらを持って訪れた。署員が事情を聴いたところ、乗用車を運転中、ミニバイクで前方を走っていた女性の頭部から外れて飛んできたという。拾って追いかけようとしたが、間に合わなかったらしい。ヘルメットをかぶっていたというが、「突然、髪の毛が飛んできたのでびっくりしました」と男性。「男性も驚いただろうが、かつらがないことに気付いた女性もびっくりしただろうな」と署員。

『21世紀ベストセレクション』より引用

 

これはきっと、おでこが痒かったりしたか何かでヘルメットをずらした瞬間にタイミングよく強い風が信じられないほどいい角度で吹き込み、かつらだけが飛ばされたんじゃないだろうか。いずれにせよ、ヅラネタは鉄板である。

 

 

裏側が際限なく広がる話

先日の未明、別府署に「若い女性が倒れている」と通報があり、署員が別府市中心部の駐車場に向かった。調べたところ、1台の乗用車の後ろに女性がうつぶせになって倒れていた。けがはない様子で、署員が揺り起こして事情を聴いた。酒を飲んだ後、友達数人とかくれんぼを始めたが、“鬼”に見つかる前に疲れて眠り込んでしまったという。携帯電話で友だちに連絡を取ったが、既に帰宅。女性も署員に礼を言うとタクシーで帰った。「酔った勢いとはいえ、常識の範囲内で行動してほしいよ」と、あきれる署員。

『21世紀ベストセレクション』より引用

 

いやいや、あきれるだけじゃイージーすぎる。彼女の裏側をもっと掘り込んでいかないと。寝落ちするほど疲れたというくだりは事実なのか。見つからなかったのではなく、わざと見つけてもらえなかったんじゃないか。タクシーで帰宅するとき、彼女は何とも言えないやるせなさを感じたんじゃないだろうか。そもそも、飲んでかくれんぼという流れにも作為性が感じられる。実に妄想のしがいがある話だ。

 

 

こういうのも好きかも

大分市の男性公務員(45)は先日の夕方、通り掛かりの市内の公園で急に腹が痛くなり、公園内のトイレに駆け込んだ。用を足し、ホッと安心したのもつかの間、トイレットペーパーが無いのに気付いて大慌て。しかしどうすることもできない。腹をくくってトイレを出ることにした。水を流そうと目の前のボタンを押したら、非常ベルが鳴り出した。出入り口の上部に設置された赤色灯が回っているのが、ドアのすき間から分かる。「紙がないのは緊急事態だけど、何もそこまで」。ベル音が止まった途端、逃げるようにトイレから立ち去ったという。

『21世紀ベストセレクション』より引用

 

いよいよ差し迫っている時は、トイレが見つかり、個室が空いていることがわかったところで安心メーターが振り切れてしまう。トイレットペーパーの有無まで確認できる冷静な人はどのくらいいるだろうか。

 

ちなみに筆者は、ある冬の朝、地下鉄銀座線の外苑前駅のトイレで並んでいて、脂汗を流しながら屈伸運動を続けていたすぐ後ろのサラリーマンに順番を譲ったことがある。その人がその瞬間に浮かべた何とも言えない安堵の表情は、今でも忘れられない。

 

すべらない話は、何の準備もしていない時に限って降ってくる。

 

【著書紹介】

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21世紀ベストセレクション

著者:大分合同新聞社
出版社:学研プラス

めまぐるしい毎日に、少し疲れたな…と感じたら「ミニ事件簿」をどうぞ。「1分で心がほぐれる」エピソードをあなたにお届け!この電子書籍では2001~2016年に掲載した“事件”から厳選した面白ネタ50本を収録しています。

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