自社のVRヘッドセットをリリースしていたFacebook(傘下のオキュラス)、マイクロソフト、そしてGoogle。IT企業各社のVR/ARへの参入が本格化するなかで、もう1つのテクノロジー業界の巨人Amazonがどう動くのか注目されていました。
そんなAmazonは2017年11月、VR/AR開発向けアシストツール「Sumerian」を発表。このサービスは同社が提供するクラウドコンピューティングサービスのAmazon Web Service(AWS)の1つとして提供されます。そして、発表から約半年が過ぎた2018年5月15日、AWSはSumerianの一般提供を開始しました。
Sumerianには既存の3Dオブジェクト(建物、家具、3Dキャラクターなど)が用意されているほか、独自の3Dオブジェクトをアップロード可能。それらのオブジェクトを組み合わせることでVR/ARのアプリケーションを作成します。3Dグラフィックスやプログラミングなどの専門知識も不要とのこと。業界に大きなインパクトを与えています。
「Sumerian」の利用の流れ
まず、エディターで新たなシーンを作成します。
次にシーンが現れます。
Sumerianには様々なオブジェクトが用意されています。ここでは部屋オブジェクトを選択。
部屋に椅子や机などのオブジェクトを設置できます。
キャラクターも作成できます。VR内で3Dオブジェクトを見たり触ったり、キャラクターと会話も可能(※音声認識技術のAlexaを活用)。キャラクターの行動を規定してプレゼンをさせるといったこともできます。
SumerianはVRヘッドセットのOculus Rift、HTC Vive、およびiOSデバイスに対応しています。後々ではARCoreを搭載したAndroidデバイスにも対応予定。
Sumerianはビジネスで活用できます。人事部の方や消費者にとって便利かもしれません。
従業員研修
VRで実際の業務環境を再現でき、従業員は体験しながら業務を覚えることが可能。機械の操作方法や修理方法を覚えることもできるでしょう。
商品の利用体験の提供
VRで商品の利用体験を提供できます。ユーザーは商品を家に置くとどのようになるのか、商品を実際にどのように利用できるのかなど、より具体的なイメージを持つことができます。
Sumerianで開発されたアプリではありませんが、すでに小売業者はVRやARを活用し始めています。BOLD METRICS社はVR内で衣類を試着できるようなソリューションを開発。Sumerianで開発されたアプリはこれに近いものとなるでしょう。
Sumerianの利用料金そのものは無料。データを保存するためのストレージ「Sumerian scene storage」の利用に毎月1GB約6セント、シーン再生によって発生した通信量「Sumerian scene traffic」に毎月1GB約38セントの課金がなされます。
現在、Sumerianはプレビュー期間。前述の小売業界をはじめVRを活用したいと考えている企業は企業規模を問わず多いことでしょう。今後そういった企業が数多く利用するようになった場合、莫大な利益をAmazonにもたらすことになるでしょう。SumerianがVR/ARをより広く普及させるのかどうか、注目です。