1月9日〜12日に米ラスベガスで開催されたCES 2018。出展する多くの企業が「AI」というキーワードを掲げていました。AI(Artificial Intelligence=人工知能)は、クルマ、ロボットのみならずスマートデバイスや家電にも欠かせない技術に。しかし、形としては見えにくいものなので、何がどう便利になるのかがわかりにくいですよね。それを、わかりやすい形で展示し、来場者の注目を集めていたのがオムロンです。
進化した卓球コーチロボットは、反射神経抜群
初めてCESに出展したオムロンが、目玉として展示したのが「フォルフェウス(FORPHEUS)」。AIを搭載する卓球コーチロボットで、プレイヤー(人間)のレベルに合わせて、卓球のラリーが続くように、自動でラケットを操作するというもの。
このフォルフェウスは、2013年10月に中国・北京で開催されたイベントで初公開され、その後、日本、インド、ドイツなどで公開。北米では今回が初公開で、性能を向上させた4号機が披露されました。
フォルフェウスはピン球の動きを検知する2つのカメラと、人の動きを検知するカメラを搭載し、対戦相手のレベルや球速、軌道などを予測。そして、ロボットアームに固定されたラケットで打ち返し、ラリーが続くように導くというものです。
ポイントは、人に勝つことを目的とするロボットではないこと。対戦相手のレベルに合わせて反応するため、卓球初心者が相手の場合は、速度が遅い球を、相手が打ち返しやすい位置にレシーブ。実は、卓球がうまい人よりも苦手な人が相手の場合のほうが、予期せぬ方向に返球されるので、難しいアルゴリズムが用いられるそうです。
CESのオムロンブースでは、同社の開発メンバーがプレイヤーとなってデモンストレーションを披露したほか、来場者もフォルフェウスに対戦でき、その反応の速さに歓声が沸いていました。
なお、フォルフェウスは、オムロンが工業用ロボットの技術をアピールするために展示するもので、これ自体の販売は予定していないそうですが、「卓球コーチとして売ってほしい!」といった反響もあったようです。
自動運転時代に向けた安全システムに業界が注目
オムロンは、さらに“眠気の予知システム”を発表し、注目を集めていました。ドライバーの眠気を感知する技術はすでに開発済みですが、今回の発表では、眠気を自覚する数分前に、その予兆を検知できることがポイント。運転中のクルマが微振動を続けており、それによってドライバーの頭が動くと、それとは反対方向に瞳孔が向き、バランスが保持されます。これを「前庭動眼反射」と言いますが、この反射がなくなる現象を見つける技術が開発されました。
今回のCESでは、自動車メーカーを中心に自動運転に関する展示も目立ちましたが、オムロンが開発したこの技術には、自動車メーカーや車載メーカーからのひっきりなしの問い合わせがあり、対応に追われたとのこと。眠気の予兆を感知した場合の対策として、冷気をあてる、シートを動かすなど、複数の方法が考えられるようですが、自動運転時代に向けて、大いに役立つ機能になりそうです。
オムロンの展示を見て感じたのは、どちらの技術も「AI」と呼べるが、そのベースとして「ディープ・ラーニング(充分なデータ量に基づく機械学習)」があるということ。最近、あちこちで「AI」という言葉を耳にしますが、“AIは一日にして成らず”ですね。
LGエレクトロニクスは新しいAIプラットフォームを導入
総合家電メーカー・LGエレクトロニクスも「AI」で注目を集めていました。同社は、CES 2018の開幕に合わせて「ThinQ(シンキュー)」という新しいAIプラットフォームを発表しました。
LGエレクトロニクスは従来から独自のディープ・ラーニング技術を取り入れたスマート家電を手がけていますが、今回発表した「ThinQ」は、それをより発展させて、テレビを含め、あらゆる製品を音声操作に対応させていこうというもの。ThinQに対応する製品は、現段階ではLG製品だけですが、プラットフォームをオープンにすることで、他社製品と連携させていく計画があることも発表されました。
ThinQだけでは世界的な広がりを見込みにくいためか、GoogleアシスタントやAmazon Alexaと連携することもアピールされました。LGブースで展示されていた製品には、Googleアシスタントを搭載する製品も多く、日本のユーザーにとっては、そちらのほうが、わかりやすく導入できそうです。
高額にもかかわらずヒットしたホームクリーニング機「LG Styler」など、日本でも注目度が高まっているLG製品。ThinQによる、さらなる使い勝手の向上に注目しましょう。
AI同士の連携も含めて、生活にさらなる広がりを予見させられたCES 2018。AIは日本国内でも、昨年に引き続き必ず注目されるキーワードになると思われます。これだけの発展を見せているAIは、もう生活に欠かせない存在になるのかもしれませんね。