【きだてたく文房具レビュー】上から重ねてマーキングしても書いた文字がにじまないマーカー
今年の春ごろ、中学生の集まる場所で「勉強効率アップ文房具」を紹介させてもらう機会があった。そこでかなり反応があったのが、蛍光ペンで上から線を引いてもにじみにくいゲルボールペン「サラサ マークオン」(ゼブラ)。
最近は勉強垢(自分の勉強ノートや文房具類の写真をインスタなどにアップするアカウント)が流行っていることもあるのか、これ欲しい! というリアクションが多かったのだ。
とはいえ、「メインの筆記具はお気に入りのペンがあるから、それ以外のはちょっと……」という声もあったのは事実で、もちろんそれはよく分かる。たしかに、メイン使いのペンはそう簡単に変えたくないものだし、できれば“にじまない効果”は蛍光ペンの方でなんとか受け持ってくれないか、という話ではある。
「うーん、そのうちそういう蛍光ペンも出るかもしれないね」とその場は締めたのだが、なんとそれから半年と経たないうちに「にじみにくい蛍光ペン」が出てしまった。
しかも、これまたゼブラからである。最初からこれ出しといてよー。
ゼブラ「ジャストフィット モジニライン」は、まさに文字の上から引いてもにじみにくい、という機能を搭載した蛍光ペンだ。
ボールペンで書いた文字に蛍光ペンを引いてにじむ、というのは、基本的に水性またはゲルの染料インクボールペンでおきやすい現象だ(油性インクもしくは顔料水性インクは耐水性があるため、この限りではない)。インクの成分が水性染料なので、書いた上からさらにたっぷり蛍光インクで水分を与えてしまえば、染料が溶け出してにじんでしまうのは当たり前ともいえる。
ところがモジニラインは、にじみにくい(インクの量や感想の具合などによっては、にじみゼロとはさすがに言えない)。
これがどういう仕組みでにじみにくいかというと、説明はややケミカルな話となる。まず、ボールペンのインクはマイナスの電荷を帯びている。そこでモジニラインにはプラスの電荷を帯びた成分を配合し、水性インクとイオン結合させることで紙の上に固着。それによってにじまない、ということだそうだ。
ちなみにこの仕組みは、浄水場などで水の中に溶け込んだ汚れを固めて取り除くシステムと同じだという。
仕組みを聞いてもよく分からん、という人も、まぁ使ってみれば効果は体感できるだろう。実際にいくつかの水性/ゲルインクのボールペンで試してみたが、たしかにこれは従来の蛍光ペンと比較するとかなり差が出る。はっきりとにじみにくいのだ。
※ただし、筆記跡が乾いてからでないと、何をどうやってもにじむので、そこだけ注意。
とくに「水性で乾燥が速い」を謳っているペン(「サラサドライ」や「エナージェル」など)や万年筆は、耐水性がなくにじみやすいという弱点を持っているのだが、その辺りにもきちんと効力が発揮されている。
ひとつうれしいのは、ゼブラがこのにじまない機能を、ペン先チップが柔らかい蛍光ペン「ジャストフィット」に搭載して発売したこと。
辞書や厚い資料などを開いた曲面にもフィットして線を引きやすいことから、すでにジャストフィットの愛用者はかなり多い。そういったファンを迷わせることなく、「こっちに切り替えてもなんの損もないよ」と示してくれたわけで、これはかなりありがたいことだ。
というか、そもそもこのにじまない機能だけでもかなり優先度の高い能力なので、他社の蛍光ペンユーザーも、一度ぐらいは試してみてもいいんじゃないだろうか。
【著者プロフィール】
きだてたく
最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。近著にブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。