おもしろ鉄道の世界~~撮影に必要なカラーLED表示器の基礎知識~~
通勤形電車に欠かせない行先の表示器。私たちはどこ行きの電車か、急行か普通か、表示器を見ることで瞬時に大切な情報を読み取っている。
この行先の表示器。幕(方向幕)を利用していた表示が少しずつLEDを用いた文字となり、その文字も、オレンジ色や黄緑からさまざまなカラーに変っていることをご存知だろうか。実は筆者もあまりよく知らない世界だった。
そこで今回は、鉄道用カラー表示器の大手・コイト電工株式会社(神奈川県横浜市)を訪ね、鉄道の表示器のあれこれをうかがった。同社の協力を元に表示器、特に「カラーLED表示器」の今を追ってみよう。
*掲載写真はすべて星川功一(Twinkle)の撮影
【表示器の設置場所】正面そして側面、車内と表示器のいろいろ
上記の写真2枚が現在、使われる鉄道の代表的なカラーLED表示器だ。こうした表示器は製造しているメーカーや鉄道会社で共通する呼び方がない。そこで本原稿ではコイト電工の呼び方を元に紹介したい。
まずは電車の正面から。通勤電車には、人の顔で言えばおでこの部分に表示器がついているが、こちらを「正面表示器」と呼んでいる。車両、会社によって表示の方法がさまざまだが、例にあげた相模鉄道の新車20000系では、行先、急行・普通などの列車の種別、列車番号を、「カラーLED表示器」で掲示している。
車体側面にも表示器があり、こちらは「側面表示器」と呼ばれる。列車の種別案内、行先を1枚の「カラーLED表示器」で案内している。
ほかに車内にも表示器が設置されるケースが多くなってきた。ドア上にある表示器があり「車内表示器」と呼ぶ。こちらは「LCD」を利用している車両が多い。LCD(液晶ディスプレイ)とは、身近でいえばパソコン用の液晶ディスプレイとほぼ同じで、路線案内や、駅案内などをディスプレイに表示、役立つ情報を乗客に提供している。
【表示器の歴史】表示器はいつ方向幕からLED表示器へ変ったのか
表示器の移り変わりを見てみよう。
長い間、行先を示す正面表示器には、「方向幕」が使われてきた。幕に駅名がプリントされ、その幕をぐるぐる回して、該当する駅名を掲示する仕組みだ。
この方向幕による表示器がLED化され始めたのはいつごろなのからだろう。
●3色LED表示器(1988年〜2004年ごろ)
コイト電工によるとLED化の始まりは1988年だとされる。3色のLED表示器が開発され、鉄道各社で導入され始めた。歴史は意外に古かったわけだ。
3色とは赤、緑、橙(だいだい)で、この3色しか表示できない。橙にしても赤と緑を同時に点灯することにより、この色が造り出されている。
●カラーLED表示器(2004年〜)
3色LED表示器を発展させたのがカラーLED表示器。このカラーLED表示器は2004年に登場した。通勤用の鉄道車両に最初に取り付けられたのが東急東横線用の5050系とされ、コイト電工の製品だった。
RGB(R=レッド、G=グリーン、B=ブルー)三原色のLED素子を利用。当初は非常に高価だったが、近年は価格を抑える動きが強まり、カラーLEDへの置き換えが進んでいる。
こうしたLED表示器が普及した理由としては、まず長持ちすること(大体、8年ぐらいはもつとされている)、表示を変更する時にも字幕を交換することなくデータの書き換えが可能なメンテナンス性、扱いやすさ、価格も徐々に下っていったというのが浸透する要因となったのだろう。
鉄道会社のなかには、方向幕を使っていた旧型車両を、定期検査の際にLED表示器に変更する例が多くなり、さらに浸透度が加速していった。
【表示器の文字】細い明朝体からしっかり見えるゴシック体へ
表示器に使われる書体も時代とともに変っていった。
LED表示器が登場当時には、細目の明朝体の文字が使われることが多かった。現在は、太めのゴシック体が使われることが多い。
このあたり、やはり見やすさを重視していった結果なのだろう。確かに明朝体は細目で文字が見づらい。太めで存在感のあるゴシック書体が一般化していったのも理解できるところだ。
なお、書体に関しては、鉄道会社それぞれの好みがあり、コイト電工では鉄道会社の希望に沿った文字のデザインを提供している。その結果、最近は見やすいゴシック体が好まれる傾向が顕著になっているとのことだった。