飛行時間が20時間近くになる、世界最長のフライトが実現するかもしれません――。
アメリカのニューヨークとオーストラリアのシドニーをノンストップで結ぶ試験飛行を、オーストラリアのカンタス航空が実施しました。「プロジェクト・サンライズ」と名づけられたこの試みは、飛行距離1万6000キロ超え、飛行時間は世界最長の19時間16分というもの。閉鎖空間に20時間近くもいるなんて、相当の苦痛と忍耐が伴いそうなものです。そこで、カンタス航空が今回の試験飛行で取り入れた、長時間フライトを乗り切るためのアイデアをご紹介します。
ニューヨークーシドニー間の1万6000キロを補給なしでノンストップで飛行するためには、たくさんの燃料を入れることができて、しかも燃費効率のよい機体であることが求められます。大量の燃料タンクを備えた飛行機となると必然と大型機になり、それなりの乗客数を確保しなければ採算面で成り立たなくなります。航空機メーカーでも軽量素材を使用したり、効率のいいエンジンを開発したり、さらなる研究が進められており、今回のカンタス航空の長距離試験飛行ではボーイング787-9型機が使用されました。さらに重量を最小限に抑えるため、乗客はカンタス航空の社員や関係者のみのわずか49人に限って実施されました。
20時間近くにも及ぶ長距離飛行では、乗客の命を預かるパイロットの体力面や精神面への不安もあるもの。カンタス航空では今回の試験飛行のために4人のパイロットを準備。4人での交代制で運航を行い、さらに客室にも2人のパイロットを控えさせ、万全の体制で臨んだそうです。
長距離フライトでは、出発地と到着地での時差が大きくなり、それにより時差ボケを引き起こすことが考えられます。そこで今回の試験飛行ではオーストラリアの大学2校の協力のもと、長距離フライトによる健康への影響を研究も行われました。
今回の試験飛行のフライトスケジュールは、ニューヨークを午後9時に出発し、シドニーに現地時間の午前7時過ぎに到着するというもの。従来、夜に出発するフライトでは、離陸後すぐに夕食が出されその後に消灯となり睡眠を促されますが、今回のフライトでは まずはランチとして機内食が提供され、その後6時間は照明が明るいままにされたそう。これらは時差ボケ予防のために調整されていました。
また、出発地のニューヨーク時間では夜中になっても、シドニー時間で夜になるまで乗客たちを寝かせないように、カフェインや香辛料入りのスパイシーなメニューが機内食として提供されたそう。さらにエコノミー症候群予防もあわせて、機内でストレッチや屈伸運動のような軽い運動も行われたそうです。
カンタス航空が行っているこの試験飛行は「プロジェクト・サンライズ」と呼ばれています。今後はシドニーーロンドン間、別のニューヨークーシドニー間のフライトを予定しており、それらの結果を踏まえて今後の定期路線就航について検討していくとのこと。このプロジェクトでは、パイロットの脳波や乗務員のメロトニンレベルの測定のほか、機内食や飲み物の消費量、乗客の動きなどをモニターしていくそうです。
20時間近くのロングフライトは、体力的にも精神的にも負担が大きいと思われますが、慣れない外国で乗り継ぎすることに比べれば、「はるかにいい」と考える方もいるかもしれませんね。