現代人は、本を読まなくなってきている。
今年2月に発表された全国大学生活協同組合連合会の「第54回学生生活実態調査」によると、1日の読書時間がゼロという大学生は48.0%。なんと、約半数がまったく本を読まないという結果が出た。
ちなみに、2004年は38.7%だったのが年を追うごとに増加し、昨年ついに53.1%と過半数を超えてしまった。今年はわずかにポイントが下がったものの、依然として大学生の読書習慣がないという現状は続いている。
学生ですらこの結果なので、ましてや社会人となったら、読書時間ゼロのパーセンテージはさらに上がるだろう。
「いやいや、本は確かに読んでないけど、ネットでニュースとかいろんな記事を読んでいるから大した問題じゃないでしょ。デジタル全盛のご時世、本って形にこだわる必要なくない?」と思う人もいるかもしれない。
けれども、「ネットで文章を読むことと、本を読むことは違う」と断言している人がいる。ベストセラー著者であり、文化人として多くのメディアで活躍する齋藤 孝氏である。
「消費者」として読むネットの文章、「読者」としてじっくり向き合う読書
著書『読書する人だけがたどり着ける場所』(SB Creative・刊)のなかで、齋藤氏はこう述べている。ネットで読むことと読書の大きな違い、それは「向かい方」であると。
ネットで文章を読むとき、私たちは「読者」ではありません。「消費者」なのです。こちらが主導権を握っていて、より面白いものを選ぶ。「これはない」「つまらない」とどんどん切り捨て、「こっちは面白かった」と消費していく感じです。
(『読書する人だけがたどり着ける場所』より引用)
ネットの場合は、より面白そうなソースを求めて短時間で次のページに進んでいきがちだ。そのコンテンツに、じっくりと時間をかけて向き合うことは少ない。
私は企業サイトのwebコンテンツをよく執筆しているが、毎回クライアントに言われるのがまさにこれ。「ユーザーは、少しでもつまらないと感じると、すぐに離脱していく。詳細まで読まず、見出しだけ拾い読みしていく人も多い。だからこそ、『タイトルで興味をひき、見出しだけで記事の内容がわかるようにし、端的に伝えたいことを書いてほしい』です」と。
一方読書は、「じっくりと腰を据えて話を聞くような構えになります」と齋藤氏。本を読んでいる時間は、自分と著者の二人きり。ちょっと難しい箇所や共感できないような場面もぐっとこらえて読み進めれば、最後には「体験」として、自分の中にしっかりと刻み込まれる。
往々にして、私たちは読書中、その本の登場人物に感情移入している。本の世界に入り込み、じっくり味わう「味読」だ。その結果、これまで想像もしなかったような感情に気づいたり、新たな体験ができるのである。
齋藤氏が指南する”深める”「本の読み方」
ここからは、『読書する人だけがたどり着ける場所』から、齋藤氏による”深める”「本の読み方」をいくつかピックアップして紹介していこう。
・本を読んだら、誰かに感想を話す
思考を深める読書法、それはその本の内容や感想について、誰かと対話すること。相手に話すことで思考が動き出し、また相手から質問されたり、違った見解や感想を話し合うことで、その思考はさらに深まる。語り合う相手がいなければ、レビューを読むだけでもOK。同じ感想、違った見方、反論したくなる意見などを見つけていくなかで、あなたの思考はさらに深まる。
・好きな文章を3つ選ぶ
自分にとって、その本にはどんな価値があったか、何が魅力なのかを考えるためには、本の中から「好きな文章を3つ選ぶ」のがおすすめだと齋藤氏。読む前に、「この本の中から、好きな文章を3つ選ぶぞ!」と決めて読み進めれば、「ただなんとなくの読書」から「思考を深める読書」ができるようになる。
・1テーマ5冊読めばランクAに!
あるテーマについて知りたい場合、一人の研究者、学者の著書を続けて5冊読むこと。難しくてよく理解できなければ、ざっと読むだけでも十分。それを5冊続ければ、「まったく知らない」状態から「結構詳しい」人にまでランクアップできる。こうして知識は深めていける。
・出合い頭で知識を広げる
ベストセラーを積極的に手にとったり、これまでにたくさんの人が読んできた古典に挑戦する以外に齋藤氏が薦めているのが、本屋をブラブラして、たまたま出合った本を買って読むという方法。好きなジャンルの棚ではなく、あえていつもは行かないコーナーに足を運ぶと、新しい発見に出合うことができ、より一層知識が深まる。
・自分だけの名言を見つける
言葉にはパワーがあるので、本を読んでぐっときた箇所があったら、その言葉を自分だけの名言として胸にしまっておく。そうすると、これから起こる人生のさまざまな局面で、助けになってくれると齋藤氏。「マイ名言」を見つけるつもりで本を読むのも◎。この繰り返しが、人格を深めていく。
・「どっぷり読書」と「批判的読書」のススメ
1冊の本を読んでいると、次第に登場人物に自分を重ねたり、著者の思想が自分の中にぐっと入り込んでくる。これは、世界を広げていけるメリットがある反面、自己がなくなってしまうくらい影響を受けてしまう危険性もある。そのため、その本や著者の世界にどっぷり浸ることも大切だが、時には「批判的に読む」ことも必要だと齋藤氏は語る。そういった意味でも、一人の作家、ひとつのジャンルだけを読むのではなく、違うタイプの作家の作品や他ジャンルの本にも手を出すことは大切。
本の中では、何者にだってなれる!
人生は一度きりだ。けれども、「本を通じて他人の人生を追体験することはできる」と齋藤氏。
事実、私はこれまで本という世界の中で、歴史上の偉人と話をしたし、宇宙に行ったし、道ならぬ恋をいくつもしたし、アイドルと付き合ったり、自分が死んだ後の世界を覗いたり、犯罪に手を染めたり、40歳にして中学時代の淡い恋心を満喫することだってできた。
読書によって、「私という人生だけでは味わえないような、さまざまな体験」が得られるのだ。こんなに楽しいことって、ほかにあるだろうか!
ちなみに、冒頭で紹介した「第54回学生生活実態調査」では、小学校入学前と高校時代に長時間読書をしている層は、大学生になっても読書習慣が身についているという考察がなされていることをお伝えしておく。小さなお子さんをお持ちのパパママ層は、ぜひ積極的に読み聞かせをすると、後々活きてくるかもしれない。
【書籍紹介】
読書する人だけがたどり着ける場所
著者:齋藤 孝
発行:SBクリエイティブ
「本」を読むからこそ、思考も人間力も深まるー「ネットで情報をとるから本はいらない」という風潮が広がっていますが、それは本当でしょうか?私たちは日々ネットの情報に触れますが、キーワードだけを拾い、まったく深くなっていない、ということも多いのではないでしょうか?読書だからこそ、「著者の思考力」「幅広い知識」「人生の機微を感じとる力」が身につきます。ネットの時代にあらためて問いたい「読書の効能」と「本の読み方」を紹介します。
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