最近よく耳にする「MaaS(マース)」は、“Mobility as a Service(サービスとしての交通)”の頭文字を略したもの。利用する人とあらゆる移動手段をより便利に、そして効率的につなげるために、日本でも実証実験が始まっています。
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MaaSプラットフォームを提供しているダイムラーの子会社「moovel」が描く、近い将来の都市交通のイメージイラスト。
ワンクリックですべての旅程の手配が完了になる
「MaaS」は、人の移動を最適化するために考えられたモビリティのための交通サービスで、2016年、フィンランドのヘルシンキで起業した「Whim(ウィム)」によって世界で初めて実現されました。ポイントは、電車、バス、タクシー、レンタサイクルなど、あらゆる交通手段が必要に応じてひとまとめにパッケージ化され、定額で提供されることにあります。これまではルート検索で提案された内容に従い、個別に手配するしかなかったのですが、それがMaaSでは同一アプリ内の操作だけですべての手配が完了します。すでに海外では様々な交通手段が利用可能となっており、いまや交通に関わる分野のサービスを巻き込んでMaaSの実現へと向かっているのが、世界の潮流と言えます。
日本でも実現へ踏み出した都市もあり、自動車メーカーもライドシェアへの出資を積極的に行うなど、サービスのプラットフォームの実証実験を行い始めています。
◎MaaSで利用者と交通サービスがシームレスにつながる!
◎MaaSなら検索→予約→決済までが一元化!
いま体験できるMaaSアプリはコレだ
交通インフラが充実している日本では、各交通機関同士の相互利用はハードルが高い。しかし、自社内など限られた範囲でMaaSを体験できるアプリが鉄道やバス会社から登場し、実証実験が行われています。
【その1】2019年4月から実証実験を開始した「観光型MaaS」の先駆け
東急×JR東日本
「Izuko」
伊豆を舞台に、鉄道、バスからオンデマンド乗合交通、レンタサイクルなどをスマートフォンで検索と予約、決済ができます。12月からは交通機関や観光施設で利用可能なデジタルフリーパスなどの内容を拡充した、フェーズ2を開始予定。
【その2】移動に関する一連の機能をアプリひとつで提供
西鉄×トヨタ
「My Route」
「店舗・イベント情報の提供」から実際の「移動手段の検索・予約・決済」まで、マルチモーダルな機能をアプリひとつで提供。タクシーの予約や決済のほか、西鉄バスのデジタルフリー乗車券の購入も可能です。12月末まで実証実験を実施。
【その3】周辺のアクティビティの決済までできる本格的なMaaSサービス
WILLER
「WILLERSアプリ」
地方の観光地では、訪問者の“足”をめぐる課題も多く、これを解決するためのサービスとして登場。出発地と目的地を含む経由地は、最大5か所を設定可能。レストランバスやカヌーといったアクティビティも探せて、一括決済できます。
MaaSでつながる今後注目のモビリティ4選
利用機会が増えているカーシェアリングやシェアサイクルをはじめ、パーソナルモビリティとして電動車いすも利用可能です。
【その1】〈 カーシェアリング 〉
広がるカーシェアリングは予約もアプリから手軽に
スマホなどからサッと予約でき、分単位で利用できるカーシェアリング。自動車メーカーも本格的に参入を開始しています。カーシェアリング各社のシステムがMaaSのデータ基盤とつながることで、アプリで手軽に利用できます。
【その2】〈 シェアサイクル 〉
都市部を中心に広がり手軽にチョイ乗りが可能
近年増えているシェアサイクル。MaaSアプリ内のルート検索でも利用交通手段として選択できる場合が増えています。登録料や年会費無料が多く、低額で利用できるのが特徴。返却はほかのステーションでもOKと、チョイ乗りに向きます。
【その3】〈 オンデマンドバス 〉
過疎地で期待される新たな交通! 将来は自動運転化も視野に
配車プラットフォームを活用したオンデマンドバス。利用者がアプリで乗降場所や日時を選択して予約すると、バスが指定の場所に到着します。特に過疎地域でのサービスを期待する声が大きく、将来は自動運転も視野に入れています。
【その4】〈 パーソナルモビリティ 〉
超高齢化社会に向けて注目を集めるモビリティ
超高齢化時代を迎える日本において、電動車いすの需要は確実に増加することが見込まれています。歩行に代わる新たなモビリティとしての可能性を探り、公共機関やテーマパークとの連携を含む実証実験が行われています。