乗り物
2019/12/20 21:00

【2020年トレンド新潮流】MaaSがもたらす「交通サービス」の大変革。シームレスになれば、移動はもっとラクになる

最近よく耳にする「MaaS(マース)」は、“Mobility as a Service(サービスとしての交通)”の頭文字を略したもの。利用する人とあらゆる移動手段をより便利に、そして効率的につなげるために、日本でも実証実験が始まっています。

 

【関連記事】
自動運転技術の現在・未来。「MaaS」で人々がより便利になるために必要なテクノロジー

 

MaaSプラットフォームを提供しているダイムラーの子会社「moovel」が描く、近い将来の都市交通のイメージイラスト。

 

ワンクリックですべての旅程の手配が完了になる

「MaaS」は、人の移動を最適化するために考えられたモビリティのための交通サービスで、2016年、フィンランドのヘルシンキで起業した「Whim(ウィム)」によって世界で初めて実現されました。ポイントは、電車、バス、タクシー、レンタサイクルなど、あらゆる交通手段が必要に応じてひとまとめにパッケージ化され、定額で提供されることにあります。これまではルート検索で提案された内容に従い、個別に手配するしかなかったのですが、それがMaaSでは同一アプリ内の操作だけですべての手配が完了します。すでに海外では様々な交通手段が利用可能となっており、いまや交通に関わる分野のサービスを巻き込んでMaaSの実現へと向かっているのが、世界の潮流と言えます。

 

日本でも実現へ踏み出した都市もあり、自動車メーカーもライドシェアへの出資を積極的に行うなど、サービスのプラットフォームの実証実験を行い始めています。

 

↑スペイン・マドリードでは目的地までの経路を探索すると、電動キックボードやライドシェアの利用(赤枠内)まで提案されます

 

◎MaaSで利用者と交通サービスがシームレスにつながる!

↑MaaS実現に向け、重要なのがプラットフォーム。各種交通情報や地図情報などを交通サービス提供者が利用しやすくすることで、利用者に合った移動手段を提案できます

 

◎MaaSなら検索→予約→決済までが一元化!

↑MaaSアプリを活用すれば、検索から予約、決済までが一括で完了します。移動手段ごとにいちいち予約するといった必要もなくなります

 

いま体験できるMaaSアプリはコレだ

交通インフラが充実している日本では、各交通機関同士の相互利用はハードルが高い。しかし、自社内など限られた範囲でMaaSを体験できるアプリが鉄道やバス会社から登場し、実証実験が行われています。

 

【その1】2019年4月から実証実験を開始した「観光型MaaS」の先駆け

東急×JR東日本

「Izuko」

伊豆を舞台に、鉄道、バスからオンデマンド乗合交通、レンタサイクルなどをスマートフォンで検索と予約、決済ができます。12月からは交通機関や観光施設で利用可能なデジタルフリーパスなどの内容を拡充した、フェーズ2を開始予定。

 

↑12月からの実証実験では、エリア内の交通機関が乗り放題になるデジタルフリーパスは6種類に増加

 

↑ジャンボタクシーを使用し、所定の乗降場所の間を自由に乗降できる、新たな交通も試行しています

 

【その2】移動に関する一連の機能をアプリひとつで提供

西鉄×トヨタ

「My Route」

「店舗・イベント情報の提供」から実際の「移動手段の検索・予約・決済」まで、マルチモーダルな機能をアプリひとつで提供。タクシーの予約や決済のほか、西鉄バスのデジタルフリー乗車券の購入も可能です。12月末まで実証実験を実施。

 

↑目的地までのルート検索画面。利用する交通機関はシェアサイクルやタクシーも選ぶことができます

 

↑シェアサイクルが提案された場合、空車確認をできます。マイカー利用時は駐車場の空き情報も確認可能

 

【その3】周辺のアクティビティの決済までできる本格的なMaaSサービス

WILLER

「WILLERSアプリ」

地方の観光地では、訪問者の“足”をめぐる課題も多く、これを解決するためのサービスとして登場。出発地と目的地を含む経由地は、最大5か所を設定可能。レストランバスやカヌーといったアクティビティも探せて、一括決済できます。

 

↑検索の結果を踏まえ、ルート周辺で選択可能なアクティビティ(時期により内容は変わる)や、観光スポットも行程に追加できます。現在は「ひがし北海道」と「京都丹後鉄道沿線エリア」で利用可能です

 

↑釧路駅から摩周湖までを検索。タクシーやレンタサイクルも含めたルートを提案します

 

MaaSでつながる今後注目のモビリティ4選

利用機会が増えているカーシェアリングやシェアサイクルをはじめ、パーソナルモビリティとして電動車いすも利用可能です。

 

【その1】〈 カーシェアリング 〉

広がるカーシェアリングは予約もアプリから手軽に

スマホなどからサッと予約でき、分単位で利用できるカーシェアリング。自動車メーカーも本格的に参入を開始しています。カーシェアリング各社のシステムがMaaSのデータ基盤とつながることで、アプリで手軽に利用できます。

 

↑最大手は「タイムズカーシェア」。全国各地に約1万2000か所のステーションを持ちます

 

↑ベーシックタイプなら220円/15分から利用可能。目的に応じて選べる車種も豊富です

 

【その2】〈 シェアサイクル 〉

都市部を中心に広がり手軽にチョイ乗りが可能

近年増えているシェアサイクル。MaaSアプリ内のルート検索でも利用交通手段として選択できる場合が増えています。登録料や年会費無料が多く、低額で利用できるのが特徴。返却はほかのステーションでもOKと、チョイ乗りに向きます。

 

↑「HELLO CYCLING」は首都圏を中心に、大阪府などで利用できるシェアサイクルサービス

 

↑登録料や年会費はかかりません。15分単位で借りることができ、返却はほかのステーションでもOK

 

【その3】〈 オンデマンドバス 〉

過疎地で期待される新たな交通! 将来は自動運転化も視野に

配車プラットフォームを活用したオンデマンドバス。利用者がアプリで乗降場所や日時を選択して予約すると、バスが指定の場所に到着します。特に過疎地域でのサービスを期待する声が大きく、将来は自動運転も視野に入れています。

 

↑写真は北海道安平町で運行されている「安平町デマンドバス」。オンデマンドで運行します

 

【その4】〈 パーソナルモビリティ 〉

超高齢化社会に向けて注目を集めるモビリティ

超高齢化時代を迎える日本において、電動車いすの需要は確実に増加することが見込まれています。歩行に代わる新たなモビリティとしての可能性を探り、公共機関やテーマパークとの連携を含む実証実験が行われています。

↑電動車いすを手掛ける「WHILL」では、目的地までを車いすでつなぐ取り組みを実施します

 

↑電動車いす「WHILL Model C」。縦と横両方にタイヤが回転するオムニホイールを採用します

 

  1. 1
  2. 2
全文表示