〜〜全国の私鉄・三セク路線を走る譲渡車両その1 気動車〜〜
5月中旬、千葉県を走る小湊鐵道にJR東日本のキハ40系気動車が譲渡された。あっという間に情報が広まり、沿線に多くの人が集まった。コロナ禍のさなか、ファンが集中したということもあり話題となった。
こうしたJRや大手私鉄の車両が、地方の鉄道会社に譲渡されるケースは意外に多い。今回は、どのような車両が他の鉄道会社に譲渡され、今も活躍しているのかを追ってみた。まずは元JRの気動車の“働きぶり”から見ていこう。
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【注目の譲渡車両①】行く先々で人気となる元JRの気動車
車両の寿命は25年から40年ぐらい。使われ方により、だいぶ差があるものの、一定の年数を経ると、引退となり、多くの車両が廃車という道をたどる。JRグループや、大手私鉄の車両は、比較的、早めに引退することが多い。ここ数年は、新車の導入が増え、それに合わせて、古い車両は徐々に引退となる。
ところが、引退車両を廃車するためには費用がかかる。一方、譲渡となれば、金額の差こそあれ、譲渡費用を受け取ることができる。車両を譲渡される側も新車を導入するのに比べれば、割安に車両が導入できるわけだ。
さらに現役当時に人気があった車両を譲ってもらい走らせれば、利用客増加にもつながる。今回の只見線のキハ40系のように、注目を浴びた車両ならば、導入した小湊鐵道としてもPRになる。譲渡車両は、譲る側も、譲られる側もメリットが大きいわけだ。
譲渡車両は、これまで東南アジアへ輸出されるケースも多かったが、東南アジア諸国も新線を計画する国々が増えている。そのため譲渡車両よりも、新造車両を導入するケースが目立つようになってきた。譲渡車両の流れは海外よりも、国内へ向かう傾向が強まってきたように見える。
【注目の譲渡車両②】希少車両を利用客増加に役立てたいすみ鉄道
◆キハ28形・キハ52形(JR西日本→いすみ鉄道)
譲渡車両を最も有効に生かした例といえば、千葉県を走るいすみ鉄道であろう。前任の社長がレトロな車両の運行にこだわったこともあり、ちょうど、引退しようとしていた国鉄形気動車を譲り受け観光列車に仕立てた。
車両はキハ28形と、キハ52形の2両である。いずれも、国内で稼働できる車両は、いすみ鉄道の車両のみで、非常に貴重な車両となっている。キハ28形はキハ58系の一形式で、1960年代に大量に製造され、幹線およびローカル線の急行列車に使われ活躍した。昭和の鉄道を知る世代にとって、非常に懐かしい車両だ。
一方のキハ52形は、普通列車用に造られたキハ20形を勾配路線用にエンジンを強化したタイプで、いすみ鉄道へやって来る前には、大糸線のJR西日本区間、糸魚川駅〜南小谷駅(みなみおたりえき)間を走った車両だった。
こうした歴史を持つ車両にこだわって譲り受けたわけで、その効果は大きかった。
いすみ鉄道では2両を「急行列車」として運用。車内で食事が楽しめるレストラン列車としても運行している。ヘッドマークには土曜日は「夷隅(いすみ)」、日曜日は「そと房」、祝日はヘッドマークなし、と何とも心憎い演出をしていて、鉄道ファンを喜ばせている。