本・書籍
自己啓発
2020/12/16 6:30

「バカ」な考えや振る舞いから抜け出す方法−−『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』

信じられない。スーパーコンピューター富岳の飛沫拡散シミュレーションをはじめとする科学的エビデンスが次々と提出され続けている今も、マスク不要論を主張する人たちがいる。アメリカでは“憲法で保証された権利”まで持ち出し、マスクをしないことの正当性を攻撃的なやり方でアピールするグループもいまだに存在する。本当に信じられない。

 

過ぎたるは……

一方、OCD(強迫性障害)めいた一面がある筆者の行動様式は正反対。外に出たらマスクは可能な限り着けたままでいることはもちろん、10分に1回くらい除菌スプレーで手指を消毒する。マスク着用も、手指をまめに消毒する行いも間違ってはいないはずだ。ただ、やりすぎと感じる人がいることはわかっている。周囲に対しても自分とまったく同じようにふるまうことを期待すれば、問題が起きることもわかっている。だから筆者は、自分が設定した基準は自分だけにとどめることを絶対のルールにしている。

 

マスク不要論者と筆者、それぞれの行動の属性は正反対だが、根源はよく似た種類の極端さなのではないか。こうしたものが生まれる第一の原因は、人それぞれの独自のバイアスだろう。それに加わるのが、ある意味微視的な思考回路だ。思い込みや妄信という言葉で置き換えることもできるかもしれない。

 

あなたの周りのバカな人たち

すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』(安達裕哉・著/日本実業出版社・刊)は、誰の中にもあり、程度の差こそあれ誰でも陥りがちなバイアスとの向き合い方について記された本だ。「はじめに」の文章から紹介する。

 

仕事をしていると、少なからず「こいつ、バカだなぁ」と感じることがあるでしょう。

・人の話を聞かない上司

・仕事をしない同僚

・アドバイスを聞かない後輩

・無茶な要求を出す取引先

こうした状況は、職場を憂鬱にし、仕事を退屈な苦行に変えてしまいます。

『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』より引用

 

バカな人たちの生息域は職場に限らない。日々の生活のありとあらゆるシーンに現れる。

 

与えられた情報に対する姿勢

バカとはどういうことなのか。本書でも触れられているが、養老孟司氏の『バカの壁』では〈「バカ」というのは「与えられた情報に対する姿勢」の問題である〉と定義されている。そして安達氏は、自分が知りたくないことに対して自主的に情報を遮断してしまう姿勢が「バカの壁」なのだと語る。これに気づいた後、安達氏は言葉を交わす相手の真意を必ず確かめるようになった。

 

「聞くこと」「話を吟味すること」が「バカ」から抜け出す最もよい方法だと思ったからです。すると、あらゆる人は「自分の見えている世界の中では合理的な選択をしている」ことがわかってきました。「バカ」は人の属性ではなく、考え方の属性なのです。

『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』より引用

 

存在しているのはバカな人たちではなく、特定の状況下でズレが感じられるバカな考え方や振る舞いなのだ。原因がわかっているなら、相手がどんな人でもある程度までは理解できるようになる。知的であるためには、まず向き合うべきものをしっかりと把握する、つまりまず相手を「受けとめる」ことが必要だ。

 

知的な関係性を築くために

章立てを見てみよう。

 

第1章 すぐに決めつける、耳をふさぐ「バカな振る舞い」
第2章 「なぜ、バカな振る舞いをしてしまうのか」を行動経済学・心理学から見る
第3章 どうすれば、「バカな振る舞い」をやめることができるのか?

 

三段論法的なわかりやすい流れで話が進んでいく。実例を通してバカな振る舞いをカタログ化し、原因を内側から考察し、それを避けるための具体的な方法を示していく。筆者は自分のことを決して切れ者とは思わない。でも、それと同時に一定水準のインテリジェンスを有している人間であると信じたい。まずは、バカな考えや振る舞いが頭をもたげる瞬間は誰にでも訪れるという事実を認めることが、知的な自分というものへ近づく最初の一歩となるようだ。

 

時々見える自分の姿

バカな考えや振る舞いに踊らされることなく、周囲の人たちにとっても知的な存在であるためにどうしたらよいのか。目的を達成するためのヒントとして、第1章の冒頭で紹介されている最初のサンプル「わかりたくない人」の定義を記しておく。

 

つまり、自分の既成概念を優先し、事実を受け止めることができない。これが「わかりたくない人」だ

 『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』より引用

 

さまざまな方向と深度でバカな考えや振る舞いに関する考察が展開されていく。唖然としたのは、自分としか思えない誰かがときどき登場することだ。「決めつける」と「受けとめる」という行いを通して自分を客観視するための、とてもよいきっかけとなりそうな一冊。

 

 

【書籍紹介】

すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人

著者: 安達裕哉
発行:実業之日本社

自分が絶対に正解と思っている人には要注意!! 行動経済学、心理学をもとにした「バカな振る舞いをする人」の傾向と対策&自分がそうならないための方法。

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