「ものは言いよう」とはよく言ったもので、同じ内容を伝えるにも、言い方次第で印象はガラリと変わる。あなたのまわりにもいないだろうか。決して悪い人ではないのだろうけど、何故かいつもカチンとくる言い方をする人が。話していて、イラっとさせられるポイントが多いのだ。
もう少し違う言い方をすればいいのにな……と思いながら、大の大人にそんなこと指摘できず、結果、なんとなく距離を置いてしまう。たとえば相手がわが子であれば、「そういう言い方をすると相手を嫌な気持ちにしちゃうから、やめたほうがいいよ」と注意できるのだが。
そう、言い方さえ少し変えれば、コミュニケーションはぐんとうまくいくのだ。『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑』(大野萌子・著/サンマーク出版・刊)は、つい使ってしまいがちな「よけいなひと言」を「好かれるセリフ」に言いかえる術を教えてくれる一冊だ。
✕「うそでしょう?」→◎「本当ですか?」
中学時代、国語の先生がよくこう教えてくれた。「信じられないようなビックリする話を聞いたとき、『うそ~!』ではなく『本当に!』と言った方が良いよ」
それを聞いて、多くの生徒が「うそ~!」と言って騒いでいたが、その先生が大好きだった私は、以来ずっと意識してきた言いかえだ。
『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑』の著者・大野さんも、「うそでしょう?」ではなく「本当ですか?」と言った方が好印象だと述べている。「うそでしょう?」といきなり疑う=言っていることが信じられないと相手を否定していることになるからだ。
同じようなニュアンスで、「マジっすか?」という若者言葉もビジネスの場では不適切だとのこと。いや、そりゃ当然だろうと思うのだが、あえてこう書かれているということは、うっかり使っている若者がいるということなのだろうか……。それこそ「うそでしょ?」、もとい「本当ですか?」案件である。
✕「お返事は週明けでけっこうです」→◎「お返事は3営業日以内にお願いします」
メールなどで仕事のやりとりをしているとき、本当によく遭遇するのがこれ。金曜日の夕方くらいに「お返事は週明けで大丈夫です」と連絡をするということは、土日の間に考えてね、仕事してね、と言っているようなものだ。
私の場合はフリーランスなので、土日関係なく原稿を書くことが多く、このあたりの感覚がすっかり麻痺してしまっているが、一般的な企業の場合は大問題だろう。
現に夫も「年末年始の休みに入る直前に仕事の依頼がきて(しかも、結構手間がかかる系の)、年明け納品でお願いしますだって!」とイラついていた。当然だ。
仕事の依頼は、休日をカウントせずに「〇営業日以内で」と伝えるのがベター。
✕「体調を崩さないようにお気をつけください」→◎「お健やかにお過ごしください」
メールや手紙などを相手に気持ちよく読んでもらうためには、ネガティブな表現をできる限り避けるべきだと大野さん。日本には「言霊」という言葉があるように、発した言葉に魂が宿ると考えられているからだ。
たとえば今の時期よく使われる「寒くなりましたが、風邪など召されませんようにご自愛ください」という結びの言葉は、ネガティブな表現なのであまりおすすめしないそう。おっと、これは私もよく使っていた……!
かわりに「急に寒くなりましたが、お健やかにお過ごしくださいませ」であれば、思いやりを感じるポジティブな表現なので◎。たしかに、ほんの少しの言いかえだが、受け取る側の印象が違う。意識したい表現だ。
好意的な表現は相手も自分をも幸せにする
『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑』には、ビジネスでもプライベートでも、そして子育てにも使える全141シーンでの言いかえ例が紹介されている。右ページに「よけいなひと言」と「好かれるひと言」、左ページに解説が載っているので、ひとめでわかりやすいのもポイントだ。
大野さんいわく「好意の返報性」、つまり好意をもって相手に接すると、その相手からも好意的に思われる、ということは本当にあるという。自分が発した言葉で相手が良い気持ちになり、相手からも丁寧に接してもらえる。結果、自分のことも認められるようになり、自己肯定感もアップするという、まさに好循環だ。
2021年は、ほんの少しの言い回しに気を付けて、自分も相手もハッピーな毎日を送ろう!
【書籍紹介】
よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑
著者:大野萌子
発行:サンマーク出版
「言い方」で損をしないための本。上司・部下、同僚、友だち、家族…人間関係がぐんとスムーズになる「言葉のかけ方」141 シーンを徹底解説!