本・書籍
2020/12/1 6:30

NEWS加藤シゲアキが描く世界観にのめり込み、激しく嫉妬した。3年ぶりの長編小説『オルタネート』

できるだけ作者に対する先入観とか肩書は取っ払って、本を読むようにしている。大御所の作家だから傑作揃いとも限らないし、無名の新人だから荒削りな作品ばかりでもない。

 

でも、どうしても、若干の色眼鏡で見てしまっていたため、いままで手に取れなかったのがNEWS加藤シゲアキさんの作品だ。既出の作品の評判はかねがね耳にしていたけれど、NEWSというアイドルグループのメンバーとして活躍している加藤さんの姿を見てきたが故に、小説を読んで勝手に落胆したくなかったのかもしれない。

 

しかし、そんな私の傲慢な心配など、まったくの杞憂に終わった。加藤さんの最新作『オルタネート』(新潮社・刊)は、控えめに言ってとても素晴らしかった。作品の世界観に没頭し、作者が誰であるかなどすっかり忘れてしまうほど、結末までのページを夢中でめくり続けた。読んでいる間、ずっと楽しかった。読後感もすこぶる良い。

 

現代の高校生を疑似体験できた感覚

「オルタネート」とは、作中で出てくる高校生限定で参加できるマッチングアプリ。気になる相手を「フロウ」し、承認されると「コネクト」となり、連絡がとりあえる。舞台は東京都内のとある高校。信者さながらオルタネートにハマっている者、オルタネートを意識的に避けている者、オルタネートをやりたくでもできない者という3人の若者がうねるような運命の道をたどったり、逸れたり、立ち止まったり、そして……。三者三様の高校時代を描いた物語である。

 

私自身の高校時代なんてもう20年以上も前のことで、あのころはまだポケベルからPHS、携帯へと移り変わる超過渡期だった。もしも、いまみたいなSNS全盛期の中で高校時代を過ごしていたらどうだっただろうか。

 

きっと、昔よりももっともっと、たくさんのことを考えて、気にして生きなくてはいけないだろう。でもその分、信じられないくらい楽しいことも山程あるだろう。そして、パートナーが欲しい、有名になりたい、誰かに認められたい、自分の居場所が欲しい……そんな根底にある気持ちは今も昔も変わらない。きっと。

 

『オルタネート』は、読んでいると自分が高校時代に戻った、いや『オルタネート』の世界観に入り込んだような感覚に陥った。ある意味、現代の高校生たちの生活を疑似体験できたような気分だ。

 

遺伝子情報で運命の相手を見つける現代

なんとも現代風だなと思ったのが、オルタネート内の機能「ジーンマッチ」だ。オルタネートに、自分のすべての情報を預ける。そうして集められた情報から相性の良い相手が割り出され、パーセンテージとともに表示されるというもの。

 

つまり、アプリが運命の相手を探し出してくれるのだ。そのためには、アプリを信用し、自分自身をさらけ出さなくてはいけないが。

 

登場人物の一人は、このジーンマッチを使って、運命の人を探し出すために動き出す。出会ったのは、本当に運命の相手なのか。それとも。ここから先は、ぜひ本作を読んで確かめて欲しい。

 

いずれ同じような機能がSNSに登場しそうだなと思って調べてみると、すでに現実世界でもDNAを解析して運命の人を探し出すマッチングアプリが存在するらしい。時代はどんどん進化し、どんどんデジタル化していく。

 

デジタル世界でも、生身の人間が感じることは普遍

けれど、デジタル中心の世の中でも、画面上のコミュニケーションがメインになっても、やはり生身の人間が感じるさまざまな感情は普遍だ。

 

どうしてこんなにも、ぎゅっと苦しくなったり、とろけるように喜んだり、自然と涙がこみ上げたり、そんな高校生たちのリアルな感情が描けるのだろうか。加藤シゲアキという一人の作家を尊敬し、嫉妬した。

 

ちなみに、あるインタビューを読んだとき、「(NEWSの)メンバーと別れた、苦しい、つらいという気持ちを小説にしようと思った」という想いを吐露していた加藤さん。そうか、NEWSというアイドルグループに属してたくさんの経験をしたからこそ、加藤さんを形成し、『オルタネート』という作品につながったのか。そう思うと、また感慨深い。

 

これまでの作品も読みたくなる、そしてこれからの作品が楽しみで仕方がない、そんな一人の作家に出会えてラッキーな2020年の冬である。

 

【書籍紹介】

オルタネート

著者:加藤シゲアキ
発行:新潮社

高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。全国配信の料理コンテストで巻き起こった“悲劇”の後遺症に思い悩む蓉。母との軋轢により、“絶対真実の愛”を求め続ける「オルタネート」信奉者の凪津。高校を中退し、“亡霊の街”から逃れるように、音楽家の集うシェアハウスへと潜り込んだ尚志。恋とは、友情とは、家族とは。そして、人と“繋がる”とは何か。デジタルな世界と未分化な感情が織りなす物語の果てに、三人を待ち受ける未来とは一体ー。“あの頃”の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつエモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。

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