本・書籍
2021/3/3 6:30

コロナ禍で災害が起こったら!? 国際レスキューナースに学ぶ「新型コロナ禍の防災マニュアル」

先日、福島県沖で震度6強の地震が起こった。震度3~4前後の地震は頻発していたが、この規模は久々だ。震源地エリアのこともあり、東日本大震災のときのことが頭をよぎった人も多かったのではないだろうか。

 

私自身は、大阪北部地震のときの恐怖が蘇った。開いていた食器棚の扉からは食器が飛び出し、シンク横のキッチン用品が散乱。再び地震が来るのではという恐ろしさに加えて、ガラスの破片や散らばった小物たちを片付けることが、結構な負担となった。

 

あの日を境にいろいろな防災対策を試みているつもりだが、時は新型コロナ時代である。もしも今、大きな災害が起こったら。単に避難所に逃げればいいというものではなく、感染症のリスクも考えなくては。でも、どうすれば?

今回は、国際レスキューナースとしても活躍中の辻 直美さんの著書『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(扶桑社・刊)を手引きに、日常生活でできる感染症対策をご紹介しよう。

とにかく家の中をグリーンゾーンに保つこと!

辻さんが声を大にして言いたいポイントのひとつが、「家の中をグリーンゾーンに保つこと」なのだそう。レッドゾーン=新型コロナウイルスで汚染されている区域、グリーンゾーン=ウイルスで汚染されていない区域。つまり、もしかしたら外で自分の体や衣服についてしまったかもしれないウイルスを、できるだけ家の中に持ち込まない努力と工夫が大事ということ!

 

そのためには、玄関でのひと手間が必要だ。

 

辻さんは靴箱にアルコールとティッシュ、ゴミ箱を置いていて、帰宅したらマスクを外す→ゴミ箱に捨てる→アルコールで手指消毒→内側のドアノブを消毒→上着を脱いで、内側が表になるようにしてハンガーにかける(もしくは、ボックスなどに入れておく)。これらを玄関でおこなうのだそう。

 

帰宅したら、まずはリビングでゆっくりしたいよ~というところだが、玄関でウイルスをシャットアウトする習慣をつけておけば、家の中では安心して過ごせるのだ。

 

なお、コロナ禍で災害が起こったら、ぶっちゃけ避難所より在宅避難の方が安心とのこと(もちろん、時と場合によるが)。そのため、普段から家の中にウイルスを持ち込まない努力をしたうえで、地震が起きても住める部屋づくりを心がけよう。

 

レスキューナース直伝「感染症予防法」

辻さんは、国際災害レスキューナースとしての専門的な知識や経験がじつに豊富だ。以前、取材をしたときも、ちょうど新型コロナウイルスが流行し始めたばかりのころだったが、その徹底した感染症対策には驚いた。

 

たとえば、ドアを開けるときは利き腕とは逆のヒジを使うこと。これは、アメリカの消防隊が実践しているクロスドミナンスという感染予防法で、できるだけ利き手がウイルスに触れる機会を減らすことが目的。エレベーターのボタンなども、利き手と反対の手で押す。できれば、指先ではなく中指の第二関節がベストなのだそう。

 

というのも、ウイルスを手で触ってしまったからといって、それだけでは感染しない。問題は、ウイルスがついた手で顔を触ってしまうこと! 口や鼻、目などの粘膜を通してウイルスが体内に入ってしまうことで感染するという仕組みなのだそうだ。

 

私たちは無意識のうちに手や指で顔を触っている。触りまくっている。その数、なんと1時間で平均23回にも及ぶらしい。私自身はアトピーということもあり、常に体のどこかが痒い。顔もすぐに触りがちなので、非常に危険だ……。利き手と反対の手を使う、指はできるだけ薬指と小指を、場合に寄ってはヒジ、第2関節も活用する。ぜひ意識したい。

 

防災グッズに「コロナ対策グッズ」をプラスする

もしものときに備えて、防災グッズ(非常持ち出し袋)を用意している人がほとんどだろう(まだの人は、今すぐ準備を!)。そのなかに、辻さんおすすめのコロナ対策グッズを足しておこう。

 

辻さんがおすすめするのは、以下の7つ。

 

(1)固形石鹸 (2)マスク1箱 (2)逆性石鹸を薄めて小分けにしたもの 

(4)逆性石鹸 (5)体温計 (6)洗えるマスク (7)使い捨て手袋

 

逆性石鹸とは、石鹸とは言いながらも洗浄力はなく、細菌をやっつける効果があるもののこと。医療器具の消毒などにも利用されており、原液を1本持っておけば水道水などで薄めて大量に消毒液を作れるので便利なのだそう。薬局などで手に入るので用意しておきたい。

 

「生き抜くための感染予防法」を無駄にするべからず!

『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』には、辻さんがこれまで被災地で経験してきたことが活かされた「生き抜くための感染予防法」が満載だ。

 

そして、この本の最後に書かれていたことに、私は大きく感銘を受けた。

 

たとえば、避難所で消毒液を持っていない人がいたら、自分が持っている逆性石鹼の原液を薄めて分けてあげる。なぜならば、避難所内で感染者が出て流行してしまったら、自分自身の感染リスクも格段に上がってしまうから。自分一人が助かればいい……ではなく、災害をみんなで乗り越えよう! という心の余裕こそが、コロナ禍で生き抜くための大切な心意気。そんな辻さんの教えを胸に、できることから取り掛かりたい。

 

災害はいつ起こるかわからない。じゃあ、いつ対策するの? 今でしょ!!

 

【書籍紹介】

 

レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル

著者:辻 直美
発行:扶桑社

被災地での経験を生かした「感染予防法」が満載! 私は防災の専門家です。地震や水害に襲われた被災地で活動してきました。衛生環境の悪い被災地では感染症が発生します。それらを蔓延させないことが、私たちレスキューナースの使命なのです。その私が言います。「新型コロナウイルス感染症」も、災害です。しかも、「得体のしれない災害」です。人はわからないものに対して、不安になります。周りが不安になると、さらに不安になります。そんな不安を抱えてどうしたらいいかわからず、フリーズしている人が増えています。この本を読めば、その恐怖心を払しょくできます。

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