スポーツ
ランニング
2023/5/5 5:45

2023春「ランニング」を始める人に贈る「最低限の3つの動き」と「長く走る6つのコツ」

新しい年度が始まり、花粉のピークが過ぎて、走りやすい季節だ。この春こそランニングを始めようと一念発起する読者貴兄に、本稿では「ランニングフォーム」の基本を解説。「毎年この手の記事見てはいるんだよな(で、いつの間にか挫折するんだよな)」という方も、気分も新たに「正しいランニングフォーム」で走り出してみてほしい。

※こちらは「GetNavi」 2023年02・03合併特大号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

“走る”の基礎知識を学ぶ!

プロが教える正しいランニングへはじめの一歩。

いままでフォームを気にせずに走ってきた人がほとんどだろう。しかし「適当走り」は想像以上に身体を痛めやすい。初心者でもすぐに実践できる正しいフォームに加えて、走るうえで必要な知識をランニング・フィジカルコーチの大角重人さんに聞いた。

 

私が教えます

ランニング・フィジカルコーチ

大角重人さん

ランニングイベントの運営などを行う会社イチキロを設立。大学時代は箱根駅伝を走り、現在ランニング・フィジカルコーチとして指導する。

 

ちょっとずつでも良いのでコツコツ続けることが大事

昨今、走る人口の増加や、多彩なギアの展開、新しいランニングステーションが続々登場するなどランニングが注目を浴びています。走ることで体力の向上やストレス発散、スタイルアップといったメリットをもたらしてくれますが、それは1回や2回のランニングだけでは得られません。ちょっとずつでも良いのでコツコツ続けることが大事。1か月〜半年〜1年と続けば、走ることがライフスタイルに定着し、そのご利益を授かっていることでしょう。

 

だからこそ続けるために重要なのは、身体を痛めにくい正しいフォームです。いくつかポイントはありますが、前提としてランニングの正しい姿勢は“意識して”作るのではなく“自然と”作られるもの。そのためには筋肉を動かす意識やスムーズに動かすための柔軟性が必要です。筋トレや、やみくもに長く走ることよりも、走る前のウォーミングアップを入念に行い、身体を整えるほうが大切です。

 

以下の写真で紹介している「腕回し」「股関節をストレッチ」「その場でウォーキング」の3つは最低限行いましょう。ストレッチなんてまどろっこしく感じますが、短時間でケガをしにくい身体に。例えば、30分のランニングでウォーミングアップとクールダウンをそれぞれ5分ずつ取り入れれば、40分走るよりも確実に効果を高められます。最初に「肩関節」。腕を大きく回すと肩甲骨や胸まわりの筋肉をほぐすことができ、リラックスした状態で走れて腕をしっかり振りやすくなります。

 

次いで「股関節」。脚をスムーズに動かせるよう筋肉を伸ばします。最後は、仕上げとして「肩関節と股関節を一緒に動かす」。ヒザを高く上げ、腕を大きく振り、脚を“下ろす”意識で行います。このように重点的に肩関節と股関節の準備をするだけで動きがスムーズになり、正しいフォームを手助けしてくれますよ。

 

【まず最低限やるべき3つの動き】

腕を回す

↑肘を伸ばして大きく腕を回す。前回し、後ろ回しや左右逆回しを

 

股関節をストレッチ

↑前屈、もも伸ばし、もも上げの姿勢で股関節を丁寧にほぐす

 

その場でウォーキング

↑行進のように脚を高く上げ、腕振りをつけて軽く前進

 

ムリなく続けられるペースと呼吸法を身に付ける

最初は、速さや距離をあまり意識しないこと。“30分続けて動けるようになる”を目標に「5分歩く+5分走る」というのを3セット行うことから始めて、少しずつ走る時間の割合を増やしていくのがオススメです。負荷としては走りながら会話ができる程度のスピード、また心拍計の機能を搭載したスマートウオッチを持っている場合は120〜130bpm程度を意識しましょう。

 

もう少し走りたいなというところでやめておくのが、続けられる秘訣です。呼吸法というよりもビギナーは“吐く意識を持つ”と、自然と息を吸うことに繋がりますし、簡単にできるものも利点です。腕を振るタイミングと合わせるとリズム良くできますよ(下写真)。

 

↑腕のスイングとタイミングを合わせて息を吐く

 

これを週2回できるのがベスト。週半ばと週末で間を空けて走ると、筋肉の回復と成長が効果的です。続けていれば確実に走れる距離や時間、スピードなどが向上していくのが目に見えてわかるのがランニングの良いところ。大人になって得られる達成感はなかなかないので、ストレッチや正しいフォームを取り入れてぜひ走ってみてください!

 

フオーム作りのための6つのポイント

ラクに長〜く走るコツ

【ポイント1】真っ直ぐ立てているか体幹の安定性を確認

「胸を突き出した反り腰や、首が前に突き出てしまうなど真っ直ぐに立てない人が多いです。耳から肩、大転子(太ももの横あたりの出ている骨)、ヒザの横、くるぶしの前側までが一直線なのが正しい姿勢。これが正しいフォームの基礎となるのでチェックを!」

【○な例】

【×な例】

 

【ポイント2】腕振りは頑張らずスムーズなスイングを

「腕振りはもちろん大事ですが、ムリに腕を振り上げたり後ろに引いたりするのはNG。腰の横に付けた小太鼓を軽く叩くようなイメージで腕を振り下ろすと、肘が後ろまで行って自然と正しいフォームになります。ストレッチで肩や胸まわりの筋肉を動きやすくしましょう」

 

【ポイント3】太ももやふくらはぎではなく股関節を意識して動かす

「速く走ろうとして太ももを持ち上げたり、ふくらはぎの力で進もうとしたりすると、脚の筋肉の負担になってケガや炎症の原因になりかねません。その代わりに使うべきは“股関節(お尻)”。意識して走るだけで随分変わります。股関節がスムーズに動くようしっかり準備すること!」

 

【ポイント4】“半歩前にある空き缶を踏む”をイメージして足裏全体で着地

「箱根駅伝やプロのランナーを見るとつま先で走っていますが、ビギナーがこの走り方をすると確実にふくらはぎを痛めます。基本的には、“半歩前にある空き缶を踏む”感覚で、身体の真下で着地するようにしてください。脚ではなくお尻の筋肉で身体を支えられて、負担を軽減できます」

 

【ポイント5】真っ直ぐな姿勢のまま少し前に倒すこと

「半歩前にある空き缶を踏むイメージを維持しつつ、【ポイント1】で作った真っ直ぐな姿勢のまま少しだけ身体を前に傾けてください。自然に前へ進むようになり、そのまま身体の下に脚を落とすことができムリなく走れます。これが最も長く走れる姿勢!」

 

【ポイント6】腕も肩も力を抜いてリラックスして走る

「力を入れると筋肉がこわばり、身体の動きが悪くなります。特に肘から先、ヒザから先はできる限りリラックス。歯を食いしばっていないか、肩に力が入っていないか、手を強く握っていないかチェックしましょう。走る前に手足をブラブラ振っておくのも効果的」

【○な例】

【×な例】

 

 

文/吉野ユリ子 撮影/島本一男(BAARL)、中田 悟